完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*36*

「……はぁ」
 席替えが終わると、退屈な授業が始まる。
 俺は、盛大な溜息を吐いた。
(ほんと、めんどくさい)
なんで、授業なんて受けなければいけないのだろう。
いつも疑問に思うが、仕方ない。
 意味もなく、退屈な授業を受けるのが義務なのだろう。その証拠に、周りは、真剣に授業を受けている。
 柊さんも真剣だ。 クマのマスコットが付いたシャーペンを忙しなく動かしている。
 クマのマスコットがついているから、みるからに使いにくそうだが、女ってのはそういうのが好きらしい。
周りの女は、大抵そんなシャーペンを使っている。
本当、意味がわからない。
 だけど、いくら退屈だからって消しゴムを投げ合ってる男たちの方がもっと意味がわからない。
「赤崎さん、この問題分かりますか?」
 その時、突然の声。
梢さんが俺に質問したらしい。俺は、咄嗟に問題をみた。
「わからねぇ」
呟く。 わかるわけないだろ、高校の勉強とか。
(最低中学レベルじゃねぇと、俺にはわからねぇよ。バカにしてんのか)
 そんな気持ちも込めて、梢さんを睨みつけた。
「そうですか……では、柊さん」
梢さんは、俺の視線から逃げるように目を逸らすと、柊さんを当てた。
 すると、柊さんはすらすらと答えを述べた。
(なんで、こんな問題が解けるんだよ)
柊さんの横顔をみる。真剣だ。
その下にいるにっこり笑顔のクマのマスコットが俺をあざ笑ってるみたいで、無性に腹が立った。
 しかし、柊さんの横顔は、今まで通り綺麗だった。

 しばらくして、退屈な時間も終わり、下校時間がやってくる。俺は、鞄を持って、多分誰よりも早く下駄箱に駆け込むと、靴を替えて外に出る。
 そして、俺はスマートフォンを取り出した。
勿論、ゲームをするためだ。
その時、後ろから声がした。
「赤崎くん…… 、一緒に帰ろ?」
 それは、柊さんの声だった。
どうしたんだろう? 今まで、……俺の記憶がある限りでは一緒に帰ったことなんてなかったのに。
 俺は、心の中では首をかしげながらも、振り返るとニコッと微笑み頷いた。
 すると、柊さんも安心したようにニコッと微笑んだ。

35 < 36 > 37