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- サクラ
- 日時: 2011/01/03 15:11
- 名前: 柚莉愛 (ID: LV9Enekb)
第1話 「出会い」
——桜ちゃん。
私、桜ちゃんの夢絶対に叶えるよ。
そのために私は勉強に専念する。
だから他のものなんてどうでもいい。
自分にそう誓ったから・・・・
第一章 春の訪れ
「玲奈!ビッグニュース!今日、転校生来るんだって!」
玲奈こと松井玲奈(まついれいな)はこの春高校2年生になった。
高校に入って仲良くなった川谷水麻(かわたにみお)とクラス替えで同じになり、喜んでいる最中だった。
「うちのクラスだといいね!」
水麻は笑顔で玲奈に言った。
「うん」
玲奈は無表情に答えた。
「玲奈ってば冷めてる〜!男子かもよ?新しい恋の始まり〜みたいな!」
一方水麻は玲奈とは対照的に燃えている。
「私、男子に興味ないし、恋もしないし。」
「またそのセリフ!?いい加減考え方変えてみたほうがいいよ。」
水麻はさらりと玲奈に言った。
——私には恋よりも大切なものがあるんだもん
玲奈は言いかけそうになった。
すると教室中にチャイムが鳴り響いた。
騒がしかった教室も一気に静まりかえる。
「じゃ、あとで!」
水麻が自分の席に着いたので玲奈も席に座った。
教室の前扉が開き、新しい担任が顔を出す。
「皆さん、おはようございます。私はこの春新しくこの高校に来た、 田村陽子(たむらようこ)と言います。こう見えても24歳よ!みんなよろしくね。」
新しい担任の田村は営業スマイルで挨拶した。
「美人だぁ〜。」
「かわい〜。」
早くも男子は田村に興味津々だ。
「ただのブリッコじゃん。」
女子からは怖い目線で見られている。
玲奈はどちらとも思わなかった。
「あっ、忘れてた〜。転校生がいるの。入って入って!」
田村の甲高い声のあとに入ってきた転校生。
「キャー!かっこいい!」
女子からは歓声。
「イケメンが来たっ・・・。」
男子からは悲痛な声。
一方玲奈はその転校生を何も言わずに見ていた。
「安藤夏(あんどうなつ)です。これからこの2−Bでよろしく!」
安藤夏と名乗った転校生は笑顔で挨拶した。
女子の歓声が一際大きくなる。
「は〜い。みんな静かに!安藤君は松井さんの隣ね。」
そう言った田村が指を指したのは間違えなく玲奈の隣の席だった。
「よろしく。」
夏は玲奈に挨拶した。
「う、うん。こちらこそ・・。」
玲奈はどういうわけか冷や汗をかいていた。
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- Re: サクラ ( No.1 )
- 日時: 2011/01/03 15:16
- 名前: 柚莉愛 (ID: LV9Enekb)
第2話 「探し物」
「夏君ってやっぱかっこいいよね〜。」
「水麻ってばそればっかり。」
「だって本当のことじゃん〜。」
夏が転校してきて早一週間。
夏はもう女子の間で人気者だった。
「玲奈は隣でずるいよ!」
そうなのだ。
玲奈は夏と席が隣のため、色々言われる。
「安藤君って忘れ物多いよ。私、いっつも教科書とか見せてあげてるもん。」
玲奈はあきれた表情で言った。
「え〜。そこがかわいいんじゃん!てか、貸すとか羨ましい!。」
——そう言われてもね。好きでやってるんじゃないし
玲奈はつい叫びそうになったが
その言葉を飲み込む。
「まぁ、私は本気じゃないけど、本気の子もいるから気をつけなよ?」
水麻は本気の顔で言った。
「私、好きじゃないから大丈夫!てか好きにならない!」
玲奈は微笑んだ。
それから数日たった4月下旬。
玲奈は朝から桜の木の下に一人でいた。
桜の花はとうに散り終わって、青葉がなりかけている。
——桜ちゃん。桜はもう散り終わって
青葉がなっているよ
手に握っていた何かをさらに強く握りしめる。
そこでチャイムが鳴った。
玲奈は急いでバックを持ち、教室へ向かった。
大切なキーホルダーを落としたことにも気づかずに。
「ギリじゃん。危ないね。」
隣の席の夏が話しかけてきた。
「まぁ、間に合ったからいいの。」
玲奈は無愛想に答えた。
ふと水麻のほうを見ると、
口パクで「ずるい」と言っているのがわかった。
玲奈は苦笑いした。
——まぁ、確かにかっこいいし、おもしろいし、優し いとは思うけど・・
これ以上夏のことを考えるのはやめた。
一時間目の授業が始まり、
玲奈は大切なものがなくなっていることに気づいた。
「あれ・・・?ない!」
独り言を呟くと、玲奈は机の周りを探し始めた。
——どうしよう・・。どこに落としたんだろう・・
玲奈は焦った。
その様子を察した夏が話しかけた。
「どうしたの?」
「何でもない。」
そう言いつつ玲奈は探すのをやめない。
「明らかに何か探してんじゃん。」
夏はそう言うと
何かをわからないものを探し始める。
玲奈は机の周りにはないとわかった。
その時、玲奈は思い出した。
10時になると学校の掃除人が掃除を終えることを。
そして廊下に落ちているすべてのものを
処分することを。
今の時刻は9時40分。
授業が終了するのは10時。
このままここにいても間に合わない。
「松井、探し物ってどんな・・って泣いてんじゃん!」
夏は驚いた。
玲奈が泣いていたからだ。
「どうしよっ・・このままじゃっ、捨てられる・・・。」
玲奈は涙が止まらなかった。
「そこうるさいぞ。」
数学教師村井が玲奈と夏を注意した。
幸い、玲奈が泣いていることには気づいていない。
泣いている玲奈の代わりに夏が答えた。
「すいません。松井さん、腹痛がひどいらしいんでしゃべれないらしいです。ってことで保健室連れて行きます。」
夏は言うが早いが玲奈の手をとり、教室を飛び出した。
- Re: サクラ ( No.2 )
- 日時: 2011/01/03 15:23
- 名前: 柚莉愛 (ID: LV9Enekb)
第3話 「桜の木の下」
「あった!?」
「ない・・・。」
玲奈と夏は授業を抜け出し
廊下で探し物をしていた。
Sのイニシャルのピンクのラメキーホルダー。
サイズは大きめで、
見つかりやすいはずなのにどこにもない。
時刻は9時55分。
タイムリミットは刻一刻とせまっていた。
「安藤君・・。もういいよ。見つかりっこないも ん。」
玲奈は諦めの声で夏に言った。
「大切なものなんだろ?諦めんなよ。松井が朝通ってきたとこ一通り探そう!」
夏はまだ諦めていない。
玲奈は不思議だった。
どうして人のためにここまでしてくれるのか。
諦めないのか。
「うん。」
玲奈も夏の気持ちを無駄にしたくないと思った。
二人は残り5分にかけて、必死で探し始めた。
玲奈が通ってきた道に沿って。
しかし間に合わなかった。
1時間目終了のチャイムが鳴ってしまったのだ。
「あぁ・・。鳴っちゃった。もう処分されちゃったんだろうな・・・・。安藤君、授業までサボらせてごめんね。探してくれてありがとう。」
玲奈は笑顔でお礼を言った。
——桜ちゃん・・なくしてごめんね
玲奈が教室に戻ろうとした時だった。
「何言ってんだよ!まだ外探してないじゃん。」
夏が呼び止めた。
玲奈が振り返ると夏はピースサインをして笑っていた。
この時から玲奈は
夏のことを意識していたのかもしれない。
玲安は自覚していなかったが。
外もまんべんなく探した。
残るは玲奈が朝、
あのキーホルダーを握って見つめた桜の木。
——ありますように
玲奈は祈った。
「これじゃね?」
夏がSのピンクラメキーホルダーを掴んだ。
玲奈は今度は嬉し泣きした。
「良かったな。見つかって。」
夏も嬉しそうだ。
——安藤君っていい人だったんだ。
玲奈は心から夏に感謝した。
その時、2時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「あっ!まだ急げば間に合うよ。行こうぜ!」
夏が玲奈の手を引き走り出す。
玲奈は一方的に掴まれた腕にドキドキしながら走る。
夏はふと、玲奈のほうを振り返って言った。
「松井のイニシャルってSじゃないよな?」
玲奈は一瞬どきっとしたが答える。
「う、うん。Sは私の大切な人のイニシャルなの。」
それを聞いた夏は少し黙ってから呟いた。
「俺の大切な人のイニシャルもSだよ。」
夏はそれだけ言うと咄嗟に前を向いた。
「えっ・・・?」
玲奈は気になった。
夏の大切な人とは誰なのか。
しかし、教室に着きクラス中の視線で
一気に現実に戻されたのだった。
2時間目の授業は担任の田村の英語だった。
「あら?松井さんも安藤君もどこ行ってたのぉ?」
「前の授業で松井さんがお腹痛いって言って保健室に連れてったんですけど、行く途中で治ったんで戻ってきました。」
夏が苦しい言い訳をした。
しかし田村は納得したようだった。
「そっかぁ。お大事にね。」
玲奈は小声で返事をすると、夏と共に席に着いた。
——どうして安藤君はこんなに優しくしてくれるんだ ろう
不思議だった。
数日前とは違う感情を抱いていた。
好きという気持ちとは違うのだ。
玲奈の視線に気づいたのか、
ノートをとっていた夏が横を向いた。
「どうしたの?」
玲奈は先ほどのお礼と共に、
自分でも信じられないことを口にした。
「さっきは助けてくれてありがとう。これからは夏って呼んでいい?」
夏は一瞬驚いた表情をしたが、すぐに笑って
「いいよ。俺も玲奈って呼ぶよ?」
と言った。
玲奈は自分で言った言葉に自ら驚いていた。
男子を呼び捨てするなんて・・・・
男子から下の名前で呼ばれるなんて・・・
しかし、このとき玲奈は何も知らなかったから
こんなことを言ったのだろう。
夏の過去を知っていたら
こんな言葉は発さなかっただろう。
そして、夏も知らなかった。
玲奈の過去を。
- Re: サクラ ( No.3 )
- 日時: 2011/01/03 15:25
- 名前: 柚莉愛 (ID: LV9Enekb)
第4話 「特別な友達」
第二章 特別な友達
「ねぇ、玲奈って夏君のこと好きでしょ?」
6月に入ったある日。
玲奈は突然水麻に言われた。
「えっ!?」
玲奈は食べかけていたウインナーを吐き出しそうになった。
水麻は真剣な表情で続ける。
「実は私、見てたんだ。ずっと言えなかったけど。玲奈が夏君に保健室に連れて行かれる前のこと。玲奈泣いてたでしょ?それに、お腹が痛いっていうのも怪しいし。」
——うぅっ・・・あの日のことを見られていたなんて
玲奈は少し焦ったが、正直に話した。
「実は、あの日私が大切なものをなくしてしまって・・それを探すのを夏が手伝ってくれたの。」
「本当にそれだけ!?告白して振られたんじゃないの?」
水麻は鋭く聞いてくる。
「うん。別に告白なんかしてないし。っていうか好きじゃない!」
玲奈はここまで言えば水麻も納得するだろうと思った。
しかし甘かった。
「じゃあ、何で呼び捨てし合ってるの?」
「う・・・ん・・・。何か夏は特別なんだよね。」
「特別?」
水麻が聞き返す。
「うん。夏は今まで出会った男子の中でもすごく親切だし、話しやすいし、特別な友達になれるって思ったんだ。」
水麻はつまらなそうだ。
「え〜!!それって玲奈が夏君のこと好きだからじゃないの?」
玲奈は即答した。
「ないない!ただの友達だよ。」
玲奈は自分でもはっきりそう思っていた。
夏はただの友達。
恋愛とは違う。
——だって私には恋愛なんてする時間なんてないも ん。 桜ちゃんのために・・・
ちょうどその時。
「玲奈!英語のノート貸して♪」
夏が笑顔で言った。
「はいはい。でも夏!その笑顔怖い!」
玲奈はノートを渡しながら言った。
その様子をそばで見ていた水麻が口を挟む。
「ねぇ、なんで二人そんなに仲良いの?」
夏と玲奈は顔を見合わせる。
先に口を開いたのは夏だった。
「まぁ、俺らは信頼し合ってるからな。」
「そうそう。」
玲奈も肯く。
「え〜!そんなのおかしいよ〜!」
水麻はやっぱりつまらなそうだった。
その水麻の様子を見て夏と玲奈は笑った。
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