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*18*
第三話 人間としての欠落
不動が練習の帰りにカシミールに寄ると、中では奈津姫がカウンターにツップクして寝ていた。
「よほど疲れてんだな」
起こさないうちに帰ろう、と不動は踵を返してドアを開けた。すると奈津姫が目を覚ました。
「は、不動さん」
「げ。わりい、寝てていいぜ」
「カレーを食べにきてくれたんじゃないの? ごめんなさい、すぐに準備するわ」
「別に無理すんな……って聞いてねえな」
カレーを食べ終わったが、まだ夕方の四時だからか、客は不動のほかにはいなかった。
「恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
「そんなことねえよ。誰だってあるだろそういう時は」
「でも、私は商店街の人たちには『鈴木は大変だから』と言われてとても良くしてもらってるんです。だから私も『しっかりやらなきゃ』と、そう思うんです」
不動は水を飲み終えると、ごちそうさま、と言って、出て行った。去り際に、
「あまり考えすぎないほうがいいんじゃねえか? 『自分はこうでなきゃいけない』って考える奴は自分を追い詰めるぜ。じゃあな」
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