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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*40*

 明かりをつけていないトイレは真っ暗闇だった。
前も後ろもよく分からなくなって、そこしれない恐怖に襲われる。
トイレの外から、母さんか家から出ていく音がした。

 バタッ。

ドアが閉められる音がした。
 俺がくる前に、なにがあったのかは分からない。
だけど、もう母さんは戻ってこないと直感した。
 今更、母さんに泣きついてでも戻ってきて欲しい、とは思わない。
 母さんはこんな生活が嫌だったのだろう。 俺も嫌だから。
それなのに、わざわざ引き止める必要がどこにあるだろう。
 母さんは、母さんの生活をしていけばいいのだ。
そんなことを思いながら、トイレの個室から出る。
そして、そっと自分の部屋へと戻って行った。
目の前で起こった出来事のせいで、トイレをしに一階にきたことなど忘れていた。

 次の日。 俺は、目が覚めるといつも通りパジャマから制服に着替えると、一階に降りていった。
顔を洗って、歯を磨く。 これもいつも通り。
 そして、リビングにいく。
俺のいつも通りの生活は、リビングに入った時点で終わる。リビングの中心にある大きな机には小さな文字で何かを書かれたメモがあった。
「さようなら」
たった、それだけ。
 黒字で書かれたそれは、俺への別れを示していた。
これは、父さんの字だった。
父さんは、母さんは、俺を置いて家を出て行ったのだ。
俺はどうすればいいのだろう。
 親がいないなら、施設にいくことになるだろう。
そんな目に合えば、もう丸菜学園にはいけなくなるし、平穏な生活は送れないだろう。
しかし、そんな危機に面していても、やはり腹は減るものだ。
ぐーっ、と腹が空気を読めずに音を出した。
 仕方なく、朝ごはんを食べながら今後のことを考えることにした。
なにか食べられるものはないか、と冷蔵庫を開けてみる。
すると、そこにはもう完成しているサラダがあった。
父さんが作ったのだろうか。母さんが作ったような綺麗なサラダではなく、ぶっきらぼうに盛られたあまり美味しそうではないサラダだった。
だが、胃袋に入ればなんでも同じこと。
俺は、サラダを取り出すと、机においた。そして、コップに牛乳をなみなみとついで、そのサラダの横に並べた。
主食は、俺が適当に焼いたトースト。
ところどころ焦げて黒くなっているが、仕方ない。
 俺は、さっさと食べはじめる。
牛乳はいつも通りの味だったが、サラダとトーストはまずかった。
サラダは食べられたものの、トースト。これは、まず過ぎて食べられない。
俺は、無理やりトーストに蜂蜜を塗る。
そして、口に入れる。まずいのは変わらなかったが、少しはマシになった気がした。
 がんばって、そのまま、全部食べ終えた。

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