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*17*
「なんででやんすか?」
「さあな。とにかくそいつはそれでもプロになりたくて、組んでたコンビとプロチームの入団テストを受けにいった。テストは基礎能力と、試合実技をはかるものだった。そこで紅白戦をやったんだ。だが、コンビと男はくじ引きをして敵チーム同士になった」
「ふたりとも受かったでやんすか?」
「いや。受かったのはコンビのほうだった。男は試合中に、コンビに怪我を負わされてテストには受からなかった。それどころか半年はサッカーができなくなった」
「そんな……それでその人はどうなったでやんすか?」
「……サッカーができない間、なぜ怪我したのか男は考えた。男が弱かったからだ。コンビは、その男の動きの癖を知っていた。だから事故にみせかけて怪我させることができたんだ。だから男はもっと強くなるために、サッカーの修行の旅に出た。ずいぶん体はなまっちまったが、それでもそいつはまだサッカーをしてえのさ。いや、そいつにはサッカーしかねえんだ」
不動は視線を落とし、頭をかく。
「オイラ感動したでやんす! その人のこと応援するでやんす! コンビのやつはひどいやつでやんす!」
カンタは涙を流している。
「そいつもプロになりたくて必死だったのさ。最低の手段だがな。ボウズ、もう日も暮れてきたし、そろそろ帰りな」
「そうでやんすね! 帰ったらガンダーZの録画したやつ見るんだったでやんす! じゃーおっちゃん、また明日でやんす!」
「ああ。またな」
もうずいぶんと立ち尽くしてみたけど
たぶん答えはないのだろう この風にも行くあてなどないように
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