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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*31*

 俺が嫌な顔をして見せると、雪が笑う。
「そんなのいーじゃんっ! さ、見てみてっ」
 雪が、俺にスマートフォンを差し出す。
受け取って画面をみると、そこには「突破成功おめでとう」と表示されていた。
 今まで俺が一時間かけても突破出来なかったものが、たった五分で終わってしまった。
 なんか、雪を尊敬してしまった。
「すごいな、雪」
 スマートフォンの画面をみながら、雪に言う。
画面から目を離し、雪の方に視線を移してみると、彼女は自慢気に微笑んでいた。
「でしょでしょー! えへへ」
 雪は、とても嬉しそうだ。
それをみながら、俺は言った。
「そうだな これに勝てたんだし、明日からは学校行こうかな」
俺はニコッと笑う。
雪も、満面の笑みになる。
「やったぁ! じゃあ、明日楽しみにしてるねっ」
「おう」
 なんか、雪にここまで言われるとなんか照れ臭くなって目を逸らした。
でも、雪はずっとニコニコしていた。

 暫く雪と一緒に談笑していた。
 ふと窓の外をみると、空がほんのり赤い。夕方が近い。
そろそろ、雪も帰らなきゃいけないだろう。
「雪、そろそろ帰れ」
俺が言うと、雪も「じゃー、そーするっ」と笑いながら、部屋を出ようと立ち上がった。
 その時、少しふらついて俺の机にぶつかった。
「いてっ」
雪が小さな声で言う。
 そして、ひらひらと写真が床に落ちてきた。
「ん?」
俺は、写真を拾う。
 そこには、俺と少年が笑顔で写っていた。
この少年、誰だろう? みたことあるような、ないような。
雪に聞いてみよう、と雪の顔をみる。
その少年は、雪にそっくりだった。雪に兄とか居たっけ?
「おい、雪。 この人、誰かわかるか?」
俺が写真を差し出すと、雪はそれをみて言った。
「夜人じゃん。 なによそよそしい言い方してるわけ? 親友でしょ」
 雪が笑顔のままで言った。
 親友?嘘だろ?俺には親友なんていないし、夜人なんて人と一緒に居た覚えなんてなかった。
でも、雪が嘘をつくとは思えない。

なら……俺の記憶がなくなっているのか?

【第七話 END】

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