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*18*
七冊目『所詮それは同じ事』
「…アンタは、アタシと同じ目をしているわね」
「お前みたいに、鋭くない」
物理的なのじゃないわよ、とミラーリは苦笑する。
じゃあなんなのだろう、特殊な目つきとは。
「逃げ場所を探す、濁った目ってこと」
「……!!」
気がつけばキクは風をまとい、刃物と化した腕をミラーリの首に押し付けていた。
「あら怖い」
「逃げてるんじゃないっ…、居場所を探しているだけだ…!」
徐々に冷静になっていったのか、腕にまとっている風が弱まる。
ミラーリは喉をさすり、うなだれているキクをチラリと見る。
(…そういうのが、似てるのに)
結局、人は逃げることしか能がないのだ。
逃げている、その言葉に否定したかった。
ここまで来たのは、居場所を探していたから。
臆病になってるんじゃない、怯えてるんじゃない。
なのにミラーリの言葉は、妙に心の奥底に突き刺さった。
「…くそっ」
あの天空の巫女なら、どうしていただろう。
(いや)
居場所を持つあの女に、分かるはずがない。
変わりたかった、人の役に立ちたかった。
それが空振りすぎて、今じゃもう後戻りできなくなった。
疲れた、腕が痛い。
寿命を削る代わりに、魔法を使えるキクの滅竜魔法。
「…はぁ」
もう寝よう、明日も早い。
いつも通りにレベリカがのしかかってくる事を期待して、その場を立ち去った。
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