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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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(可愛いのに、もったいないなぁ)
 そう思いながら、声をかけてみる。
「こんにちは。 柊さんだよね、よろしく」
話しかけると、柊さんはほんのりと顔を赤くする。そして、
「うん、よろしく……」
と控えめに返してくれた。
 柊さん、昔はもっと明るい女の子だったと思う。
中学は確か一緒だったはずだ。 いつも雪と仲良くしてた女の子だからよく覚えてる。
 だけど、なんか中三あたりからいきなり暗くなってしまった。原因は、なんか彼氏が行方不明になってしまったらしい。
 俺には彼女とか居ないから、その大切さはよく分からないけど、あの明るい彼女がこんなになるんだから、よっぽど大切な存在なんだろう。
 そんなことを思いながら、荷物を片付けて、椅子に座る。1番後ろの席のときより、梢さんが大きく見えた。これぞ、遠近法。
「よし、席替えおわったかな?」
梢さんが微笑みながら聞く。
その返事は様々だ。
「隣がいやだー」とか、「ここ、黒板が見にくいー」とか、他いろいろ。
「黒板が見にくい」はともかく、隣は誰でもいいだろ。
別に隣のせいで頭が悪くないこともないだろうしさ。
柊さんの方をちらっとみると、柊さんも俺の方をみていた。少し微笑みながら。
 だけど、それと目が合うと顔を赤くしてさっと目を逸らす。
(なんだよ、目が合えば逸らすとか)
 そう思いながら、彼女よりも奥の窓の外をみる。
見慣れた風景と離れてしまって少し惜しい気もした。
(あの車がまばらに通る道をぼぉーっと見つめるの好きだったんだけどなぁ)
 まあ、仕方ない。
 梢さんの方に視線を戻す。
梢さんは皆の好き勝手な意見に困っていた。
あわあわと苦笑しながら皆をみている。
「まぁまぁ、一ヶ月だから。 ね?」
「隣がいやだー」といった生徒はどうしても隣を変えろ、と粘っていた。
「嫌です、変えてください」
 ずーっといっている。
梢さんも、ついに折れたのか、
「仕方ないなぁ。 じゃあ、あなたの隣は今日は休みの緋崎さんにしようか」
といった。そういうと、男子生徒は嬉しそうに了承した。
 緋崎は、お得意の不幸体質でお休みらしい。風邪を引いたんだってさ、夏風邪は辛いよなぁ。
(というか、あの男子生徒は緋崎の横になりたかっただけじゃねーの?)
 でも、緋崎を好きになったら、後で大変なことになるぞ。と俺は直感して思った。

 そして、無事席替えは終了した。

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