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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*10*

【第三話】 <放課後と失踪>

 学校終了のチャイムが鳴る。
 俺は、鞄を持ち、校門の近くに立つ。そして、そのまま夜人を待っていた。しかし、10分、20分……30分。
スマートフォンの時計をみながら、夜人を待っていたが、あまりにも遅い。
(こいつが、今まで待ち合わせで俺を待たせたことは一度もなかったのに)
 そう思ったが、それは昔の話。
今は、クラスが離れている。だから、クラスメートと話して遅くなっているのかもしれない、あいつはお調子者だから。そう思い直し、俺はまた学校に入り、夜人の教室へ行くことにした。
 だが、俺は異変に気づいた。なぜなら、静かだった廊下が夜人の教室へ近づく度に煩くなっていくのだ。
胸騒ぎがした。 もしかして、夜人になにか遭ったんじゃないか、と。教室へ行く足が自然と早くなる。
「あの、どうかしたんですか?」
 夜人の教室へ入ろうとしていた先生に聞いた。確か、彼はこの学校の教頭だ。
「あぁ、君は確か赤崎君かね。 実は、白野君がいなくなったらしいんだよ」

……は? 夜人がいなくなった?
なにいってんだよ、教頭!
ふざけんなっ。

 と、取り乱しても夜人が居ないことには変わりない。
俺は、出来るだけ冷静に教頭に聞く。
「嘘ですよね?」
と。 冷静に、でも冷徹にはならないように。
 すると、教頭は申し訳なさそうに表情を曇らせ、
「本当です。 君と、白野君の仲は知っています。 かなり仲が良かったようですね。 でも、安心してください。 まだ、死んだとかそういう訳じゃないんです。 絶対に見つかりますよ」
といった。
 言い方がムカついたが、
「そうですよね」
と微笑む。 教頭にキレても意味がないからだ。

……でも、夜人は見つからない気がした。なんでかは、分からない。

 暫くすると、騒いでいた生徒と、俺が夜人の教室に集められた。
 そして、教頭はこういった。
「皆さん、落ち着いてください。 白野君は、午後の授業に参加せずに、校外に出て行きました。 それだけです。 いなくなった訳ではありません」
と。
 その言葉で、周りは、「そっかー」「つまらねー、サボりかよー」などという声を漏らした。
 そして、教頭はそれをきいて少し安心したように教室から出て行った。
 皆、帰って行った。

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