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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*11*

 なんで、そんな言葉で終わらせられるんだ。
いなくなったんだぞ? 夜人が!
 俺は、おかしいと思った。教頭の言葉は、大人の事情からだと直感した。
 廊下を歩いて行く教頭に石を投げてやりたかったが、廊下に石はなかった。まぁ、当たり前だけど。

 とりあえず、自分が落ち着いてから夜人の家にいくことにした。雪の様子もみて行きたいし、なにより夜人のお母さんが狂っていないか心配だ。
  夜人の家に行く途中、自動販売機を見つけた。
そういえば、なにも飲んでいなかった。
一番安いミネラルウォーターを買い、一気飲み。
そして、ペットボトルを道に投げつける。
ペットボトルが跳ね返り、近くにあった黒い車にぶつかる。そんなの、どうでもいい。
そして、そのまま夜人の家に直行。
 後ろから車の持ち主であろう男の怒号が聞こえた。しかし、無視。
 だって、俺は不良。ポイ捨てくらい、して当然だろう。

 暫くして、男の声が聞こえなくなると、夜人の家が見えた。
「よし」
 俺は走って行き、玄関の前に立つ。
ピーンポーン……。インターホンを鳴らす。
家の中から、「はーい」と聞き慣れた女の人の声がした。
 彼女は、夜人の母、白野梅子だ。
 俺の母さんと同い年の梅子さんは、これまた美人だ。
夜人の中学3年のころ、梅子さんが参観日にきて、夜人が質問攻めになったくらいだ。そのとき、なぜか、僕も梅子さんについて質問された。
 ちなみに、僕のお母さんも綺麗な方なのだが、お父さんがいつも横でしかめっ面をしているから、質問されたりはしない。
 まぁ、それはいいとして、梅子さんは性格もさっぱりしているが、なによりもルックスだ。
バストもいいし、黒い長い髪がとても上品な感じだ。俺の母さんの同い年なのに、母さんよりも若い感じがする。
とりあえず、梅子さんは美人なのだ。
「どなた? って、真人君じゃない。 どしたの?」
 梅子さんは、狂っていなかった。 というか、普通過ぎて怖いくらいだ。
 もしかすると、まだ真人の失踪を知らないのかもしれない。
俺は、話そうかと思ったけど、少しでも雪に静かな時間を与えてやりたいな、とも思い、梅子さんには暫く無知の幸せを味わってもらうことにした。
「いえ、夜人から雪ちゃんが体調が悪いと聞いたので」
僕は、微笑み気味でそういう。
すると、梅子さんは笑いながら、
「あら、わざわざお見舞い? ありがとね、でも大したことないわよー」
といい、俺を家にいれてくれた。
 もう何回も行ったことある家だ。俺は慣れていたから、すぐに雪の部屋にいけた。
「おい、雪? 入るぞー」
 ちなみに、梅子さんの前では“雪ちゃん”だが、いつもは“雪”と呼んでいる。
「えー、入ってこないでー」
 いつも通りの返事。彼女は、「いいよー」の代わりにこう答えるのだ。

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