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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*20*

「お前、何日やってんだ?」
 俺は、画面をスクロールしながら聞く。
「うーん……夜人に勧められてからだから、一年はやってるかも」
 雛は、うっすらと微笑む。夜人を思い出しているんだろう。
 それにしても、俺は、「真人君」なのにあいつが「夜人」なのがムカつく。
俺の方が幼馴染なのに。一緒に遊んだ17年は一体なんなんだ。なんだ、この気持ち?
この気持ちは……、娘を嫁にやる親父の気持ち、だな。
 確か、俺が小さい頃に父さんが話してた気がする。
あの頃は、いいやつだったんだけどな、父さん。

 雛のせいで、昔を思い出してしまった。
あまり物思いに耽るのは嫌だから、
「へぇー、そうか。 俺は、一週間くらい前から。 夜人に勧められた」
俺はそういった。
でも、それが間違えだった。
「ふぅん。 そーいや、真人君はいつも夜人と一緒なのに、今日は居ないね?」
痛い所を突かれた。やばい。
 俺は、どうしても真相を話したくなかった。
なぜなら、今回のこいつの所に来た目的は、ゲームの情報を手に入れるためだからだ。


 話したくない。


「あぁ、 なんか買い物だってさ。 梅子さんに頼まれたらしくて、怒ってた」
 笑いながら咄嗟に嘘をつく。
「へぇー、 大変だねー」
雛が楽しそうに微笑む。 想像でもしてるのだろうか。
「なぁ、そうだろ?」雪に話を振ろうと隣をみたら、雪は居なかった。
あれ?と思って、周りを見回す。すると、視界に入った雪は、もう帰ろうとしていた。
「おい、雪! ごめん、雛。 こっちから来たけどもう帰る」
俺は、雪を追いかけながら、雛にそういっておいた。

 雛に俺はなにを言おうとしたのだろう。
確か、ゲームの情報を手に入れるために雛の家に来た。
でも、結局嘘ついただけ。

 俺は、スマートフォンの電源を入れる。
また、ゲームを始めた。

【第五話 END】

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