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*59*
そして、高1の春になった。真人たちと同じの高校に入って、とても楽しかった。でも、それは高校にいる時だけのことだった。
家に帰ったら、“ソレ”をプレイしなければならないのだ。これは、楽しみなんかじゃない。ただの……【義務】。
このゲームの本質を知らなければ、楽しかったかもしれない。だけど、ソレの本質を知っている私にとってはちっとも楽しくない。大嫌いな人参を食べるよりも、辛いこと。
なら、やらなきゃいいじゃん。
皆は、そう思うかもしれない。でも、このゲームにはある恐ろしい機能があった。それは、《ログインボーナス》。このゲームを起動させるたびに、この機能は効力を発揮する。つまりは、お母さんたちに私がログインしたかどうか分かるってわけ。その上、プレイ情報だってあっちには分かるから、結局私はこれを毎日プレイしなきゃいけない。
もう、何日やったか。そんなことがわからなくなるくらいに、プレイした。
でも、一度も負けたことはなかったし、ランクもどんどん上がっていく。敵が血を流して倒れるのは、結構快感だった。
そんなある日。私は風邪を引いちゃった。こじらせちゃったみたいで、熱が出ていた。だから、私は学校を休むことにした。お母さんにそれを伝えると、
「へぇ、そう。 わかったわ、連絡しておくわよ」
とそっけない声で言われた。
はぁ。
心の中でため息をついて、私は部屋に戻る。体が熱くて、だるい。もうなにもしたくなくて、ベッドにグデーッと横になっていた。
その時だ。
ピーンポーン。インターホンのベルの音。そして、お母さんが玄関のドアを開ける音がした。しばらく、会話の声が聞こえた。どうやら、真人がきたらしい。……私のお見舞いのために。
私は、慌てて立ち上がると、綺麗に掃除してあった部屋に漫画を適当に散らかしておいた。そして、ベッドに持たれて、お気に入りの漫画を読み始める。
元気な私を演出するために。
真人は、私の室にきて、明るく話をしてくれた。でも、その笑顔には影がある。私には、それがわかった。なにがあったのかはわからないけど、かっと何かある。
しばらく私は、真人から切り出してくるのを待ってた。
でも、話してくれなくて。私がちょっと怒った演技をしたら、真人は話してくれた。
それは……兄、夜人の失踪の話だった。
私は、すぐにわかった。それはDie Applicationの仕業なのだ、と。
頭が痛くなる。真人の顔がぼやけて、目頭が熱くなって、何かが目から流れ落ちそうになる。それを必死でこらえる。そして、俯く。
苦しい。悲しい。辛い。なんで、なんで死んじゃったのっ!?夜人は優しくて、善いやつなのに。なんで、あんなゲームのせいで殺されるの?分からない。
確か、時雨さんは、「俺と梅子さんの意図で殺すから、勝手に生贄になることはないよ」
そう言ってた。なら、お母さんは、夜人を殺すつもりだったの?
あり得ない、自分の子供なのに。ーー私は実験台で、夜人は実験台のための実験台。
こんなことをするなんて、親として失格だ。あれは、私のお母さんなんかじゃない。あれは、悪魔だ。
私は、真人から夜人のことを聞かされたあの瞬間に、そう思った。
真人は優しくて、私の泣き顔を見ずに帰ってくれた。彼もいずれ死ぬ。
そう分かってたから、彼の優しさが無性に嬉しかった。そう分かってたから、お母さん……梅子が、無性に憎たらしくなった。
【第十四話 END】