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*14*
個人練習を終えて、監督から言われていた集会所のファミリーレストランに入った。
「おう、来たか」
監督の向かいにはおばさんが座っていた。
「この人は向井さちと言って、まあ集会のボスみたいなもんだ」
その後は、不動はコーヒーを飲みながら米田監督から商店街とイリュージョンスーパーの話を聞いた。
店を出て商店街を通って帰ろうとすると、制服の少女にまた会った。
「あ、こないだのお兄さん!」
「お前は、たしかコロッケの。ありがとな。うまかったぜあれ」
「どういたしまして。それにしてもお兄さん、仕事は?」
「え?」
「若いのにこんな時間に、こんなところをうろうろしてるなんて、おかしいわ。あ、もしかして町内でウワサになってる、ブラブラしてるだけの人?」
「ひでえウワサだな。サッカーもしてるっつうの」
「あっ、ごめんなさい」
「気にすんな。たしかにそのとおりだしな」
「そうなんだ。ブラブラさんなんだ。それでこの間お腹空かせてたんだ」
「忘れてくれあのことは」
不動は顔を赤くする。
「そうだ! ねえ、今度山口商店ってところに来てよ。じゃあ、待ってるから!」
少女は笑顔をみせて去っていった。
(しかしこの商店街に来るとよく知り合いに会うな。まあ、商店街のチームに入ってるんだから当然か。しかしそろそろバイト見つけないとほんとにまずいな。どうするか。こうなったら住所偽造してもらって、嘘でごまかすか? 監督あたりに頼めば……)
不動が考えごとをしながら歩いていると、人にぶつかってしまった。
「わ、わりい。大丈夫か? って、京香か」
「あたしもごめんなさい、考え事してて。って明王じゃない」
「よお。あ、それイリュージョンスーパーの袋か?」
「あ、今買い物にね。やっぱダメかな」
「別にいいんじゃねえか」
「良かった良かった。裏切り者とか言われたらどうしようかと思ったよ」
「たしかにイリュージョンスーパーのやり方は気に食わないけど、便利なのは確かだしな」
「あ、でも行っていいって言われるともう行かないかもしれない。あたしって天邪鬼だから」
「ひねくれてんな」
「そんなこと言っていいのかな? あした応援に行こうかと思ったのに」
「狂犬ドッグスとの試合か。来てくれるのか」
「ウワサの風来坊の実力にも興味があるしね。せいぜい無様なプレーをしないでよね。万一負けたら笑ってあげるから!」
「負けるつもりはねえよ。じゃあ、また明日な!」