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SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
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ⅢⅥ、開かずの間

旧校舎にて―神前美波―

 9月となるとさすがに暑さはひいて、だんだん寒くなってきた。私は水神の子だから寒さには強いけど、今は人間だからなぁ…。寒さの感じ方が少し違うかも。
 そんな事を思いながら旧校舎を散歩していた私は、開かずの間と呼んでいる場所に通りかかった。なぜ開かずの間かっていうと、旧校舎で唯一鍵がかかっているから。だから私が勝手にそう呼んでいるんだけど…。
 此処の扉の先には、一体何があるんだろう?屋上に近いから、多分似たような場所だと思う。でも、これは予想でしかない。
 何度もそう思っては鍵を捜した。でも見つからない。
 魔法で鍵は開くけれど、自分の欲では使えない。となると…。「あの人」に頼むしかないかもね。

旧校舎にて―吉永楓―

「それで…私がどうにかするの?」
 美波の話を聞いた私は、とりあえず聞いてみた。
「できたらだけどね…無理かな?」
「理事長の娘である私に、学園の不可能なんてないわ。ちょっと待ってて。理事長室行って、鍵を取ってくるから。」
 私は美波にそう告げて、新校舎の理事長室へ向かった。

旧校舎付近にて―吉永楓―

 お母さん(理事長ね。)はあっさり承諾してくれて、私に鍵を貸してくれた。
 そういえば、美波の言う「掛橋」ってあといくつなんだろう?最近私は、その事を考えていた。
 もしも「掛橋」が全て繋がったら、美波は元の世界に帰って行く。美波は、当然それを望んでいるのかもしれない。だけど…何故かそれを受け止めたくない。ただのわがままだけど、私はずっと美波と一緒にいたい。
 何故って?それは…美波が初めての女子の友達だったから。
 私は立場的に、みんなから避けられる存在だった。唯一友達と言えたのは、直人くらいかな。
 そんな時…美波と出会った。美波は私の立場を知っても、普通に話しかけてくれる。そんな友達がいなくなる。その未来を、受け入れたくない…。
 私は、鍵を持ったまましばらくその場に立ち尽くしていた。

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