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イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー
作者: 南師しろお  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: イナズマイレブン 不動明王 パワプロクンポケット イナイレ しろお 
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「辺見、辺見はいるか?」
 店長室には山田一人だった。が、気配を感じた彼は辺見だと気づいた。
「ハイハイ聞こえてるぜ。どうしたんだ?」
「商店街を潰すとか言ってたくせに奴らは商店街をサッカーでアピールし始めたぞ!? 元気そのものじゃないか」
「サッカーねえ。いいんじゃないの」
「いいわけないだろ! このままだと土地の買収計画が」
「ん?」
「あ、いや、なんでもないぞ」
「ほうほう買収計画ね。あんた達の狙いは商店街の土地か。詳しく話すだろこの辺見様に」
「いや、その、再開発しようかと考えてるだけだよ?」
「じゃああそこには何かがあるってことか」
「ないない、絶対に何もない! と、とにかくお前は商店街を再起不能にしてくれればそれでいいんだ」
「そんなの簡単じゃねえか。今すぐやつらに練習試合を申し込むんだよ。奴らがサッカーで街をアピールしようってんならコテンパンにやっつけて大恥をかかせてやればいいだろ。サッカーの看板を二度と背負えないくらいにな」
「な、なるほど。しかしコアラーズはこの前の試合で奴らに負けてるんだぞ?」
「その時はおれがいなかっただろ、この辺見様が。サッカーは俺の得意分野だぜ」


 

「明王、暇でしょ? 映画でも行こうよ」
「あーわり、今日は玄武の奴と特訓する約束なんだよ」
「……そう」
 京香は明らかに悲しそうにか細い声を出して、とぼとぼと肩を下げて自室に戻ろうとする。
「あーわかった。映画な、映画。ほら仕度しろよ」
(わりい、玄武……)
 かくして2人は竜巻町からは少し離れた、都会にある「帝国通り」にやってきた。
 不動がチラシを確認すると、今やっているのは単純そうなアクション映画に教育映画、子供向け、
「あとはフランケンシュタイン……か」
「私その話嫌いなんだよね」
「なんでだ? こんなの嫌いもなにもないだろ」
「だって、折角つくってもらったんでしょ? 復讐なんて考えずに人生を楽しむことを考えるべきだよ。名前だって自分でつければよかったのに」
「俺は見たことねえけど、チラシ見る限りじゃ、愛も無く、ただ生命をもてあそぶ……そういう行為がいけないっつーことを言いてえんじゃねえか? たぶんだけどな」
「愛!? 明王の口からそんな言葉がでるなんて……」
 京香は突然笑い始めた。相当おかしかったのか、むせるくらいに笑っていた。
「うっせえな。ふざけてっと帰るぞ」
「ごめんごめん。とりあえず、アクション映画にでもしよっか」



 全体練習の日。米田が集合をかける。
「今日はお前らに報告がある。俺は本格的に商店街とビクトリーズの橋渡し作業のリーダーを務めることになった。残念だが監督の仕事はここまでだ。そこで、優秀な監督を連れてきた。須和田監督だ」
「よろしく」
 須和田は髭をたくわえた、目の細い男だった。彼からは覇気がまったく感じられず、瞳もうつろであった。
「俺は米田さんに、このチームを勝てるつもりにしろと頼まれた。お前らに妥協はしない。さっそく適正ポジションを考え直すためにテストをする」
 須和田のテストは長距離走から通常の練習を見るものまで多岐にわたった。さきほどまで虚ろだった須和田の目は突然鋭い光を灯し、選手たちの動きを睨むように凝視した。
 練習が一通り終わり、普段の練習よりはやく須和田は集合をかけ切り上げさせた。
「だいたいわかった。不動、お前がキャプテンをやれ」
 チームはどよめいた。野口がすかさず反論する。
「ちょいと待った。今までキャプテンはずっと権田がやってきたんだ。いまさら変えるのはチームの誰も賛成しないぜ」
「わかった。なら権田は副キャプテンだ。権田がキャプテンのままではこのチームは成長しない。以上、解散だ」
 須和田はそそくさと去ってしまった。ほとんどの選手が納得のいかないまま、会議は終わった。
 



「今日は奈津姫の手伝いに行ってくるけど、明王はどうするの?」
「体調が良くねえからパス」
「あなたでも体調を崩すことがあるのね。じゃあ、行ってくるね」
「あ、そういや商店街の古い地図を持ってるかって、さちっておばさんにお前に聞くように言われたぜ。なんか大事なのかそれ」
「ああ、あれはネットオークションに売ってしまったからもうないよ。って伝えといて」
 京香が出て行った後、不動がベッドで横になっていると、家のどこからかピーと機械音が繰り返し聞こえた。
 気になって眠れないので、探しに行くと二階の奥の部屋らしかった。
「入るなって言われてんだよナ。めんどくせえ、京香に連絡……」
「明王。部屋の前で何してるの」
 不動が部屋の前で、携帯電話の操作に手間取ってるうちに、いつのまにか京香が帰ってきたようだった。
「この部屋がうるさくてよ」
「パソコンの冷却装置が壊れたみたいだね。少しマズいかも」
 京香が部屋のドアを開ける。不動が少し身をかがめて覗くと、部屋の中にはパソコンがぱっと見てわかるだけで10台以上はあった。
「あ、見ちゃだめだよ! もう」
「わ、わりい。カシミールはどうしたんだ?」
「一時的に閉めてきたよ。お客さんがいないときにパソコンをモニターしたら、一台落ちてるのがわかったから」
「……なんであんなにパソコンがいっぱいあるんだ?」
「やっぱり見ちゃったんだね。秘密にしてたけど、私株の取引をしてるんだ」
「この部屋にはお前、全然出入りしてないだろ」
「プログラムに任せてあるから。これが私の本職だよ」
 あれだけのパソコンが起動しながらキーボードがひとつしかないなど不自然な点はある、と不動は考えながらも、京香が言わないのであれば気にしないことにした。
「あ、明王。またカシミールに戻るけど、帰ったらおかゆ作ってあげるからね」
「別に俺のことはほっといてくれていいぜ。店頑張れよ」
 




明日がくるはずの空をみて 
迷うばかりの心持て余している
かたわらの鳥が羽ばたいた 
どこか光をみつけられたのかな

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