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十六冊目『泣き叫ぶ咆哮』
目の前にある、小さな箱。
これこそが、ドラコーン クローフィだった。
「…」
これに口付けを落とせば、契約を交わされたことになる。
そして自分を犠牲にして世界は、平和に戻るのだ。
ドロップのためだ、こんな犠牲はむしろ大歓迎。
「よぉ、くそ炎」
「!てめぇっ、アイツ倒したのか?」
「気絶させておいただけだ、とどめは刺してねぇよ」
血まみれのグレイは、少し押しただけでも倒れそうだ。
だが、ナツはもう争う理由はない。
自分はここで、息絶えるから。
「もうおせぇよ。俺は今から、この箱と契約する」
「…それが、ドラコーン クローフィか」
グレイは虚ろな目で、箱を見つめる。
光は宿っておらず、限界が近いのが見て取れる。
それでもどうして彼は、立てていられるのだ。
苦しいはずだ。痛くて、どうしようもないくらい怖いはずなのに。
「なんでだ、お前」
何時の間にかこぼれた言葉は、グレイを驚かせるのには重文だったらしい。
目を見開かせて、挑戦的に微笑んだ。
「テメェを連れ帰るまでは、泣かねぇ」
「は、」
突如、頭に流れ込んだ映像。
泣くグレイがうつって、それをナツがなぐさめて。
「んだ、よ。これ、は」
「お前の記憶だ、人工ニルヴァーナは破壊した、記憶が戻るのも近いだろう」
「うるせえ!!」
「お前は今、すげー悲しんでるだろーが」
魔法など使わずとも、この男を殺せる。
隙を与えず、ナツはグレイの腹を殴った。
「っが、」
「こんなの知らねぇし、俺は悲しくねぇ!!」
「…って…」
グレイの目に、光が戻る。
正義の光、仲間を思う光、怒りに満ちた光が。
「あの時、お前が言ったんだろーが!本音を言えって!!」
グレイの拳は、ナツの顔を見事に的中させた。
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