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*49*
「っ!ってぇ…」
「気づきやがれ、く、そ…ほの…ぉ」
グレイは自分が倒れるのを、他人事のように感じていた。
もともとドロップに、痛覚敏感剤を飲まされている。
「うぐっ…あ”ぅ…」
「…お前、もうボロボロじゃねぇか…」
ナツは、箱を手に取る。
古い箱は、なんともいえぬような魔力を放っていた。
「ナツ…や、め…」
「わりぃな、グレイ…だったか…」
「ナ…ツ………」
震えるグレイの体を、仰向けにさせる。
すると向こうから、高い少女の声が聞こえた。
「ナツ!!!」
奥からはまた、鎧の女と小さい少女が現れる。
「…ああ、皆か」
ナツらしくない、儚い笑みはまるで崩れ果てそうなものだった。
「ねぇ、ナツ…もうやめて…」
「…」
「ナツ…ここにくるまで…元々のキブシの住人を殺したよね…」
ああ、そうだった。
闇ギルドに占拠された町の住人が反抗して、邪魔で…全員殺したんだ。
俺は、罪を犯したから。
もう絶対、表には戻れない。
「…俺、気づいたんだぜ」
ナツの声が、酷く震えているように感じる。
その声を、ただ聞いていた。
「もう汚れすぎたんだ、もう戻れない」
「そんなことない、ナツはもどれる!!」
ルーシィの涙が、酷く純粋なものに見える。
ナツは、下に倒れているグレイを踏んだ。
「ぐっ!?」
「ナツ…ッ、目を覚ましてよ!もうやめてよぉ!」
ぐりぐりと傷口を抉るように踏まれ、グレイはぐぐもる叫びを上げるしかなかった。
「……もう、戻れないのか…?」
問いかけるように、ナツに語るエルザ。
彼女の白い頬には、優しい涙が伝っている。
「うっぅう…!」
ウェンディにいたっては、ナツの変わりようにただ泣く事しかできなくなっていた。
ハッピーがシャルルに、泣きついた。
「ナツぅ…」
今だけは、シャルルはこの行為を許した。
「全部、予知の通り…」
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