コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 女神と二人の契約者 truth and lie
- 日時: 2011/09/07 20:40
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=17448
重要なお知らせ>>71
クリックありがとうございます!!
ここには何度か投稿させていただいている者です。
上のURLは最近書き始めたシリアス・ダークの小説です。
※初めての方は最初にご覧くださいませ
Ⅰ、スレ主が大大嫌い!!
Ⅱ、荒しに来たぜ☆
以上に当てはまる方は戻るボタンを連打してください!!!!
読むにあたってのご注意 >>7
それ以外の方は是非とも見ていって下さいww
コメントもどしどしお待ちしております。
誤字脱字があったら教えていただけるとありがたいです。
しょっちゅうミスをするもので……
このお話はシリアス50%、恋愛30%、後の20%は色々……みたいな感じで進んで行きます!!
(良い加減でごめんなさい)
切ない感じで進んで行けたら良いなぁと思っております。
少し流血シーンがあるので苦手な方はごめんなさい
。さっきから謝ってばかりですね……
【スレ主の呟き】
岩手県から帰ってまいりました。
更新再開です。
♪大切すぎるお客様紹介♪
そう言えばこしょうの味知らない様【コメディ・ライトにて『トゥモロー&トゥモロー&トゥモロー』執筆中】
月読 愛様【コメディ・ライトにて『古本少女!』執筆中】
野宮詩織様【コメディ・ライトにて『おいでませ、助太刀部!! 』執筆中】
現在3名様です!!
いつもいつもありがとうございます<m(__)m>
コメントは私にとって凄いエネルギーになっています!!
※来て下さったお客様の小説は拝見させていただきたいです。小説読むのが大大大好きなので!!小説のタイトルを教えていただけると、とても嬉しいです。
あらすじ>>51
山下愁様に書いていただいた紹介文です!!
だいぶ話が進んできたので、こんなに読めないと思った人はあらすじを読んでいただければ分かると思います。
山下様、本当にありがとうございます。
〜story〜
プロローグ 楓編 >>1 天界編 >>2
第一章 過去からの逃れと二度目の出逢い 第一話>>3 第二話>>4 第三話>>6 第四話>>8 第五話>>10 第六話>>16 第七話>>21 第八話>>24
第二章 ただ誰も傷つけたくなくて 第一話>>28 第二話>>31 第三話>>34 第四話>>35 第五話>>38 第六話>>39 第七話>>40 第八話>>41 第九話>>42 第十話>>47 第十一話>>48 第十二話>>49 第十三話>>50
第三章 途切れない導きの連鎖 第一話>>53 第二話>>54 第三話>>55 第四話>>57 第五話>>59 第六話>>60 第七話>>65 第八話>>68 第九話>>69 第十話>>70
*cast*
地上界
神風 楓 huu kamikaze (騎士) >>5
氷崎 由羅 yura koorizaki (主) >>56
金時 時雨 sigure kinntoki (騎士)
春椙 花月 kagetu harusugi (主)
黒田 羽狗 haku kuroda (主)
白川 大牙 taiga sirakawa (騎士)
天界
愛と美の女神 ヴィーナス
天の主神 ジュピター
神々の使いの神 マーキュリー
軍の神 マーズ
天空の神 ウラヌス
農耕の神 サターン
海の神 ネプチューン
——start—— 2月 19日
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- *お知らせ* ( No.52 )
- 日時: 2011/06/05 20:02
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: NH7CSp9S)
遅れてしまいましたが『第二章 ただ誰も傷つけたくなくて』が無事に完結しました!!
……なんというか中途半端ですね(^^ゞ
軽いネタばれになりますが実際のところ、第三章と少し繋がっているところもありますw
更新は相変わらず遅いと思われますが次回からは『第三章 途切れない導きの連鎖』をお送りしますww
次章では楓の右目について真相が暴かれます!!
メインキャラとなる二人も登場するのでお楽しみにしていて下さい☆
引き続き宜しくお願いいます<m(__)m>
- 第三章 途切れない導きの連鎖 (1) ( No.53 )
- 日時: 2011/06/08 14:36
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: NH7CSp9S)
「……時雨? どうか致しましたか」
この時期特有の雨脚の中、凛とした少女の声が掻き消されそうになる。少女の顔は肩まで伸びた黒に近い紫色の髪で隠され、唇がきつく結ばれているのしか確認出来ない。 急な雨ではなかったが、少女と時雨と呼ばれた少年は傘を持っていなかったらしく趣のある店の屋根の下で雨宿りをしていた。もうかれこれ三十分近くこんな状況だ。少年のほうは既に青いTシャツとダメージジーンズは乾き、にわかに銀色の髪に滴が滴っているくらいだった。建物によっ掛かっていた時雨は壁から、とんと背を離す。うざったそうな前髪がふわりと揺れ、整った顔立ちが表れる。
「……そろそろ時間みたいだ。花月、何があっても“止めるなよ”」
時雨は何十秒も経った今、ようやく口を開く。声は少し低く、冷たさがあり一瞬ひんやりと感じるようだった。花月はその言葉に反応したのか、ピンク色の蝶の柄の着物の裾を揺らし、俯かせていた顔を瞬時に上げる。髪で隠されていた顔は薄い紫色の瞳が大きく、こぼれ落ちてしまいそうなくらい見開かれていた。その一連の変化を黙って見ていた時雨は花月のほうに顔を向ける。角度でさっき見えていなかった左目がようやく見えるようになるが、その瞳は白い眼帯で覆われていた。唯一見えているであろう右目に花月の瞳を写す。
「この目が疼いてるんだ。やっとだ……やっと“終わりに出来る”この手で終止符を打てる」
そう言った時雨の表情は言葉とは裏腹に、実に穏やかそうに見えた。しかし花月はその様子を見ると驚いたように目を丸くし、体が震えるほどの衝撃を受ける。花月は見たことがなかったのだ……時雨の穏やかな笑みを。いつも刺々しい雰囲気を放っているが、時々見せるクールな微笑み。そんな時雨がこんなふうに“笑う”なんてありえないのだ。間違いなく起こってほしくないと願っていた事が、確実に起こるという事実に変わっていった。
「……なんで時雨はそこまでこだわるのですか? 私も貴方の気持ちは分かりますが、今終わらせなければその方も…………時雨も無事ではなくなる。決着がついたとしても両者が不幸になることに間違いありません。お願いですからやめてください」
花月はすがるような声で時雨に近づき、着物の袖から少しはみ出た小さな手を時雨の手に絡ませようとする。手が触れたのを時雨は素早く反応して振り払う。時雨は花月の涙目から逃れるように目をさっとそらす。花月はその時雨の行為を見て何か諦めたのか手を裾に隠し、下ろした。
「後戻りは出来ない……いや、もうしたくない」
時雨は最後に「すまない」と言うと軒下から空を見上げる。いつの間にか雨は止み、空には雲で隠されていた太陽が現れ虹がかかっていた。花月は起こらない事をみずみずしく輝く虹に願わずにはいられなかった。これから起こる事のほんの序章でさえ恐ろしく、その光景をこの目に焼き付けたくないと体を強張らせながら目をぎゅっとつむる。
——……のせいで紀咲は死んだんだ!!——
——やめて!! それ以上何も言わないで…………ごめんなさい——
——謝ったところで紀咲は帰ってこないし、“傷”は消えないんだよ——
——本当にごめん——
——お前なんか“シンジャエ”——
「い、いや……いやあぁぁぁ!!」
花月は叫び声を上げながら顔を俯かせしゃがみ込む。花月にだけ見えた何かの断片。その光景、言葉は凄まじく冷静に見ている事なんてできなかった。“またあれだ”花月は少し保てていた平常心で今何が起こったのかを理解する。花月は全く同じ事を時雨と始めて逢った時も体験していた。これで二回目だとぺしゃんと地べたに座って、目を大きく見開く。
「花月どうかしたのか!? 何があった」
慌てているような口調通り、時雨の顔も心なしか焦って見える。口を開かない花月を目の前にし、時雨はいつもの整った顔立ちに戻る。
「やっぱり時雨はいつものその整った顔のほうが良いです。驚かせてごめんね、もう大丈夫だから。」
いつの間にか花月の顔は上がり時雨の顔を微笑みながら、大きくて優しさがじんわりと伝わってくる瞳で見つめていた。時雨はその様子に安心したのか目元を少し緩める。他人が見れば分からないだろうが花月には伝わったらしく、「はい」と短く言葉を返す。
花月は実際のところ、表情とは裏腹に心では整理が出来てない事がたくさんあった。見間違い、気のせい、偶然……そのどれかに当て嵌まるはずだと考える。でもそのどれにも当て嵌まらない。さっきの時雨の顔と断片的に見えた片方の人物の顔がリンクするのだ。左目は白い眼帯で今日と似たような服装。しかし断片的にみえな表情はこれまでに見たことがないくらい目は吊り上がり、恐さしか醸し出していなかった。黙っている花月をやはり心配そうに眉を寄せながら見つめる人物が同一人物だと思いたくないし、思えないのにそれが正しいと心の片隅では諦めている花月がいた。
それがこれから始まり、もう一人の重要になる者ともそのうち出会うのだった……何かの道標をたどり、導かれていくように。
- 第三章 途切れない導きの連鎖 (2) ( No.54 )
- 日時: 2011/06/09 16:36
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: NH7CSp9S)
「羽狗、そっちの状況はどうなってる?」
建物の影に隠れるようにしながらひそひそと小型マイクを通じて向こう側にいる相手に大牙は話しかける。
調査が終わった二人はこれから起こる事を事前に察知し、重要な人物を二手に別れて見張っていた。なんとしてでもこれから起こる事は阻止しなくてはならないのだ。もし失敗をしてしまえば間違いなく“両者共”国に縛り付けられ、永遠に国の犠牲になり続ける玩具にされてしまうだろう。それか“両者共”消えてしまうか……
「こちら羽狗〜こっちはまだ動きそうにないけど……てか俺、傘忘れてぐしょぐしょで気持ち悪い」
緊張感がまるで無いような、けだるそうな声が聞こえる。返ってきた言葉は大牙が予想していたのとだいぶ同じで、思わず笑ってしまいそうになる。大牙はあらかじめ安いビニール傘を買っていたのだが、羽狗は平気だと笑いながら言い買わなかったのだ。そして二手に別れた時に雨は降り出していた。
「あれだけ買えって言ったのに、けちって買わなかったお前が悪いんだよ」
「だってこれ国から出された調査外になっちゃうじゃん。俺ビンボーだから金無いの!!」
呆れたようにため息混じりに言う大牙の言葉を羽狗は直ぐに反論する。羽狗の言っていることは正しいが、大牙と羽狗は国家直結の仕事な為お金は十二分に貰っている。なので単刀直入言ってしまえば、羽狗のお金の使いようが荒すぎるのだ。
こんな和やかな雰囲気が漂っている中、大牙の小型マイクに誰かの足音らしきものが伝わる。瞬時にして大牙は顔色を引き締め、さっきとは打って変わりさらに小声にする。
「今の足音は“あいつら”のものか?」
「うん。だけど片方は早歩きで、もう一人のほうはその後を走りづらそうに追ってる。」
羽狗も場の状況に応じてか声色が変わる。いつものおどけた表情からは想像出来無いような変わりようだった。一人は“あいつ”だと分かったがもう一人とは…………主の事だと理解するのは時間がかからなかった。
大牙は羽狗に言葉は返さずに、今自分が見失ってはいけない者達をちらりと視界に入れる。その者達は家の中にいるため、大牙がいる電柱の裏からは見やすいほうだった。傘の下からそっと顔だけを出して覗いて見る。中では二人が椅子に座って楽しそうに会話をしていた。
「……俺達だけで本当に二人を守れるのか? 俺達が勝手にそうするだけで二人が望んでいなかったら……俺はもう何も壊したくない」
大牙の口からは自然とそんな言葉がこぼれ落ちる。羽狗のほうは分からなかったが大牙の目に映っている二人はとても“幸せ”そうだったのだから。大牙はこのまま自分達が何もしないほうが良いんじゃないかと思ってしまう。未来を予想することは出来ても予知をすることは出来ないのだから。
「大牙らしくないなぁ……大丈夫。俺達は二人を助けるんだから。それにもう起こるよ、あくまで嫌な勘のようなものだけど」
羽狗は目を少し細めながら、落ち着いた優しい声色になる。上辺では二人は全く接点のないように国が保管している資料には何も書いていなかったが、その“過ち”を隠すように国の上部の者しか知る事が許されていなかったのだ。そして大牙と羽狗もこの役職についた時に聞かされたのだった。国が危険人物として警戒している二人について……話した時の上部の者は大牙と羽狗を軽蔑的な目で見ていた。まるで自分達も注意しろと警告するかのように。
「だな。それが起こるまで後何日くらいかかるか、お前のあの勘のようなもので分かるか? お前のあれは良く当たるからな」
大牙は吹っ切れた様な声で“やるしかない”と自分に言い聞かせる。これから起こる事は国もある程度は予想しているが、そんなと言って良いのか分からないがそんな小さな事なのだ。人が何百人と消えてしまう訳ではなく、最高でも二人で事が済んでしまうからだ。今の日本はそんなものなのだ。と言うよりはどの国もこの時代は荒れ果てていた。しかし、やはり日本が一番酷いのだ。神もが手を尽くせない程に……
「……言いたくないけど“明日”月曜日の学校の放課後とか? 何度も言ってるけど、陰の魔術使って夢見ただけだからそれが必ずしも“正夢”になるとは限らないからな」
羽狗は若干言いづらそうに口を開き頭をぽりぽりと掻く。なかなか大牙の声が返ってこなく、いきなり過ぎたし当たり前だよなと羽狗は思う。
「俺の力が不安定でごめん。今は滅んだけど夢見の一族の巫だったら確実なんだけどなぁ」
ひしひしと冷たく流れる沈黙が嫌でつい関係のないことを言ってしまう。そんな事でも言ってないと羽狗自身、自分がもたないと分かっていたからだ。
「…………明日、か。思っていた日より早くて驚いただけだ……心配かけて悪かった。ありがとな」
大牙は柄にもなく屈託のない笑みを浮かべながらへらっとしたした口調になる。しかし羽狗は気づいていた。“焦り”“緊張”“驚き”“苦しさ”……“恐怖”それらが大牙の中でぐるぐると混ざり合い、大牙がその感情に押し潰されそうになっていることを。今回は顔が見えないが、こんな大牙を感じるのは羽狗にとって二回目だった。
——今回も自分のせいで大牙を……主を困らせてしまっている——
羽狗までもがやるせない気持ちになり小型マイクを切ろうと手に掛ける。
「羽狗? どうかしたのか? ……俺は大丈夫だから。もうお前の事恨んでない……むしろお前が消えてしまったらって思うと怖いんだ」
——何で大牙の周りの人って皆消えちゃうんだろうね? あたしはずっと一緒にいてあげるからね——
——大牙ごめんね。ばいばい——
「その話しはしないって約束だろ。 ……お願いだから思い出させないでくれ」
羽狗は苦しそうに口を開く。
「……今日は終わりにしよう。明日に備えるために帰るぞ」
内容が一気に遮断された。羽狗は無意識に流れでた額の汗を拭う。大牙の声はいつも通りに戻っていたのに、なぜか怖かった。“明日が来なければ良いのに”そんな願っても叶わない事を願ってしまう自分に羽狗はうっすらと気がついていた。
羽狗と大牙はそれぞれが見張っていた人物達からゆっくりと離れていった。気がつけば雨は止み紫陽花の葉の先から滴が滴り落ちていた。空を見上げれば血を零したような暁色に染まっていた。
- 第三章 途切れない導きの連鎖 (3) ( No.55 )
- 日時: 2011/06/14 21:34
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: NH7CSp9S)
雨が止み、温度が上がって発生した霧が周りの景色を覆ってしまい数メートル先は何も見えない。そんな中を花月は、前を早足で歩いて行ってしまう時雨を小走りで追いかける。花月は着物を着ているため足に裾が巻き付き走りにくそうだった。
「時雨、待って下さい。雨止みましたし……歩きましょうよ」
軽く息を切らした花月はらしくなく少し大きな声を出す。その声に反応したのか時雨は歩みをいきなり止め、顔を空の方へと上げ睨みつけるように見つめる。花月は時雨の数歩後ろで立ち止まると同じように顔を空へと向ける。
「血のような見事な暁色ですね……これから起こる事の前兆ですか?」
花月はふぅとため息をつくのと同時にそんな言葉をもらす。しかし最後のほうの声は小さく聞き取れなかった。
「……花月、帰ろう」
時雨は口を開くと花月の方に顔だけを向け、固く結ばれていた唇をほんの少し緩くする。花月がその言葉に反応したのと同時にピンクの桜の髪飾りが太陽の光を反射して赤く光る。
「ええ。明日は始めての高等部ですからね。」
花月はほんのりと笑みを浮かべる。時雨はまた黙って歩みを進める。しかしそれはさきほどとは違って、ゆっくりと一歩ずつ確実に歩いていた。花月はそれがどんな事を意味しているのかを理解すると嬉しそうに小走りし、時雨の横にちょこんと並んで歩いていった。
時雨と花月とは打って変わって楓と由羅の二人の空間には、穏やか過ぎるくらいの空気が流れていた。
「マスターどうしましょう!! 私服とか全然持ってないです。」
楓は唯一の荷物のトランクをいきなり開けると躊躇することもなく、真っ逆さまにひっくり返す。中からは明日から使う教科書がどさどさと床に落ち、床が埋めつくされていた。そしてほんの少しのスペースに、しわにならないようにきっきりと畳まれていた服がひらひらと床に着地する。楓は本当に困っているらしく、らしくないくらい慌てている。
由羅はしばらく驚いたように顔を引き攣らせて黙っていたが、何か気になるものが視界に入ったのか瞳は一点を見つめたまま動かない。そしてその気になるものの元へ歩いていくとそれを手にとる。
「何これ? ……写真?」
由羅の両手に収まっていたのは少しよれた額縁の中に仲良さそうに二人の少女と一人の少年が満面の笑みで写っている写真だった。 まじまじと見つめながら呟いた由羅の言葉に、異常過ぎるというくらいに楓は反応する。
「だ、だめ!!」
楓は服も気にせずに踏ん付け、必至に手を伸ばすと由羅の手の中の物を乱雑に奪う。
由羅はしばし拍子抜けしたような表情を浮かべていたが、あまりにもおかしい楓を眺めていると眉をしかめる。楓は両手で写真を掴み胸に当ててずっと瞳を閉じていた。心なしか顔から血の気が引いている気がする。由羅にとって楓の事も気になっていたがそれよりも気にかかる事があった。
——写真の中の楓が“眼帯”をしていなかった事——
写真の中にいた人物の内、一人は確実に楓だったのだ。七、八歳頃に撮ったようだったが、笑った顔は面影が伺えたのだ。二つの輝いた翡翠色の瞳は美しい弧を描いていた。今の楓とは全く違う少女が写っている様に錯覚してしまうのは、きっと醸し出しているオーラのせいなのだろう。写真の中の楓は幼いから当たり前なのかも知れないが“純粋さ”を強く感じられた。
「ごめん、見られたくない写真だったんだよな」
由羅はほんの少し苦笑いを浮かべながら楓を視界から外す。何故かは分からないがまともに楓を見る事ができなかったのだ。
「あ、いえ……私こそマスターに無礼な真似をしてしまって、ごめんさい」
楓は我にかえったのか、大袈裟なくらい頭を深々と下げる。由羅が次に楓を視界に入れた時は“由羅が見た事のある笑み”を顔に広げていた。由羅はいきなり立ち上がり、驚きの表情に変わった楓の顔を見下ろす。由羅は履いていたズボンごとくしゃくしゃと強くにぎりしめる。分かったのだ……幼き日の楓はどこにもいないのだと。たとえ取り戻したくても楓の心にまたはめ込まれる事はないのだ。由羅にとって今の楓が嫌なのではなく見ているのが辛いのだ。その眼帯は何を語っているのかさえ、知る事ができなかった。
「ごめん……本当にごめんなさい」
俯いていた由羅の瞳からきらきら光る物が落ち、オレンジ色のマットに小さな染みをつくる。
由羅は必至に消そうとしていた思い出を、思い出してしまったのだ。
——私は神風楓って言うんだけど貴方は?——
心のどこか片隅でいつも、もやもやと黒い固まりを作っていた物が消えていった。しかしそれと同時にこれ以上ないというくらいに胸が締め付けられる。過去の記憶が正しいとしたら……あの場の“掲示板”にいた楓は“主”のはずなのだから。
——運命が入れ替わった?——
もしかしたらという可能性を由羅は考えずにはいられなかった。しかし、そんな事が有るはずないと打ち消す。頭の中が次第に崩れて行くのが分かった。
- 〜プロフィール〜 (2) ( No.56 )
- 日時: 2011/06/19 22:10
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: NH7CSp9S)
氷崎 由羅 yura korizaki ♂ (16)
誕生日 二月 二七日
血液型 AB型
身長・体重 165cm 51kg
容姿 ブラウンの髪を肩にぎりぎりつかない位置まで伸ばしている。藍色の目で色白。山吹色の長袖の髪をベストを着て、水色のスーツっぽい生地のズボンを履き、同じ色の袖なしのコートを羽織っている。焦げ茶の革靴を履いている。
詳細 騎士の一族なのに主の少年。冷静で穏便だが、何故か自分を守ることを許さない。両親については不明で謎が多く残る。
好きな食べ物 オムライス (中でも楓の作ったのは絶品らしい……やっぱり私も食べた((蹴)
嫌いな食べ物 ゴーヤ (幼い時、具合の悪い時に食べたがために嫌いになった)
性格 整った顔立ちと頭が良いため、もてる。しかし、結構めんどく下がり屋なため楓が来るまでは部屋が汚かった。最近ではようやくコーヒーをいれることが出来るようになった。誰に対しても平等に親しみ、中心にいるような存在。
読者様に一言 いよいよ三章にはいったこの小説と作者を見捨てないでやって下さい。たぶん盛り上がるはずだから……今後に向けていろいろ動き始めるらしいし。メインキャラとなる二人にも注目。今後も宜しく!!
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