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ⅢⅦ、天体観測室
天体観測室にて―神前美波―
「おまたせ〜。」
楓ちゃんが鍵を持ってやってきた。
「結構時間かかっていたけど…交渉に時間がかかった?」
「…まぁそんな感じかな?」
「なんか…ごめん。」
「大丈夫よ。鍵はちゃんと手に入れたから!じゃあ開けるわね。」
楓ちゃんが鍵を開けて中に入る。私もそれに続いた。
中は電気が点いていないせいか、とても暗かった。どこかにスイッチがあれば…。
と思った時、カチッと音がして電気が点いた。
「楓様と美波さん、こんな所で何をしているんですか?」
「なんだ直人君かぁ…ってなんで此処に!?」
「それは僕が聞きたいですよ。楓様が見当たらなくて捜していたら天体観測室に行くとメールが来て、行くとドアが開いたままに…。だから、もしかしたらと思って来ました。」
「良かった〜。明かりないまま行ってたら私達今頃迷子だったかも。」
「美波、それはいくらなんでも大袈裟じゃない?」
「そうかな〜?」
「ところで、なぜ楓様は此処へ?」
「美波に頼まれたの。旧校舎の開かずの間を解放してほしいって。」
「開かずの間?…確かにここは見た事がありませんね。」
「でしょ?だから入ろうよ!」
そして直人君を先頭にして、私達は奥に進んだ。太陽とか月とか、色々な惑星の写真が飾ってある。他にも資料とか。
ふと直人君が足を止める。一番奥まで来たみたい。何か大きな物が見えるけど…。
「これは…天体望遠鏡!?」
楓ちゃんが驚いたように言う。天体…望遠鏡?
「天体望遠鏡は、星を見る為の物です。美波さんは、星とか見ませんか?」
直人君が説明しながら質問もしてきた。
「私達神は目がいいから、見ようと意識すれば肉眼で土星まで見えるよ?」
「凄い!という事は、美波のいる世界にも宇宙があるの?」
「もちろんあるよ。まぁ闇神の気まぐれでしか夜にならないけど。あ、闇神っていうのは、夜を司る神様だよ。」
「へぇ〜…。」
「満月の夜、ある儀式の呪いが起きた。幸い犠牲者は1人だけ。ただ、呪いは『掛橋』の崩壊…。
るぅ…。こんな事は、村破壊以来の大事件。」
ふと心に響くような不思議な声が聞こえた。後ろを振り返ると、金色に黄色い瞳、しかも杵を担いでいる兎がいた。