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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*12*

 『冊子』

 私は文芸部部長、まぁ……人が居なかったから、強制的に部長になった訳だが……部員が三人しか居ないんだ……おまけに後輩の一人は不登校だし……私は四年、後輩は三年と一年……その内の三年が不登校だ……何時も居るのは、本好きな一年の後輩だった……私が卒業したら、とてもとても不安で仕方無いんだが……そして、今、大変なのが、冊子作り……これは、文芸部の人間全員で作る作品集みたいな物だが、三年の不登校の後輩は、作品をもう、提出しているので、良いのだが、この一年の後輩の能力が未知数だったのだ……この一年の執筆レベルが分からないのだが、作品を見せても貰えない……一年はそれをひた隠す……一体何でか、分からないのだが、一年の作品を読んで見たかった……何度御願いしても、この一年の小説作品を見せてはくれなかった……

「頼むよ、後輩君、一度で良いから、小説見せては貰えないかな?」
「何でですか……?俺は小説を見せないし、書きません……読み専ですので……」
「でっ、でもぅ……文芸部は必ず一作は小説を書かないといけないんだよ?君だけを特別には出来ない……」
「良いですよ……だったらこの文芸部を辞める迄です……どうします?文芸部を辞めて、廃部にするか、この俺に小説を書かなくさせるか、のどちらかです……では、門限ですので帰ります……来週の月曜に来ます……考えておいて下さいね……?」
 ねっとりとした笑顔で一年は文芸部のドアを開けて、外に出る……私はその間しか悩めない……文芸部の冊子作りは来週の火曜日に顧問に提出しないと……さぁ……私も小説書かないと……もうじき書き終わるけどさ……

 さて……どうするか……ある程度前から書き溜めていたが、もうすぐ書き切ってしまう……その空いた時間を後輩の為に時間を使うか……そう思いながら、小説を書いた……

 ただ単純に時間は過ぎていく……三時間もすれば小説は書き切っていた……『ふあ〜ぁ』……と欠伸を一回して、考える……何で、後輩は小説を書く事をしないんだろう?そう思いながら、小さな、トラウマか?とか、考える、だが、頑張って、トラウマは克服したら良いものだが……大きかったら、仕方無い……他に何かあるだろうか……?

 完全に詰んでいる……そう思いながら、文芸部の冊子のプロットを作る……まぁ、一時間もあれば作れるが……さて、どうしたら良いんだ……?後輩の心を溶かせたら良い物を……そんな物ある訳が無い……そう思いながらも、時間は進む……そして、日曜日……事件は向こうから、やってきた……

「太陽高次の事件簿はっと……」
「十折魔駈の暴走譚はっと……」

突然、二人はぶつかる、私は尻餅、相手はよろめいただけだった。
「たぁ〜……って、後輩君!?何で!?」
「でぇ〜……って先輩……?」
 今ぶつかったのは後輩だった……そして、何とか、後輩君を引きとめ、話を聞く。

「詳しく教えて?何で書いてくれないの?」
「のっ……ノーコメントです……」
 凄い苛つく……厭が何でも聞いてやる!『何で書かないの?』『言いません』『良いから書いてくれる?』『文芸部辞めますよ?』『書いてくれたら、部長にさせるよ?』『その前に門限があるので、厭です、というか、小説や本を読み切ったら、来ませんし』『書いて欲しいんだよ、そうでないと、文芸部が廃部に……』『俺には関係ありません、勝手に文芸部廃部しておいて下さい』『君は酷いねぇ……文芸部が廃部して、自分は関係ないって……』『だって、本さえ読める、静かな場所は文芸部位しかないッスから……』『良いから書いてくれる?』『だから、書きませんって……文才無いんですよ……』『書いて見なければ分からないよ?それだけ本を読んでいるんだから、少しはあると思うよ?』『無いッスよ……いい加減にして下さい……書きたくないんですよ……』『何で書きたくないの?』『何時も書く量が多いんですよ……だから、皆から、怒られるんです……『そんな事をするなら、勉強を頑張りなさい!!』って……勉強よりも、小説を書いた方が良いんですが、それで、将来を決めるのは厭だなって……」だから書いてはいけないんですよ……こんな厭な事を思い出すから……』
 ……ら……だから何だよ!!お前の好きな様に書けば良いじゃないか!!親が皆が怒る!?だから何だよ!?お前の人生にケチつける気か!?書けよ!!お前の好きな様に!!そう言うのが文芸部の存在理由だ!!
 だ……だから、書くのが厭なんですよ!!皆から、苛められるし……
 知るか!!お前は逃げてるんじゃないのか!?苛められるから、書きたくない!?違う!!書きたいけど、お前は抑制してんだ!!解放しろよ!!自分の心を!!さぁ!

 ある程度、私の心を吐き出した……流石に言い過ぎたのかもしれない……すると、後輩は言う。
「……うん……そうですよね……先輩の言う通りですね……自分は書きたいのを我慢していただけなのかもしれません……明日、小説出します……制限は何枚ですか?」
「……か……書くのか……?確か、400字詰原稿用紙100枚迄……位で頼む……」
「……むぅ……頑張って書きます……」
 すぐさま、後輩は消えた……私の言葉で、後輩を救ったか……少し、楽になったな……そう思いながら、家に帰った……

 ただ、時間は進む……プロットに吐きそうになりながらも、何とか完成させる……すると後輩君が来た、USBメモリーに入れていると、聞いて、小説を読んでみた……これは凄い……この小説は読みやすくて、面白い……数時間で読み切っていた……とても濃厚な数時間だった……そして、顧問にプロットと同時に三人の小説を渡して、帰った。

「ただ、この小説書いて分かったんです……やっぱ、小説を書くのは面白いって……」
 テスト冊子を見ていて、後輩は言う、そうか……それは良かったな……そう思いながら、誤字・脱字無いか、探す……無いな……
 何とか無くてよかったな……私は溜息を吐いた……こうして、何とか冊子は出来たのだった……

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