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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*51*

「これ、ですか……」
俺は、スマホの画面を指で撫でる。
その後、起動させた。
 最初に目にはいるのは、勿論「Die Application」だ。
(もしかして……)
俺は口を開く。
「これ、ですか?」
Die Applicationを起動させると、梅子さんに見せた。
梅子は微笑みながら、頷いた。
「うん、当たり」
 梅子さんはそういうと、赤いスマートフォンを取り出した。
「これね、私のスマートフォン。 そのゲームを管理してるの」
梅子さんが俺に赤いスマートフォンを持たせた。
右手には自分のスマートフォン、左手には梅子さんのスマートフォン。
 梅子さんのスマートフォンを起動させる。
パスコードは掛けられていなかったために、すぐにDie Applicationにつなぐことができた。
アプリの名前は「管理用アプリ」だった。
 それを、起動させる。
「それの、 『管理者ワード』ってところに〈niko〉って入力してね」
 指導通りに入力した。
すると、ゲーム画面が、なにかの入力画面に変わった。
「それ、〈hisaki〉っていれて」
こちらも指導通りに。
 それが終わると、画面に「管理人 様、おかえりなさい」と黒い字が表示された。 ちなみに、背景はピンク色だ。

「これがね、私の正体なの。 よく分かったでしょ?」
梅子さんが自嘲気味に笑うのが分かる。
「なんか……やっぱり、信じられないですね。 こんなことが現実にあるなんて」
俺も、自嘲気味に笑った。
 本当に、この世界がわからなくなってくる。
いろんなことがこの世界ではおこっている。 殺人、強盗、痴漢など。それの全てを挙げていったら、きっと大変な文字数になるにちがいない。
 しかし。俺はまだ、高校生だ。世界のことはよくわからない。だけど、いろんなことが起こっていることだけは分かる。
 そして、これは例外なのだ。
現実的な世界で、唯一の非現実。
画面に表示されたこれが、まさかこの世界を操っているなんて、誰も信じないだろう。 俺も、信じたくない。
 そんなことを思いながら、画面をスクロールしていた時だ。
「【生贄選択】?」
画面の一番下のところに、【生贄選択】と書かれたボタンがあった。
「あ、イケニエか。 それね、押してごらん」
梅子さんがいうから、俺はそのボタンを押した。
「はい」
 そのボタンを押すと、なにかよく分からないが、沢山の人の名前が書かれた名簿が画面に表示された。
名簿の名前は「生贄リスト」らしい。
 てきとうにスクロールしていると、上の方の人は赤字で、下の方の人は黒字で名前が書かれているようだ。
 赤字の方を、ちらりとみてみる。
「梢 悠馬」
「緋崎 雛」
「白野 夜人」
……。他にも、俺は知らないたくさんの名前があった。
 あれ? 雛がいた。
(なんで、雛がいるんだ。 風邪で休んだだけなんだろう?)
取り乱しそうになった。 それをどうにか、こらえる。
 そして、次に黒字のほうをみてみた。
「白野 雪」
「赤崎 真人」
 上のほうに書かれてあった名前。目をこすって、もう一度みてみる。
だが、書いてあることは変わらない。
「あの……」
 後ろの梅子さんに話しかけようとして、後ろを振り向いた。
 梅子さんは、タバコを吸っていた。だるそうにしていた。
 だが、俺の知っている限りでは梅子さんはタバコを吸うような人ではなかったはずだ。
「ん? なに?」
 梅子さんは、ふーっと煙を吐いた後、俺のほうをみた。
 俺の知らない梅子さんをみて、俺は怖くなった。
「あ、いや、この……俺の名前って」
俺が画面を見せた。 すると、梅子さんはだるそうに答えた。
「あぁ。 イケニエになる予定がある人の名前だよ。 赤字はすでにイケニエになった人で、黒字は予定」
 梅子さんは、さらりといった。何事でもないみたいに。 さもあたりまえというように。

【第十一話 END】

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