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イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー
作者: 南師しろお  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: イナズマイレブン 不動明王 パワプロクンポケット イナイレ しろお 
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10~ 20~ 30~ 40~

*27*

「いいから、いいから。お前は家の従業員だからな。従業員といえば、家族みたいなもんだ」
 がはは、と山口のオヤジは大声で笑う。
 貴子が料理をすべて用意した。その出来はとても良く、不動は食べ過ぎてかえって気が悪くなった。
「ただいまー」
 と言いながら、誰かが玄関の戸を開ける音と共に入ってきた。制服姿の少年だった。
「あれ。この人って例の従業員さん? 俺、このうるさい親父の息子の、山口亮平って言います。不動さんがいないときは俺が店の仕事やってんすよ!」
「誰がうるさいオヤジだ!」
「うるせえな! 声がでかいんだよ!」
「2人ともうるさいわよ! また近所の山本さんに怒られるからやめてよね!」
 どうやらこの一家は全員声が大きいようで、静かな貴子ですらふだんより数倍大きな声で言った。
「あ、不動さんってビクトリーズでさいきん活躍してるそうじゃないですか!」
「なに、リョウ。サッカーの話? 私スポーツはよくわからないから、お皿洗いしてくるね」
「よろしく頼む。俺も野球派だからサッカーはどうでもいいわ」
 オヤジは寝そべって尻をかきながら、テレビの野球中継を眺める。
「俺いま高2なんすけど、中学のころからビクトリーズの練習には参加して、たまに試合も出てたんですよ!」
「そうなのか。今はいないみたいだな」
「うん。実は高校の部活とオヤジの仕事の手伝いまでやってたら、ビクトリーズに行く時間が無くなっちゃってさ。でも不動さんが来てくれたからまた俺もビクトリーズに参加したいんだ。久々だと顔出しづらいから、今度不動さん俺を連れて行ってくれよ!」
「ああ。いまビクトリーズは戦力が必要だからな。現役のお前なら即戦力だろうよ」
「よろしく頼むね!」
 頃合をみて、不動は帰ることにした。
 オヤジが言うに、また明後日に来いとのことだった。給料をもらって不動は家に帰ることにした。 
 練習を一日はさんで、すぐに商店の仕事の日は来た。
 不動がランニングを終えてから仕事に向かう途中、商店街で、学校の帰りだという貴子と出会った。
「まだ11時だぞ? たぶん。ずいぶん早く授業が終わったんだな」
 腕時計が無いので、不動は影や太陽の位置で時間を把握している。かなり正確で間違えることはない。
「今日は防災訓練とかで早く終わったの。明王さん、仕事いつもありがとうね。お父さんほめてたよ、体力があるって」
 向かう方向がおなじなので、2人は商店まで一緒に歩いた。
「まあガキのころからサッカーやってっからな。オヤジの腰はどうだ?」
「まだ、よくならないみたい」
 笑顔だった貴子だったが、そのことには気落ちしているようで、不動が「腰は怪我すっとなかなかなおらねえんだよな」と言ったきり沈黙が流れた。
「ま、金をくれる限りは俺が手伝ってやるがな」
 不動がそういうと、貴子はふたたび笑顔に戻った。
「ありがとう!」
 山口商店に着き、貴子が店の中に入っていく間不動は準備体操をはじめた。
「おう、来たか不動! さっそく行って来い!」
「あいあい。ほんと声のでかいオヤジだな」

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