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作者: にゃは (総ページ数: 69ページ)
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*40*
目が覚めると天は洞窟のなかにいた。暗くて湿っていてそれでいて妙な気配を感じる。1つのたき火が少しの明かりを挙げている。
「寝ちまったのか?」
天は頭を抱えながら起き上がった。そこには少しの仮眠をとろうとしたのかロムが可愛らしく猫みたいに丸まって寝ている。
ロムにもうふをかけた後、木の枝を取ってきてたき火を少し強くした。
(大地を…守れ)
あれはどういう意味だろう。天の今持っている知識ではどうにもならず、考えることをやめ、もうひとつの方を探ってみた。
(天之御中主神曰く、術者がいるはずだ)
そう思って周りを探索するがそれらしい気配は全然しない。むしろ静かすぎるほうだ。
「考えすぎ…か…」
いや、待てよ…この山の大きさからだと中から術をかける必要は…ないよな。
(ってことは、外か!)
グッ!と握り拳をいれ、神力を溜める。そして…………
「輾濕!」
以前、回復したローズに教わっていた。ローズ曰く、思いの力があれば具現化は可能らしい。
すると、紅い光が目の前に出現する。
「我を呼んだのは、お前か?」
光は忽ち姿を変えて、一人の美男子へと変えた。赤髪のツンツンした二十歳ぐらいの人間だ。それにこの声は馴染みがある。
「我は破壊の神シヴァ…さぁ名を授けよ」
どうやら輾濕は成功したようだ。
「お前の名前は【牙漆】(ガウル)…………そしてロムを守ってくれ」
牙漆と名付けられたシヴァは暫し考え、「よかろう」と返事が来た。それを聞いた天は外に向かって走り出した。
「ガウッ…グルルルルルルゥゥ!!」
まさか術者がこれとはな。と思うほどばかでかい狼が山の如くたちずさんでいた。確かに声を出さなければバレることは無いだろう。気づかないわけだ。
「よくもしんどい思いさせてくれたな?落とし前はつけさせて貰うぞ!」
天は勢いよく跳躍し、狼の目の前に到達した。【天照】を発動して金色のオーラが天を包む。
「輝天撃!」
光の殴打が狼に命中する。力の反動により狼は少しづつ後ろに下がるがあまり堪えていないようだ。
(かってぇ…)
狼が叫ぶと風圧で後ろに吹っ飛ばされた。吹っ飛んだ先には大きな岩があり超撃を回避しようとしたが二度目の風圧で加速しやむ終えず直撃した。
「いってぇ…なんつー堅さだよ…」
連打ではダメージは殆どない。それでも倒せるだろうが恐らく先に天が力尽きてしまうだろう。
降り注ぐ風圧を避けながら考えるがやることはただひとつ…………
「堅さよりか凄い一撃を与えりゃいいんだろ!」
風圧を掻い潜り、もう一度跳躍し狼の前に出る。狼は学習したのか防御の体制をとった。
「貫いてやる…楸紅蓮(ひさぎぐれん)【天童】」
刹那…目に写るほどに繊細な動きで空中一回転そして溜めに溜め込んだ神力を爆発させた。
目に求まらぬ早さで当たり全体が光の渦に包まれた。
丸焦げになった狼はすでに瀕死になっていた。
「さてと…トンネル掘るか」
振り返り再び洞窟へ歩きだした。