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作者: にゃは (総ページ数: 69ページ)
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*4*
以来完了…
力を使いすぎたと思うが天は表情を変えない。
「お疲れ様でした。お兄さま」
いつも通りの最初の謙遜から始めるロム。
「帰る……か」
さりげなく寂しい雰囲気を隠しながら天は振り替える。
ここには用はない。以来完了すればとっとと帰るのが天のやり方だった。
その後はロムのわがままで麓の町を見物したり買い物したりしていた。
「………………」
一人の少女がこちらを見ている。
距離はさほど遠くはないが目に写るほどよく見える。綺麗な銀髪の長い髪につぶらで青い瞳。
ついぼーっと見とれてしまうぐらいの美しさだった。
隣ではロムが蒸すっとしてる?なんでだ?
「……!」
体制を前に構えるが……遅い。
先程の銀髪の少女が一本のナイフを天の首で寸止めしていた。あと一センチ動けば死んでいた。
「この力…神の力か…?」
少し冷静に話す。
冷たい視線の中、町の人の目がこちらに集まる。
「っち…時間よ、壊れよ」
天はそう言うと、グッと手を握り力を込めた。
「…………!!」
驚いた様子を見せる銀髪の少女。
「俺も落ちた身だ…あんたもだろ?」
ナイフはまだ首にあるが今は疑問をあてるしかない。
「う………そう」
やっぱりか…
「俺は天。あっちが妹のロム。わかったか?俺たちは敵じゃない。ナイフをどけてくれ」
あえて名前を明かすことで言い逃れするやつもいるが天の目は本気の目だった。それを察知したのか少女はナイフをどける。
「…………」
黙り混む少女。よく見ると本当に美しい。
「あんたの名は?」
聞いただけで泣きじゃくる少女。
「あぁ…すまない。俺なにかしたか?」
即、謝る天。それを見て少女は笑った。
「女の子に……弱いんですね、それとも涙?」
鋭い…鈍いように見えて鋭い。
「どちらもだよ…涙も女も」
それを聞いてクスッと笑う少女。
「私の名前…ない」
その瞬間悲しさが体を走った。
ロムと同じ……名のない人間。
「なんて…呼びたい?」
上目使いで聞いてくるが…俺にはセンスがないクライズによく言われて来たからな。
「あんたはなんて呼ばれたい?」
これが一番手っ取り早い。
「う……………妻?」
「言わないからな?そもそも初対面だからな?」
突っ込みを入れる天。珍しいのかロムはポカーンと口を開けていた。
ここは仕方ないな…名前か
「そうだな…銀音(ぎんね)はどうだ?」
あまりのセンスに驚愕するロム……
「銀音………うん、銀音♪」
「えーーー…」
そのえーーーはやめような?妹よ
「お前のさっきの速さ…音によるものだな?つまり音速だ。それにナイフを構える時間が早すぎる。俺たちはきずいてたのに不意をつかれた。普通ならありえないだろ?」
さっきの話を戻すように喋る。
「私は……ガイアが……落ちた」
ガイア…ギリシア神話の神
大地を司る神だ。
「なるほどな…あれはお前が動いたんではなく地面が動いたのか…」
つまり俺たちは見ていたはずがいつのまにか地面を見ていたということになるな。
「銀音、俺たちとこい!俺が道を示してやる」