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イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー
作者: 南師しろお  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: イナズマイレブン 不動明王 パワプロクンポケット イナイレ しろお 
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10~ 20~ 30~ 40~

*35*

「お疲れ様」 
 会場の外で奈津姫と京香、商店街から応援にきてくれた人たちがビクトリーズを待っていた。
「よくやったね明王。しょうじきディノってイタリアの人のほうが目立ってたけど……」
 と京香が笑って言うと、不動は口を尖らせて、
「あいつは投げキッスとかやってたから目立ってただけだろ」
「MVPもジモンさんに持ってかれちゃったでやんすね」
 カンタの一言に、不動の眉がぴくりと動いた。彼は県予選のMVPに選ばれる自信があったが、イリュージョンカップのスタッフはジモンを選出した。
 不動はフンと鼻を鳴らすと、「ま、お前らも応援お疲れサン」と言った。
「あ!? 奈津姫、応援にきてたのか」
 回復した権田が、奈津姫を見つけるなり声をあげた。
「なんていうか、ひさしぶり、だな……」
「何を言ってるんですか。この前もカレーを食べにきてくれたじゃないですか」
「いや、なんとなくそんな感じがしたんだ」
 カンタが不動に、「今日はおっちゃんカレー食いに来るでやんすよね!」と言った。
「いや、鈴木サンにわりいから遠慮しとくぜ」
「あら。あなたはカンタのヒーローですから、我が家で歓迎しますよ」奈津姫が言う。
「じゃあ私も行こうっと!」
 京香が言うと、四人は一緒になって歩き始めた。権田が、取り残されて四人の背中をじっと見つめる。
「おいキャプテンどうした? まだ気分悪いのか? いまから商店街のみんなで宴会だぞ」
「あ、ああ。もちろん、行くさ……」





 イリュージョンスーパー竜巻店の中を辺見がうろついていた。監視カメラの死角を狙って、何か商品に細工をしている。
 同時刻、店長室では佐藤が山田に一枚の書類を渡した。客からのクレームと警備会社からのコメントだった。食品に衣類、店の商品が傷つけられている旨とそのリストがそこには記されていた。
 そのほかにも空調や照明などの設備にも不具合が生じている、と佐藤が口頭で付け足した。
「まさか商店街のやつらの嫌がらせか! そういえば前の試合で変な奴らが出てたな。さてはあいつらの仕業だな!?」
「こうなったら警察に通報して取り締まってもらいましょう!」
 憤っていた山田と佐藤だったが、山田がふと静かになった。
「残念だがそれはできないんだ佐藤くん。騒ぎが大きくなってこのスーパーの条例違反の話が大きく報道されるとマズいことになる」
「よう、ずいぶんとお困りの様子じゃないか」
 はっと山田と佐藤が店長室のドアを見ると、壁に辺見と名乗った男が寄りかかっていた。
「お前また性懲りもなくここに来たのか! 警察、警察だ!」
「いや、待て佐藤」山田が佐藤の前に出て、辺見をじろりと一瞥した。「お前俺の手助けをすると言っていたな。商店街を潰すことはできるか?」
「お望みとあらばすぐにでもできる。俺の得意分野だろ。そう言うと思ってこれを用意した」
 辺見は懐から白い粉が入ったビンを取り出した。
「商店街つぶし。これを使えば一発だろ。威力的に考えてな」
「なんだそれは?」佐藤が尋ねると、辺見はにやりと笑った。
「こいつは神のマナ200グラム。南米で開発された迷惑兵器でね。これを食った人間は巨大化して力も倍増する、いわゆるやばいドーピングってやつだな。だがこれを虫に食わせると人間とほぼ同サイズにでも巨大化する。この量があれば商店街を巨大なクモやゴキに襲わせることができる」
 山田と佐藤は、あまりの辺見の話の突拍子の無さに、言葉が出なかった。それほど危険なものを持ってこられるとは思ってもいなかった。
「どうだい、すぐにでもやってみようか」
「ば、バカかお前は」山田の声は震えている。「そんな竜巻町を虫だらけにしてイメージダウンさせる作戦が採用できるわけないだろ! うちまで売り上げがガタ落ちだ」
「そいつは残念だな。ま、とりあえずこのビンやるよ」
 ぽいっと辺見は佐藤の前にビンを放り出す。佐藤はあわててビンが床に落ちる前に捕った。
 辺見は何も言わず出て行った。山田と佐藤は顔を見合わせる。口を開いたのは山田だった。
「とりあえず、試してみるか。団子虫とかにちょっとあげてみよう」
 佐藤はうなずいた。
 辺見はスーパーの駐車場で焼き鳥をほおばりながら、くっくと笑っていた。
「まずは第一歩だろ。こっからは今までのようにはいかねえぜ? 明王よお……」


君の手で切り裂いて 遠い日の記憶を
悲しみの息の根を止めてくれよ
さあ 愛に焦がれた胸をつらぬけ

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