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神様とジオラマ
作者: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: ファンタジー 能力もの
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*紹介文/目次*
曖昧になる視界。恍惚としながら、暖かい場所に飲まれていく感覚。柔らかくて、甘くて、哀愁を含んだ声。
私はきっと忘れない。
目次
序章 全ては我らが神の為に
>>1 >>2 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
第一章 逢魔(オウマガ)
◇「世界は案外猫に優しい」
>>11 >>12 >>13 >>14 >>15
>>11-15
◆「面影と感覚」
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
>>18-26
第二章 黎明(レイメイ)
◇「虚偽の神様」
>>28 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40
>>28-40
◆「名のない湖」
>>41 >>42 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50
>>41-49
第三章 彼誰(カハタレ)
「神と屍」
◇ >>51 >>52 >>53 >>54 ◆ >>55 >>56
◇ >>57 >>58 ◆ >>59
◇ >>60 >>61 ◆ >>62
>>51->>62
「終息」
◇ >>63 ◆ >>64
>>63-64
終章 創世記
>>65
(◇:夕月 ◆:露木)
*
ジオラマ/diorama
1 立体模型。ミニチュアの人物や物と背景とを組み合わせ、ある場面を立体的に現すもの。
2 遠近法を用いた背景画の前に人物・動物などの立体模型を置いて照明し、窓からのぞくと現実の光景のように見えるようにした装置・見せ物。幻視画。
はじめまして。お久しぶりです。玖龍もとい、あまだれです。頑張ります。
ちょっと硬めな文章がかけたらいいと思います。
・能力ものです
・神話や宗教っぽいことが含まれます
・ちょっとぐろいかも
ご注意ください。
試行錯誤しながら、ちょっとずつ書いていきます。
消したり変えたりが頻繁に起こりますがご了承ください。
また、一度ぜんぶ書いてしまってから書き直しを何度もする予定なので文章の質、雰囲気等その時によって違います。
コメント、アドバイス歓迎です。ほしいです。お願いします。
スレたて(2013/9/10)
*
補足
○キャラクタ
・夕月/yuugetu
服装:ゴスロリ寄りの少女服 常にモノクロ
容姿:身長は低い 黒髪で長さは肩にかかる程度
年齢:推定十代前半
補足:黒い傘を持ち歩く 紅茶はアールグレイが好き
・御影/mikage
服装:細身のスーツ姿 ワインレッド、ダークグリーンなど黒に近い色を好む
容姿:長身で手足が長い 蜘蛛に似ている 髪は黒に近い茶色で耳にかからない程度
年齢:推定二十代後半
補足:どこか奇妙
蛇足:名前は 神の影→御影
・露木/tuyuki
服装:シャツ、カーディガン、カーゴパンツなど カジュアル寄りでカラフル
容姿:身長は金堂より高く御影より低い 髪は明るい茶色で耳が隠れる程度 やや長め
年齢:推定二十代前半
補足:印象は好青年 慎重かつ冷静であり、見た目にそぐわず頭が回る
蛇足:名前は 北欧神話のロキ→露木→ツユキ
・金堂/kondou
服装:黒いパーカーにスウェット 金の刺繍が入っている 安っぽい
容姿:身長は少し低め 髪は短く金髪 目つきが悪い
年齢:推定十代後半
補足:思考回路が単純で感情論で動く ちんぴらではあるが彼を慕う者は多い
・吉祥天/kissyouten
服装:ピンク色とオレンジ色のサリーのような布を巻いている
容姿:身長は露木と同じくらい 髪は胸くらいまであり黒髪
年齢:推定二十代後半
補足:エメラルドのピアス 紫の煙が出る煙草を吸う 妖艶
露木が名付けた
蛇足:名前はラクシュミの仏名から
・音無/otonasi
服装:白いワンピースにヒールの低いパンプス
容姿:身長は金堂より少し小さい 顔は金堂の好み 髪は方につく程度 やや茶色
年齢:十代なかば〜
補足:綺麗な声を持ち表情が豊か 人に好かれる
・樹/ituki
服装:青いパーカ ベージュの膝下までのズボン スニーカー
容姿:背が低い 黒い髪は耳にかからない程度
年齢:一桁後半
補足:しすこん
・帝釈天/tensyakuten
服装:一般的なセーラー服の上に赤いマント 狐面
容姿:耳にかからない茶色がかったショートへア
補足:病人 ベッドから動けない
蛇足:名前はインドラの仏名から
○街
・中央街
赤いレンガを敷き詰めた道 舗装された道路 洒落た店が並び洋風の建物が連なる
真新しく綺麗 富裕層〜中間層が住む 面積はごくわずか 路地を少し抜ければスラム街へ出る
・スラム街
中央街を丸く囲むように広がる貧民街
ゴミ、血、汚物がこびり付く道 ひび割たアスファルトを枯れた雑草が埋める
○仕事
「世界の平穏を保つ」と唱えて平穏を脅かすものを間接的に消す 殺すことはしない
方法は人により様々 大抵は能力を使っているが戦闘技術に自信があれば物理攻撃
チームを組むもの個人で行動するもの様々
御影が一人で中枢を担い問題や情報や戦略を伝える
○人々
・能力を持つもの
出生時に確率で能力を持てる 総人口のごくひと握りと予想される
能力者に共通して幼少期の記憶がない
能力者の中には知らず悪い方向へ使っていたり意図的に悪用する者がいる
よって「平穏を保つ行為」はほぼ同士打ちと言える
見た目の年を取らない 不死
・能力を持たないもの
親が居て成長をしてきた一般的な人間 ときに被害者 ごくまれに加害者
人々の多くが神を信仰する そして常に幸福感を持っている
成長をする 老いて死ぬ
至って平和に暮らしている 特筆すべきではないので描かれないがきちんと存在する
・見分け方
上記に記してはあるが詳しく
はじめの記憶 つまり生まれた時の記憶が既に成長した状態であれば高確率で能力者であるといえる
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~
*60*
◆
棺の中横たわっていた、吉祥天の眠るような、白い、透き通るような、美しい顔がとても鮮烈に目の奥に残っていた。
どうにも、まだ思い出さなくてはいけないことがあるような気がする。
俺は、露木の名を受けて、金堂や、御影や、陸や、少し違うがあの夕月という子と同類としてこの世に生きているが、それだけじゃない。少し特殊なだけの夕月とは違い、俺は根本的に違う。
違うことは分かったのだが、どうだろう。本当にそれだけか?
そもそも、何がどう違うというのだろう。俺はオリジナルより察しが悪くできてしまった。
晴れたと思った霧は、歩み、進んだ今、また濃く濃く立ち込めている。
*
拠点の扉を開けると、じっとこちらを睨む金堂と目があった。自然と、俺の動きが止まる。
彼は出会ってから、何も変わっていない。本当に何も。音無があどけない少女から、聡明な女性へ成長するくらいの時間が経っているのに。
「考え事か?」
「おお、露木。気付かなかった」
彼は少し目を逸らしてためらって、それから意を決し息を吐いて、ようやくそれを口に出した。
「吉祥天は」
「……ああ。綺麗に死んでいた。……幸せそうだった」
金堂はそうか、とだけ言って、またどこか遠くを睨むような目つきをした。
幸せそうだったと、そう思うのは、残されたものが自分たち自身を慰めるための感情だ。分かっていても。
今更のように、俺を構成しているパーツのどこかが、抜け落ちてしまったような、さらさらと砂のように崩れていくような、そんな感覚を覚えた。
「なあ」
沈黙で夜を更かすのを金堂はやめた。
「ちょっと前さ、一般人だったやつが急に覚醒する、みたいなことなかったか?」
「聞いたことあるな……たぶん、御影から」
「最近多いんだよね」。緊迫感のない声を思い出す。台詞は続く。
「それが、不思議で。両親も、その上も、ずっと繋がっているのに、急に病気みたいに力が覚醒するんだ。帝国っていう宗教が流行ったの、知ってるかな。実は、あれだってそうだった」。
「その、力を与える、ってやつの名前ってさ」
名前。名前? 御影は、なんて言ったろう。「その男はさ、名乗るんだよ」。確か、その名前は。
記憶の中の御影と、今目の前の金堂が、声を揃えた。
「『神様』」
ってさ、と、御影が言った。だったよな、と、金堂が言った。
「そのカミサマってやつはさ、一般人を狙っていろいろ覚醒させてたみたいだけどよ。それ、もともと持ってる俺らにやったら、どうなるんだろうな」
問いかけてはいるものの、彼は答えがわかっているような口ぶりだった。
「…………ああ」
そうか。そうかもしれない。
たぶん、死ぬ。神様が与える。与えられたものが元々それを持っていれば、吉祥天のように、指一本で。それが答えだろう。
「でも、どうして殺すんだ? 御影によると、俺や金堂が『世界の日常を保つ』ための存在なんだろ」
「そこだよなぁ」
俺たちが居なくなれば、世界はどうなってしまうだろう。上手に回らなくなる。日常がなくなる。それはつまり。
「……神様は、世界を壊したいのか?」
金堂が独り言を言うように呟いた。
この世に在る万物は、神の創造物だ。その神の子が、世界を壊すように動いている。つまりはそれが、神の意志。
そうでなくても、世界を保っている者がいなくなればいずれ、世界は終わる。
俺は思う。
きっと、七日で作られた世界は、あまりにも欠陥が多すぎたのだ。
*
それは、次の朝だった。
金堂が起き上がった音で目が覚めた。ぼやけた視界の中、遠くへ歩いていく彼の黒いスウェットが見える。どうしたのだろう。形のない不安がみるみる膨らんでゆく。
俺は、すぐに体を起こした。嫌に遠くに見える彼は、玄関のドアを開ける。
ドアが開いたのに、金堂は動かなかった。そして、目を覆って、顔を覆って、頭を抱えて、うずくまるようにしたかと思うと、その場に倒れ込んだ。
倒れ込んだ。
後悔には、行き場は無い。
それに気がついたからと言って、行動を起こさなければ、現状は変わらないのだ。何か、行動を起こすべきだった。身に迫る危険は、わかっていたはずなのに。ずっと、俺には関係ないところにいると思っていた死が、すぐ隣へ歩み寄ってきているのを、わかっていたはずなのに。
自分の無力さを、今、目の前に見ている。
金堂はまだ息をしていた。生まれて初めて眠る赤ん坊のように、浅く、小さく。
そして、寝言のように言った。
「見ろ。今、さっきの記憶、俺の。見ろ、見ろ……」
繰り返す、か細い声。
自分でも分からなくなるほど、動転した気を持ち直して、俺は、閉じかける金堂の目を、見た。
見慣れた扉。俺よりも少し低い視線が揺れる。ドアノブを掴んで、扉を開く。眩しい朝が目に飛び込む。そして、あの、白い男……。
今度ははっきりと、その顔が見えていた。男が指を、こちらに向ける。
歪む視界、混ざる色。俺の顔。変に篭った、金堂の声。見ろ、見ろ。浅い呼吸。吸った息を吐く音が、聞こえなくなった。
ああ。白い男が、誰に似ているのか分かった。自分だった。白い男は、自分だった。
金堂の閉じた眼を見る。
俺は、この世界で一番の愚者だった。