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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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*33*

「えーっと……不幸なお知らせです。 担任の先生が通り魔にあって入院しました。 なので、僕が暫くこのクラスの臨時担任になります」
 通り魔に遭った!?なんだそれ、危ねえな。あー、登校中に遭わなくて良かった。
てか、担任もさっき遭ったってことか?不幸だな、あのメガネ面も。
「あ、赤崎くん来てましたか」
 梢さんが僕の方をみて微笑む。クラスメートの視線が僕に集まる。
でも、その視線は一週間前の冷たいものじゃない。暖かい、優しい視線だった。
 一週間前のあれは夢だったんじゃないか、そう思うほどに。
 でも、夜人は本当に誰なんだろう。 俺の親友らしいけど……なんか、そんな気もするし違う気もする。
(まず、俺に友達なんていたか?)
「赤崎くん」
「えっ、あ、ハイ!」
 ビクッとして返事をする。
いきなり、名前を呼ばれてびっくりしてしまった。
「はは、元気ですね」
梢さんが微笑むと、皆が大笑いする。
 その後、梢さんが皆の名前を読んでいく。どうやら、出席をとっていたらしい。考え事をしていて、周りの話を聞いていなかったようだ。俺は、自分が恥ずかしくなった。
「はい、出席も終わりましたし……席替えでもやりましょうか」
梢さんがにこにこ儚いスマイル。
「いぇぇぇえい!」「やったぁぁ!」
 周りから歓声が上がる。
 よく分からない。席替えなんか楽しいのだろうか?
荷物持って移動するから、めんどうくさいんだけどなぁ。
でも、梢さんが担任の方がクラスに活気があるな、そう思った。
俺がそんなことを思っている間にも、席替えの準備が進む。そして、くじを引かされた。
俺の席は……1番。黒板の席が書かれた表をみると、1番は真ん中の列の一番前の席。
(最悪、めっちゃ目立つじゃん)
隣の女は誰かなぁ……。
少し気になって、1番の女を目で探しながら、前の席に「さよなら」と言っておく。
 そして、席を移動すると、そこにはすでに隣の人がいた。
 俯き気味の彼女。柊 春夏さんだ。
綺麗な黒髪に、黒い目。 惚れ惚れするほどの美少女。
だけど、右手にはリストバンドをしていて、いつもうつむいている。

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