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作者: にゃは (総ページ数: 69ページ)
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第二十一神話「待ってたよ」
クレパスが奥にいくほど気温、湿度、そして酸素量でさえ明らかに少なくなっていた。次々とクレパスの壁の出っ張りを着地にして降りていっていた。
「…………ふぅ、二時間は降りたな」
上を見上げてもすでに光が届いていない。天の放つ天照の力で今は視界が良好だが、夜になるとほとんど見えなくなるだろう。
(残り三時間…いや、あと一時間だ!!)
迷うことなく着々と降りて行く。段々だが【天照】の光も弱まっていっている。
「…………これは?」
クレパスに1つの繋がる洞窟が見えた。洞窟からは少しだが目に見えるほどの光が通っている。下を見てもまだクレパスは続いているが、天は迷うことなく洞窟へ足を踏み込んだ。
洞窟に入ると外よりかは目映いほどの緑色の光が天を包み込んだ。
「光がこんなに…これは光蘚?空気中の酸素と二酸化炭素を分解して光を産み出しているのか」
このような場所でも生き物はいるのだと天は実感し、洞窟の奥へ進んだ。
「…………行き止まり…道は関係なかったのか」
諦めて振り返った途端、後ろから声がした。優しく懐かしいような天使の声。天の記憶を擽るあの声だ。
「魅咲…魅咲なのか、どこにいるんだ!?」
しかし声がしない。天には確かに聞こえたはず…
【後ろだよ】
カッと後ろに神力をぶつける。【天照】を纏った輝天撃が壁を砕いた。壁はボロボロと崩れ落ちて1つの巨大な水晶が目に入った。
「…………魅………咲…」
水晶の中心にブラウンロングの髪に微かな面影の眉毛にしっとりした肌は天の記憶を刺激した。昔の魅咲とは少し違い、成長していて胸もふっくら膨らんでいてそして背丈も天よりか少し高い。だが頭は違うとは言えない。確かにこの人は魅咲だ。
「魅咲…俺は探したぞ、そして見つけたぞ…い、いまそこから出してやるからな」
そういって【天照】を最大限まで高めて神力を爆発させる。
「はぁぁ…,,,っ!?」
放とうとした瞬間に背後から気配がした。振り向くとオーガ系の化け物だった。有りがちなこん棒を持っており1つの瞳でこちらを見ている。
(こいつ…魅咲を守っている!?)
確信はないがなんだかそんな気がしてならなかった。
「ぐぁあ!!」
戦闘を交えて約10分。【天照】の光は弱まり天の神力も限界に達していた。迫り来るこん棒を避けるので精一杯だ。大きく振りかぶるこん棒の攻撃をよけようとした瞬間、地面が滑り後ろへ痩けてしまった。
(やっべ…死ぬ…)
その隙をついたオーガが雄叫びをあげてこん棒を振りかざす。避けることの出来ない一撃。「終わった」と思い諦めた瞬間に肩に掲げていた破王剣が輝き、オーガを翻弄し後ろに飛んでいき、その先の水晶に勢いよく刺さった。
崩れ落ちる水晶…………中から鼓動が聞こえた。
キラキラとした黄色の瞳が天を見つめ話してきた。
「待ってたよ…天くん」