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神様とジオラマ
作者: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: ファンタジー 能力もの 
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*8*



 客室らしき場所に通され向かい合ったソファで待っていると、彼がティーカップを三つ乗せた皿を手に再び現れた。彼は丁寧な仕草で紅茶をローテーブルに置き、向かい側のソファに座る。

「僕はミカゲと言うんだ。御所の御に、幻影の影。よろしく」

 俺は少し微笑んで、金堂を見た。彼は出された紅茶に砂糖とミルクを、二杯も三倍も入れながら舌を打ち、ティースプーンを御影の方に向けてくるくると回しながら言った。

「こいつを連れてきたら、全部話す約束だったよな?」
「そうだね。そう焦るなよ、じっくり全部話してあげるさ、露木くんにもね」

 紅茶にミルクだけを入れてかき混ぜ、一口飲む。
 俺は彼の声に耳を傾け、一言も聞き逃さぬように、話を聞いた。

*

 金堂くんにも露木くんにも記憶がない。そうだね?
 安心していい、それが普通なんだ。変だね、それでもそれが正解なんだよ。案外そんなもんさ。
 僕は全部知っている。知っているけれど、君たちに話すのはごく一部だ。本当に大事なことは、自分の目で見て自分の手で見つけるべきだと、僕はそう思うよ。とりあえず、僕の話をよく聞くことだね。

 君たちには使命がある。その使命の為に生まれたんだよ、そうなんだ。決まっているんだよ。決められているんだよ。もちろん僕にも使命がある。君たちと同じようにね。
 使命というのを、うまく言葉にするのは難しいのだけれど。

 そうだな、空は青い。それは普通だね? そう、普通だ。だけど、空自体が青い色をしているわけではないんだよ。空気中の小さな水滴が太陽の光を受けて、いらない色を全部捨てて、青い色だけを拡散しているんだ。
 ここでいう水滴を君たちとしよう。
 君たちは、太陽光を受け、各々の力を使って空を青くしている。だから、空が青いことが普通の状態なんだね。
 それなんだ。君たちの使命は、空が青いことを普通の事にすることだ。

 もちろん君らに空を青くしろとは言わないよ。これはただの例え話だ。
 この、僕らの生きる世の中には通常ではありえないことが多々ある。それでも、この世界に生きる僕ら以外の人間は、それを知ることがない。なぜだか分かるかい?
 僕らが、平穏な日常をつくるんだ。
 格好いいだろう? 正義の味方みたいでさ。

*

 彼の話は長かった。間の取り方、表情、声色、身振り、手振り。全てが緻密に計算され、構築されたものであったと感じた。

「露木氏にも金堂君にも、使命を全うするための力があるんだ」

 彼が言う。

「全ては我らが神の為に」

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