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*12*
京香と別れた後も商店街をうろついたが、けっきょくその日もバイトは見つからなかった。
夜はカレー屋によってみると、米田監督がいた。
「お、期待の新人じゃねえか」
「どうも」
「座れよ。なあ不動、若いのに勿体無いとおもわねえか。ご主人を亡くしてから、女手ひとつでこの店を守って、カンタ君を育ててるなんてよ。奈津姫はまだ20代だ。今は無理が効いても一人で店は続けられねえよ。おめーはどう思う?」
「もしもし監督さん。そういう話は私の聞こえないところでお願いしますよ」
「ああ、奈津姫さん聞こえてたか。キーマカレーをふたつ頼むよ。俺のおごりだ」
「わかりました」
「わりぃな、監督サン。いただくぜ」
「俺も監督だからな。お前の実力はわかってる。ま、これは俺の期待のあらわれだと思ってくれよ。バイト先は見つかったのかい?」
「あ、いや、それがなかなかテント暮らしの人間を採用してくれるとこは無ぇーな。ま、チームのやつらも探してくれてるらしいし、すぐ見つかるだろ」
不動は上着だけ椅子にかけて、用を足しに厠に向かった。
しばらくして戻ると、監督はいなくなっていた。テーブルにはカレーがふたつあった。
「なあ、監督はどこいったんだ?」
「用事を思い出したから帰ると言っていたわよ。あ、カレーは食べてくれって言ってたわ。お題はもらってるから安心して」
「そうか」
カレーを食べ終わって席を立つと、上着のポケットに違和感を感じ、何か物を取り出した。そこには、三万円が入っていた。
「米田のおっさんのやつ……なかなか粋じゃねえか」
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