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その日僕に落ちた神様は人生を喰いました〜完〜
作者: にゃは  (総ページ数: 69ページ)
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第二十二話「付喪神」




「魅咲…なのか…?」
突然現れた天の幼馴染み。水晶の中に眠っていたのに砕けるだけでいいのかと少し思うが天は喜びを隠せていなかった。
「私じゃ不満?ってその前に…」
驚いているのは天だけではない。敵であるオーガは魅咲を明らかに守っていたはず。突然現れたのだから混乱するのも当たり前だ。


「グォ…」
「今まで私を守ってくれてありがとうね、石ころさん」
(石ころ?)
魅咲の手のひらが白く輝き、オーガに触れた。そして共有するようにオーガにも白い輝きが纏ってスッとそこら辺に転がっている石ころのようになった。




「これは?」
目の前の出来事に戸惑いを隠せていない。
「私の力は【付喪神】(つくもがみ)。命なきものに新たな命を吹き込む力だよ」
(俺は…なにと戦ってたんだよ…)

「んー、久しぶりの外だー!」
「はは、はしゃいでるとこ悪いが時間がない。早く脱出するぞ、ロムが待ってる」
言葉を放った途端に魅咲が言いたいことはわかったような気がした。恐らく「一人ではなかった」だろう。
そう思いながら手をつかみ洞窟を抜けていった。




外にでるとあり得ないほどの強風が上から叩き込んできた。クレパスに強風などあり得ない、左右は氷の壁。風が通れるわけがない。
「どういことだ…?」
「多分ね…気候の変化だよ、神力の動作で下降気流が変化したんだと思う」
(…………ロム)


「早くいこっか、天くん」
「あぁ、行こうか」
天が上に跳躍の体制に入ろうとすると魅咲の神力が高まるのを感じ瞬時に振り向いた。
「魅咲…?」
「起きてばっかだし、力を制御したいんだよ♪。だから飛んでいこう」
そういって魅咲の神力は氷の壁にあたり、どんどん変化していき巨大な水色の怪鳥となった。





「ねぇロムおねぇちゃん、天くんは?」
「はぁ…はぁ、も、もう少しだよ」
ロムの神力もすでに限界間際だ。約四時間は結界を維持している。
「天兄…………まさか…」
ロムが戸惑うなか後ろの三咲の目が赤く光だした。そして声を荒らげながらロムの耳にはいる。


「………………………………もういいや」
「え?」
気づいた時にはロムの体の真ん中が貫かれた。赤い液体が目の前に飛び散る。わからないほど痛みのない一撃だった。
「なん…で…………」
「なーに?まだ生きてるの…早く死んでよ」
(だめ…体がうご、かない)
影から槍のようなものがロムを襲う。
「バイバイ、ロムおね…」


「ふざけんなぁぁあ!!」
光の一閃が三咲を吹き飛ばした。間一髪だったロムは倒れながらも涙を流す。
吹き飛んだ三咲は壁に激突した。
「魅咲、ロムの手当てを…俺は、こいつをやる!」
「わかったよ、天くん…気を付けて」


魅咲の笑顔とロムの痛みが天の亀裂を迸った。
「覚悟しろよ…俺たちはおとなしくねぇぞ!!」

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