完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*19*
「…ん…」
ルーシィは、目を覚ました。
―そうだ、昨日は妖精の尻尾で話し合って…。
作戦が考えられなくて、喧嘩して…。
…帰っちゃったんだ…。
やわらかいベッドが心地いい。
するとリビング(ルーシィにとって)が、騒がしい事に気づく。
「…なーんか展開が読めるのよね…」
そーっと、そーっと奥を見ると。
「おはー」
「よお、ルーシィ」
「邪魔をしているぞ」
「おはようございます」
「綺麗な部屋ね」
「やっぱりねぇー!」
皆でソファの上でくつろいでいるのを見ていると、本当に今まで通りに感じられる。
「もー、何なのよ…」
「まあまあ、早く飯食っとけ」
「うっさい!何で急かすのよー…」
ブツブツと少し前に買った、菓子パンを頬張る。
ふわりとした食感と、程よい甘さが口中に広がった。
「昨日さ、俺達…喧嘩ばかりで作戦も何も出来なかったろ?」
「うん」
「そこで、もう諦めた」
ルーシィはこの時、諦めたの意味を勘違いしていた。
もう、ナツはどうしようも出来ないのだろうか。
だがグレイから出た言葉は、それをすぐ裏返した。
「俺達だけで、乗り込むぞ」
「…ふえええ!?」
パンを食べているので、上手く叫べない。
ルーシィは急いで、パンを完食した。
「ぷはっ、無理あるでしょ!?相手の魔力、グレイも感じ取れたでしょ!」
一人一人の魔力が、異常に高い。
下っ端と思われる者も、中々に手強かった。
「まあな」、とグレイは軽々しく言う。
「じゃあっ…、」
「ルーシィ」
凛とした、エルザの声はルーシィに届いた。
「今までお前は、自分より魔力の高い奴等に出くわしただろう?」
「う、うん…」
「あの時、お前はどうやって勝ったんだ?」
ルーシィの心臓が、高鳴った。
―自分の絆が、心が。
「…分かっただろ?仲間を思う気持ちが、私達の最大で最高の武器だ」
「うんっ、そうよねっ!あはは、昨日決意したのに…駄目だなぁ」
まだ弱い自分がいる、でもそれは決して弱さじゃない。
どんな自分も、糧なのだ。何かの思いが、力を与えてくれる。
「―!!!」
シャルルの頭に、予知が浮かび上がる。
それも、鮮明に。
『…俺、気づいたんだぜ』
ザザッ
『そんな…やめてよ…ナツを放して!!!!』
ザザッ
『あの時、お前が言ったんだろーが!本音を言えって!!』
ザザッ
『貴様の思いは、強い。それで私の仲間が傷つくのなら、許すわけにはいかない!!』
ザザッ
『あのときみたいに、また貴方を助けます!だからお願いッ、もうやめてぇぇぇ!』
「!!」
「シャルル…?」
新しい予知が、シャルルの心を揺さぶる。
もうこの運命は曲げられない事も、シャルルは知っていた。
―ナツが、死ぬ?
直感で、そう感じた。
これは伝えるべきだろうか、エルザを見上げる。
「…予知か」
「……」
やはり妖精女王には、敵わない。
「そんな…」
ルーシィとウェンディには、涙が滲んでいる。
「その感じでいくと、俺はナツと戦うんだな」
喧嘩ですまない、殺し合いになるだろう。
グレイはなるべく、そんな状況を避けたかった。
「対戦する相手は…、各自が望む相手となったか…」
エルザは素直に思う、ミラーリを助けたいと。
あの少女とは、会った気がするのだ。