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その日僕に落ちた神様は人生を喰いました〜完〜
作者: にゃは  (総ページ数: 69ページ)
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第二十三話「善悪の存在理由……そしてお帰り」





強烈な強風が上から降り注ぐ。
誰もが温度を実感できないほど集中していた。三咲から放たれる金属音が鳴り響く。両腕は原型を保っておらず刀となりこすり合わせていた。



「さぁ、行くよ?」
まるで全身全霊。全てかけた顔であり、真っ直ぐで真剣な瞳。この戦いは違うやり方をしたかったと思うほど巣様辞意気迫だった。
「天照!!」
光輝くオーラを纏いながら攻撃に備える…
(いや、守っては駄目だ…動け…足掻け!!)
とっさの判断で右後方へ跳躍し回避する。突っ込んできた三咲は着地と共に地面を蹴りあげ、真っ直ぐに刀をかざしてきた。



「天照【纏羽裝】」
天のオーラがオーロラの様に体に纏わりついた。鎧兜…ではなく一見衣の様に見える。金色に輝く衣は光を放ち、目眩ましとなった。
「ぐっ…こんのぉ!!」
見えない目で周りを切り刻むが、天はそこにはいない。


バタバタと風力で衣が靡く。煌めく粉のようなものが空に上がって行く。天は大空高く、跳躍していた。
「くそっ、…どこにいる!?」
三咲は完全に目はなおった。が、視界に入らない。完全に視覚から一撃を決めるつもりだ。



落下して行く天は拳に力を入れて攻撃体制に入る。
「輝天撃【修羅】」
ボソッと唱え、拳に金色のオーラが纏う。


「…………!上、っち…完璧に当てる気だね」
(この位置からじゃ避けれねぇよ!!くらえ…)
【修羅】が放たれ三咲に降り注ぐ。その光は巨大な柱となり三咲を多い尽くした。


「きゃぁぁあ!!」



衣がフワッと落下のスピードを押さえて天はゆっくり着地した。【修羅】を放った場所はクレーターのようなものが出来ており一人の少女がたっていた。
「もう辞めよう…魅咲へ戻れ」
情けのような感情をぶつける。しかし揺らがない、揺らぐわけがない。戻るということはつまり【死】を味わうということだろう。戻れば一生…三咲には会えない。


「はぁ…はぁ、け、けんぎ…【サイクロンソード】」
粉々になった腕の破片が幾つもの剣となり舞うように天に降り注ぐ。
「ガハッ…グァッ…」
刃が天の身体を切り刻む。服が朽ちるようにボロボロになり、血が至るところから出ている。深くはないがかなりの重症だ。
「なんで…避けないの?」
三咲の声に耳を傾ける。天は待っていたかの様に即様答えた。



「善悪なんて…関係ないさ、お前が【悪】であろうが【善】であろうが、魅咲の一部であり1つの命だ。確かに戻るってことは自由ではないかもしれない。だが…けして会えないことはない」
意味がわからなかった。戻れば存在が消える。会えるわけがない。
「ど、どうせ…覚えてくれないじゃん…一部とかそんなので…存在が消えるのは記憶に残らないんだよ!!」
叫びと共にまたしても剣が天を切り刻む。


それでもクレーターを降りて三咲に近づく。
「く、来るな…来るな!!」
乱舞の勢いが上がり、ほぼ天の体は血だらけになる。
「こないでよ…」


「俺は忘れないさ…お前も魅咲だ。俺の大切な人だよ」
血が垂れている顔がニッコリと笑っていた。
「ば、バカッ…私は三咲……魅咲じゃない…」
「なら俺は三咲を忘れない。一人の人間としてな」
(なんで…なんで…こんなに暖かいの?こんな…………私なんかを…天くん…)


「私を壊して…」
「えっ…?」
「めちゃくちゃに壊して!!そうじゃないと戻れない」
天は納得したように神力をあげて行く。

【シヴァ】纏い、赤きオーラが天を包み、三咲も包む。
「私は…どうだった?」
少し三咲の笑顔に天は赤面する。どうだった、と言われてもどうすればいいのかわからなく混乱していた。


「天くん?」
シヴァの力が高まって三咲の体が足から消えて行く。
「…………可愛い…かった。その……魅咲に似ていて…」
「…………そっか♪ならその大切な人を泣かせちゃ駄目だよ、もちろん死なせてもね」
「あぁ…」
迷うことなく頷く。決してその約束は破らない。絶対な決意をして行くうちに三咲は消えて魅咲の元へ戻っていった。




「ありがとう、天くん♪これで二倍の大切な人だよ」
自分でいったことが急に恥ずかしくなる。
「…………!」
魅咲を見上げるとその後ろには小柄な少女が見えた。幻覚でも何らかの自然現象でもない。


「あぁ…二倍守ってやるさ」
その言葉を聞いて微笑む魅咲の顔はまるで天使のようだった。

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