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東方奇妙譚
作者: 彩都  (総ページ数: 150ページ)
関連タグ: 東方Project 二次創作 三次創作 クロスオーバー ジョジョの奇妙な冒険 
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「これで……これで全部終わったんだ……何もかも、長かった……『あの人』及び周理外円を倒す事が出来て、最高な気分だぜ……」
 自分がそう言って、虚空を見つめていると、近くに居た霊夢がゆっくりと起き上がって、自分に言う。
「お、おめでとう輪廻……これで元に戻れる可能性が浮上してきたわね……」
「あぁ、そうだな……それにしても、体中が痛くなってきた……薬でも切れたのかなぁ?」
 自分はそう思いながら霊夢の手を使って、立ち上がる。次に周理外円の前に立ち、『スタンド』を出しながら、周理外円に言う。
「ハァハァ……周理……外円よ……俺を、元の世界に戻しやがれ!」
「無理」
「えっ……? おいおいおいおい、それはどういう事だぁ? 何で『元の世界に戻せない』んだぁ?」
 自分が不思議そうに言うと、周理外円は簡単に言う。
「私の『スタンド』能力は、『右手で他のモノを弾く』、だ。だから『一度違う世界迄強く弾いたモノはもう一度強く弾く事は出来ない』……つまり、『お前は私の『スタンド』能力で強く弾いてもこの場所から元の世界へ脱出する事が出来ない』んだ……脱出するには、自力で無いと無理だ」
「えっ……それじゃあ、俺はこの幻想卿でずっと住む事に……?」
 と、此処で魔理亞の発言を思い出す。『『幻想卿』に来た外来人はもう元の世界に戻れない』事を……魔理亞の発言、周理外円の発言を受けて、自分はその場で跪く。
「そ、それじゃあ俺はもうこの『幻想卿』から脱出出来ないのか……」
 自分がそう言うと、周理外円が変な声を出して返答する。
「はぁ? お前は何を言っているんだ? 普通に歩いて脱出出来るだろ、そんな砂利道を歩く訳じゃないしさ?」
「バカ! この『幻想卿』って場所は『一度入ったら抜けられない』んだよ!!」
「は、はぁ……!? だから私の仲間が戻ってこないのか……ってか、メールも電話も通じなかったのはその所為か……!!」
 自分の発言を受け、周理外円は顔面蒼白になる。自分は一体どんな悪い事をしたのか、やっと理解したようだった。
「そ、そんな……お、お前等……ほ、本当にこの『幻想卿』に来たら、元の世界には戻れないのか……?」
「えぇ、そうよ。元の世界に戻ろうと歩いていても、何時の間にか村の中心に戻っているわ。だから此処から元の世界に戻ろうとするのは……不可能よ、過去に色々な外来人が脱出を試みた。だけれど、脱出は困難を極めた。だから永住する事を選んだ。それ位脱出は困難よ」
 周理外円の発言に霊夢が優しく返答する。すると周理外円はその場で戦意喪失、全てを喪失し、絶望した表情をする。
「う、嘘だ……! 私だけでも脱出を試みなくては! 『スタンド』よ! 私を弾け……ッッ!!」
「それはダメよん?」
 ヘカーティアはそう言って、何度目か分からない周理外円の顔面を踏みつける、そして周理外円の『スタンド』は消滅する。
「自分だけ逃げない事、ちゃんと兄弟である輪廻の事も考えなさいよ?」
「う、煩い! 人の踏み台にならない奴を助けても無駄だ!」
 周理外円はそう言って、自分を睨む。ってか、人を踏み台にするなよ……そう思っていると、背後から厭な感覚を覚えた。
「あら? 輪廻じゃない? お久し振り……」
 そう言って現れたのは、八雲灯、八雲舞だった。二人の背後には目が大量にある空間があった。
「あら? 灯じゃない、珍しい」
「まぁ、彼のお祝いですもの、私も盛大に祝わないとね? あぁ、そうだ。輪廻、そして寝転がっている人に聞きたいわ」
「あぁ? 何だよアマ?」
「輪廻、貴方は『元の世界に戻る』権利を持っている、それは何故か? 『謎の手違いにより、貴方がこの『幻想卿』に来たから』よ。そしてその『謎の手違い』を生んだのが、寝転がっている貴方」
「……そうだな」
 自分がそう言うと、灯はとんでもない事を言った。
「輪廻、『貴方が寝転がっている存在を見捨てるのなら、『元の世界に戻る』権利をあげて、元の世界に戻らせましょう』、つまり、『寝転がっている存在を見殺しにする』のです、その条件を飲むなら、元の世界に戻しましょう。さぁ、輪廻、貴方はどうする?」
「…………」
 自分は無言になる。今迄の状況を鑑みて、灯の提案は正しい。でも、それは──
「厭です。周理外円、周理輪廻の両名で元の世界に戻りたい、だからその提案は受けない」
「!? 輪廻、貴方は馬鹿なの!? 貴方を攻撃した相手を、相手と共に元の世界に戻るですって!? 貴方、また元の世界でボコボコに……」
「されてもいいよ。それが運命だから……!」
 力強く言う自分に対し、霊夢は呆れていた。そして扇子で口を隠す八雲灯が自分に言う。
「ウフフ……矢張り私の思い通りの回答をしたでしょ、舞」
「そうですね。しかし、一言一句間違えずに当てるとは……流石灯様、『幻想卿』の賢者であり、『幻想卿』の──」
 舞がそう言うと、灯が止める。
「それ以上はダメよ。ふむ、まさか思い通りの回答をするとは中々に面白いわね、貴方は」
「あぁ、そうかい? で、俺は一体どうなる? その意見を受け入れなかったから、元の世界には戻れないってか?」
 自分がそう言うと、灯が頷く。
「えぇ、千載一遇のチャンスだった、というのに……」
「へっ、そんなの関係ねぇや。俺と周理外円、二人で『周理兄弟』だ。二人で戻らないと俺の両親が悲しむだろ?」
「フフフ、本当に貴方は優しいのね?」
「優しくないさ。一般的だぜ?」
 自分はそう言って、優しく微笑む。幾ら『人を見捨てろ』、と言われても、『血の繋がった存在』だけは見捨てられない。それだけは記憶が無い自分でも分かる。そして自分は寝転がっている周理外円に手を伸ばす。
「さぁ、お前も起き上がって、一緒に俺の歓迎会をしようぜ? 俺、腹が減ってんだよ、早く飯を食いたいんだが?」
「……わ、私を許すのか……? この、私を……? お前を痛めつけた、というのに……?」
「そりゃそうだろ? だって、俺達周理兄弟はもう『元の世界に戻れない』んだぜ? だったら、兄弟仲良く、一緒に手を取り合って生きていこうぜ?」
「…………」
 周理外円は無言になって、右手を伸ばす。そして自分の手を──叩(はた)いた。
「フンッ! 弟の分際で巫山戯るな! 私は兄だぞ! 一人で立ち上がれる!」
 周理外円はそう言って、皆の足をどかし、ゆっくりと立ち上がる。そして自分を背にし、声を震わせながら周理外円は言う。
「お前は……優しいんだな。何で……私は気が付かなかったのだろう?」
「あぁっ? 『今迄気付かなかった』だけで、『今気付いた』んだろ? だったらそれは良い成長じゃねぇか。だから、一緒に生きようぜ、周理外円……いや、『兄貴』?」
 自分がそう言って、笑顔で再度、右手を指し出す。すると周理外円──いや、兄貴だ──は自分の方を向き、涙を流しながら左腕で目を覆う。
「……くっ。私も年だな。涙腺が緩くなっている……」
「いいじゃねぇか。年を取るって事は、一歩一歩前に進んで『未来』に向かって、進むって事だからな」
 兄貴の発言を受け、自分は優しく返答した。そして兄貴は右手を差し出したので、自分は兄貴と握手をする──これで、仲良くなれれば良いな、と自分は思った──

 そして自分と周りのメンバーで歓迎会を再開した。今日、蒼魔館では、色々な事があったけど、今から始まる歓迎会を楽しもう。自分はそう思いながら歓迎会のメンバーを見る──歓迎会のメンバーは皆、笑っていたり、微笑んでいる──さぁ、自分も歓迎会を楽しもう。

 第二十四章 絶望や死に嗤え 完

 第二十五章に続く──

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