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*29*
【第七話】<所詮、ゲームだよな>
ーーピーンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
「……?」
(誰だろう。 またあの教育実習生か?)
梢さんが来たのは一週間前の話。それからは、誰も訪ねてこなかった。
また、一週間分の宿題を届けに梢さんが来たのかもしれない。
誰なのかを確認するために、俺は自室のカーテンを少しだけ開けた。
薄暗い部屋に明かりが差し込む。夏の真昼間だから、かなり明るかった。
「あ、雪だ」
俺は呟いた。ドアの前に立っているあの少女は、雪だ。
雪だ、と分かったから、警戒することもない。
俺は、窓を開けると、ドアの前の雪に言った。
「おーい、鍵空いてるからはいれー」
と。
さっき母さんは、町の会合で出かけていった。鬱気味だから、会合に行ってくれた方が、俺の邪魔にならないからいい。
そして、その時に鍵をかけ忘れて行ったのを、俺は知っている。知っていたが、めんどくさかったから、閉めにいかなかった。
それに、わざわざこんなところまで泥棒しにくる奴はいないだろう。そう思っていたから。
「はぁー? なんであいてるのよ。 閉めてよ、バカ」
雪はそう俺に向かって言うと、家に入って行く。
それを確認すると、俺も窓を閉めた。そして、自分の部屋のドアの鍵を開けておく。
トントントン……。軽やかに階段を駆け上がる足音がする。と、思っていたら俺の部屋のドアがあいた。
「真人ー、元気にしてるー? 学校休んでたから、心配したじゃなーいっ」
雪が笑顔で部屋に入ってくる。全く遠慮せずに。
「元気、元気。 ちょっと学校が嫌になっただけだよ」
俺は、苦笑いしながら言った。
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