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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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【第十一話】<衝撃>

「……」
 梅子さんを無言で見つめる。
いつも豪快で堂々としている梅子さんなのに、今日はすごくお淑やかだった。綺麗な、女らしさのある人だった。
「じゃあ、 俺は暫く退席しますね。 あとは梅子さん……お願いしますね」
 そういうと、時雨さんは煙草の吸い殻を片付けて店から出ていった。
時雨さんが出て行くのと同時に、ドアにつけられたベルの音が静かな店内にカランカラン、と鳴り響いた。
「真人くん。 実はね、あの物語には続きがあるの」
梅子さんが穏やかな口調で話す。
 聞き慣れたこの声は、とても安心した。 頷きながら、梅子さんの話を聞いていた。

 いまからずーっと前の話。
世界は一度、リセットされていた。
前の世界にも、丸菜学園はあったそうだ。スマートフォンもあったらしい。
だが、今の世界には前の世界にあるものの中で唯一ないものがあった。
 それは、人間だった。 その世界に住む人たちだけは、リセットする時に全て塗り替えられた。
 そして、そんなあり得ないことができる装置の名前は、「世界が終わるボタン」といった。
その名のとおり、ボタン型。黒い正方形で、真ん中に赤いボタンがついているシンプルなものだった。
 そのボタンを作ったのは、四人の男女。坂本寿樹、赤坂唯一、坂本日子、白咲紫音だ。
四人が台本を使って作ったのだ。
作り方は簡単。 台本に、「8/1 世界が終わるボタンの創造」と書いておけば直ぐに完成した。
 こんなあり得ない装置でも、この摩訶不思議なノートは作る事ができたのだ。
四人は信じられなかった。
台本を信じなかったせいで、赤坂と白咲は台本に殺された。 残った二人は、世界を終わらせる為に邪魔な人間は徹底的に排除した。 もちろん、台本の力で。
そして、ボタンを押した。
 その後の様子は凄まじいものだった。
ボタンから赤い光が飛び出したと思うと、それは屋根を突き抜けた。 光に貫かれた屋根がバキッと恐ろしい音を立てた。
 二人は逃げるように外に出た。 そして、そこをみて呆然とした。
赤い光が、人を建物を……全てを飲み込んだ。
どんどん光に吸収されていく。 ふと、自分たちの手をみた。自分たちも吸収されていっている。
 自分たちの体の色がどんどん薄くなっていき、かわりに真っ赤になっていく。


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