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*43*
十四冊目『見据えた未来』
「…そいつ、馬鹿なんだ」
いつものグレイの笑みが、戻っていた。
薬の効果は続いているのに、体中に激痛が走っているのに。
「馬鹿で、短気で、冷静じゃなくて…欠点がたくさんあるけど、それと同じくらいいいとこあって」
大きな鎌を造り出し、グレイは構える。
汗が尋常ではない、これ以上の造型はもう不可能だろう。
「そんな面白い奴がいるのに、なくしちまうなんて―」
魔力がまだ残っている、動けよ。
こいつを、殺せよ。
こいつの瞳は、あいつそっくりなんだ。
アイツに酷似しすぎだ。
それでも、体はいう事を聞かない。
「―つまんねぇだろーが」
大鎌が振り下ろされた。
「照破 天空穿!!!」
「ぐあぁあっ」
キクは、ウェンディの滅竜奥義を喰らい過ぎた。
体はもう痛くて痛くてたまらない。
それでも彼は、動き出す。
…逃げ場所を、否定したいから。
「はぁ……はぁ……」
「もうやめてください!!」
ウェンディは涙をぽろぽろと流し、キクの手をとる。
あの時と同じだ、自分はまたウェンディに助けられるんだ。
どうして自分じゃ自分を救えないんだろう。
…誰かに頼ってばかりじゃ、だめなのに。
「頼ったっていい、確かにいつかは独りで立つ時だってあります」
「!」
「だけど、こんな近くに仲間がいる!倒れそうなときに救い出してくれる!」
「…っ俺…俺…!」
「あのときみたいに、また貴方を助けます!だからお願いッ、もうやめてぇぇぇ!」
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