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SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
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ⅢⅤ、「SOUL WORLD」

「良かった…。」
「楓ちゃん…また私、助けられちゃった。」
「そう?でも美波も凄かったわ。まさかこの世界を操作するなんて。」
「だってここは私の世界だもん。私が望めばその通りになるよ。」
「それが、『SOUL WORLD』…。」
「さてと。そろそろ現実に戻った方がいいよ?皆が心配する。」
「でも美波は…。」
「私なら心配ないよ。王女に即位するって決めたから。
 確かに政治は、面倒だろうし嫌だよ?だけど、それは皆を守る為にしてる事だもん。私は、皆が幸せに生きられる世界にしたいと思う。」
「美波…。」
「だから、安心して帰って大丈夫だよ。
 楓ちゃん、目を閉じて。」
 私は言われた通りに目を閉じた。途端、身体が軽くなった感覚と共に意識が飛んだ…。

霧隠にて―神前美波―

「美波さん、大丈夫ですか?」
 直人君の声がする。私は目を開けた。
 日の光の色から、夕方くらいだと思う。皆が、心配そうな表情で私を見てる。…なんで?
「美波、もしかして何があったか、覚えてないの?」
「確か何か声を聞いた気がして…そのまま眠って…。目を覚ましたら皆心配そうな顔で見てるし…。何かあったの?」
「…なんでもないわ。」
 でも楓ちゃん、何か隠しているような…。
「まぁ無事で何よりです。」
 直人君は相変わらずの笑顔で、知っているのかどうか分からない…。まぁいっか。多分私が悪夢でも見てうなされていたのかも。
「なんだかよく分からないけど、とりあえずティータイムを再開しようよ!」
「そうね。」
 本当に一体、何があったんだろう?
 でも…なんだかとても心が暖かい。まるで何かから解放されたみたい。
 その時、微かな声が聞こえてきた。
「魔界と人間界の『掛橋』が、繋がれてる…でもまだ早過ぎる。」
 早過ぎる…?どういう事?
「3人の巫女が、『掛橋』の歪みを救ってくれる。」
 どういう事だろう…?
「…美波、どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ。」
「そういえば…魔界への帰り方…分かったんだ。」
「え?本当?」
 祐樹君は頷いた。そっか!「掛橋」が繋がったからだね。
「だから…僕は魔界に帰らなきゃいけない…。いつまでも人間界にいれば、また迷惑をかけるかもしれない…。
 皆、今までありがとう…。」
 祐樹君は微笑みを浮かべて言った。結構可愛いかも。
「それなら、送迎会をしませんか?」
「いいわね!じゃあ何か食べ物持って来た方が良い?」
「大丈夫!魔法で出すから!」
「魔法って便利ね〜。」
「それなら早速、やりましょうか!」
 こうして、祐樹君の送迎会を開いた。

旧校舎にて―神前美波―

 その日の夜…。私は祐樹君と旧校舎の屋上にいた。
「一度聞いてみたかったんだけど、魔界ってどんな所なの?」
 祐樹君は、苦笑を浮かべている。
「あまり、良いとは言えない…。闇の沼、荒地、死の森、そして龍界…。」
「龍界?どうして魔界の中なのに、世界になっているの?」
「龍界は、竜(龍)しか生きない世界らしい…。僕もよくは知らない。聞いた話だと…常に争う。竜(龍)は人間の、狂乱の結晶だから…。だから、封印されている。」
「そっか…。魔族はやっぱり大変だね。」
「魔族でも、妖怪は軽蔑されない…。上手く生きているから…。」
「へぇ…祐樹君はこれからどうするの?」
「今までと、同じ…。ただ生きて、楽しんで、過ごす。
 美波、色々とありがとう…。」
「こちらこそ、どういたしまして。
 魔界でも、元気でね。」
「美波も…『掛橋』繋ぎ…頑張って。僕は、いつでも応援する。」
「ありがとう。それじゃ…。」
「またいつの日か…。」
 そう言うと、祐樹君は天に向かって何かを呟き始めた。やがて紫色の光が輝いて、祐樹君は消えた。
 私も、いつかは楓ちゃん達と別れる。その時も、こんな風に呆気ないんだろうな…。

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