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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*50*

 そして、次の瞬間。
世界が真っ白になった。
 何もない世界で、あるのは二人の人間だけだった。
日子が寿樹を見つめた。
寿樹は、ニッと笑い、右手を日子にみせた。 その手には、台本が握られていた。
日子と寿樹は、そこの八ページ目にこう書き込んだ。

 ーー【1/1 新しい世界の始まり】。

「って、わけなんだよねーっ」
梅子さんが笑いながらそういった。
ニコニコとした笑顔は、いつもの梅子さんだった。
「その……日子さんと寿樹さんって人がこの世界を作ったってわけですか?」
「そうよっ、 いやぁ……大変だったわぁ」


 〈いやぁ……大変だったわぁ〉?
確かに、梅子さんはそういった。だけど、それはおかしくないか?
さっきの話はずっと前の話だし、名前も違うじゃないか。
なのに、なんで梅子さんが日子さんのような喋り方をするんだ。
俺が首をかしげた。
すると梅子さんが口に手を当てた。
そして、「……って、思うのよねぇっっ」と慌ててさっきの言葉につなげた。
……怪しい。これは、怪しい。
「梅子さん。さっきの言葉って……」
「なに? たっ、大変だっただろうな、と思わない? だって、世界を作るのよっ」
 梅子さんは、本当に慌てていた。
多分、俺の推測が間違えてなかったら、梅子さんは日子さんなのだ。
 なぜなら、俺は梅子さんの癖を知っている。 嘘をつく時には、手を口に当てるのだ。 今も手を口に当てながら話していた。
 それに、あの《台本》を、彼女は持っていた。
ならきっと、なんでもできるのだろう。
「梅子さんって、日子さんだったんですか……」
小さくつぶやいた。
その言葉に、梅子さんは反応したらしい。
「あら、分かっちゃった? なら、なんでここでこんな若く生きることが出来るか、分かるかな?」
梅子さんのいつもの爽やかな笑い。
なんで若くいられるか?
「世界が始まる時に、10年くらい若返るとかですかね」
「はははっ、残念っ。 世界が終わっても始まっても若返りはしないわっ」
そんなこと言われたら、わからない。
「ヒントをください」
 俺がそういうと、梅子さんは微笑みながら、
「そうねー、そのスマフォとか?」
といって、俺のスマートフォンを指差した。

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