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リンゴと毒
日時: 2014/05/23 21:53
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)

START…2014・05・09


気軽に立ち読みしてください/ 登場人物の記載はのちほど/
内容はまだちゃんとまとめていません。すいません。


 
 just a minutes...


*登場人物紹介*


寿和ソウ(すわ・−)
平和と時間を貴重とするというかこよなく愛する高校1年生。ずばりツッコミ担当。

赤井凛狐(あかい・りんこ)
毒リンゴを作る謎の少女。年齢不詳。感情表現をあまりしない。

坂屋純一郎(さかや・じゅんいちろう)
小夜子に本気になる、根はやさしい男。

小松恭平(こまつ・きょうへい)
だいたい落ち着いているソウの友人。

藤島篠花(ふじしま・しのか)
家庭事情で学校にはほぼ行かないで働くソウの幼馴染。ヤキモチやき。

里中小夜子(さとなか・さよこ)
昼ドラ大好き国語教師。白雪姫になぜか重点を置く。

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Re: リンゴと毒 ( No.18 )
日時: 2014/05/27 20:00
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)


エピソード18


「つーかとりあえず腹減ったわ、さっきのファミレス戻ろうぜ〜」

食欲に目覚めた坂屋が戻ることを促す。
まだ話は終わっていないだろ、と心の中でソウは思った。凛狐は神出鬼没なだけにいつどこにいるのかも分からない。もう遭遇することだってこれが最後かもしれない。

毒リンゴでまた誰かが目覚めなくなる———そんな不幸な事がこれからもどこかで起きる。
そう考えると、この危ない人間・赤井凜狐を野放しにするのは気が引けた。


「もういいですか」

凛狐の気分だってそう長くない。
この言葉を言われては止める余地もない。

すると、坂屋がきっと深い思い入りはなく凛狐のこう言いかける。

「赤井さんは?腹減ってないの?」

「え」

凛狐が少し表情を表した。
——あれこれもしかすると……


「お前もメシ食っていけば。俺らついさっきまでそこのファミレスいたけど」


ファミレスなんてこんな物事に興味のなさそうな凛狐に似合わない。
いや、逆に彼女に似合う場所を見つけるほうが難しいのかもしれなかった。

最初から可能性のないことはわかっていた。
その通り彼女は「私はいいです」と言い切った。
だが、坂屋は何やらスイッチでも入ったのか、あ—そういえば今日ラブレターもらったんだ—そのテンションがつづいていたため凛狐を粘り強く誘うのだった。


「なこといわずに。行こうぜ凛狐様ー」

「様」付けされていることに一切気にしない凛狐の腕を掴んで坂屋は強引に歩き出す。

「あの、行きませんけど」

急に苛立ちが伝わる顔で坂屋に言う。

「いいさ、たまには。絶対あーいうところ普段行ってなさそうだし」

ソウは流れにのって凛狐を後に引かせないように後ろからあおった。
凛狐は珍しくなすすべなさそうに、さきほどのファミレスに連れて行かれる。


道中、彼女のため息を何度聞いたことだろうか。


店に入ると、すぐに小松と篠花の姿が見えた。
坂屋が陽気なテンションで二人の元へ行き、「ゲストをお呼びしましたー」とニコニコ顔になる。

「ゲストー?」


坂屋の声に気づいた篠花が顔を見上げて、すぐにソウたちのほうに目線を配った。

「———っえ」

彼女の視界に入ったのは———凛狐だった。
篠花は途端に顔が曇った。
彼女の向かいにいた小松は篠花の反応を見たあと、眉をひそめてソウのほうに振り返る。
小松はどこか焦っているようで怒っているようだった。
というのも、先ほどから篠花はソウたちがファミレスから出ていった後元気がなく、あれだけ注文した食べ物も一向に手がつかなくなっている。

様子を見ながら、篠花がソウのことで不安になっているのを察していたのだ。

「ソウ…ちょいお前」

小松が言いかけた時、坂屋は凛狐を引っ張って強引に小松の横に座らせる。
隣に面識のない少女が座ってきて、小松が驚かないのも無理はなく、凛狐も同じような反応。
凛狐は場違いな場所だと実感しており、不愛想さが絶えない。

そして坂屋は篠花のとなりに笑顔を浮かべながら腰をおろした。


「坂屋、そこソウに代わって」

小松が真面目な顔で坂屋に指示する。坂屋は「あ、おう」と言いながら渋々自分は予備の椅子を持ってきてそこへ腰をおろし、ソウを篠花の横に座らせた。


「小松…君」

篠花が少しびっくりしていた。
小松は小さく微笑みながら「どうかした」と尋ねるだけ。


「はいはいはい!それじゃーゲストを迎えたところでーみなさんご存じの…あ、小松は知らないんだっけ…まあいいや、赤井凛狐さんです」


Re: リンゴと毒 ( No.19 )
日時: 2014/05/28 20:14
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)


エピソード19


場を盛り上げようと活動している坂屋を1人に、あとの4人は誰一人として口を開かない。
凛狐なんて場が場で、いかにもここにいることが不自然すぎる。


「あの私がここにいる意味とは——…」
「あーいいのいいの!気にしなくてもみんな優しいから温かく歓迎するよ!な!みんな」


一方的な坂屋の言葉に、小松と篠花は黙っている。
さっきからこの2人の表情に明るさが見えない。
特に篠花だ——1人孤立したように、パクパクと食べ物を口に押し込んでいる。


「でも今からまたしないといけないことがあるので、いいです」

ここまで来たわりに、あっさりと抜け出そうとする凛狐。
そんな凛狐を、ソウが普通の調子で、

「入ったんだし一つぐらい食べていけばいいじゃん」


まるで友達相手のように気安くそう言った。
凛狐はその態度がどうにも気に障るようだ。

そしてまた違った気の障りようを感じているのは篠花。

「なあ」

ソウが話し始める。


「毒リンゴってどうやって作んの」


テーブルに頬杖をついて、じっと凛狐を見ていた。
ソウの目はなにか好奇心に満ちている。
彼は今、幼心に戻ったように内心ワクワクしているのかもしれない。


「企業秘密ですよ」

不愛想な顔して、そういう用語を口にするのか。
凛狐は目線を離している。


「やっぱこうグツグツしたでっかい鍋とか持ってんのか!?」

大きなおたまでかき混ぜるふりをして質問する。


「どうしてそう童話に出て来そうな魔女の条件で聞くの!?」


坂屋が割って入った。


「実際、赤井の雰囲気は魔女だよなー」
「まあ確かに言えてる……ぷ」

必死に笑いにこらえる二人。どこにそんな笑う要素があるのか、気が知れないと凛狐は背もたれにたれさがる。


「なあそれで———」

まだ話を続けようとするソウだったが、言葉の続きが聞こえなかった。
いや聞こえなかったのではない。遮られた。

篠花が食器を強引にテーブルに押し付ける。

ガシャンッッ

嫌な音だった。ソウも坂屋もビックリして篠花に注目する。
凛狐は同じテーブルにいながら傍観者のように見ている。
こうなることを予想していたのか小松もただ見ていた。


「篠花…どうした…?」
「もう…あたし、馬鹿みたいだ。バクバク食べて」
「は…?」
「何なのよ——。勝手に出ていくし、人の許可なく勝手にその子連れてくるし…何なのよ」

篠花の我慢は限界だった。


「何でさー…考えてくれないの」

泣きそうな顔だった。言葉を詰まらせ、詰まらせながら。


「お前…ちょっと水でも飲んで落ち着けって」

苦笑いしながら彼女のご機嫌をうかがっているソウだけれど、それが逆に彼女を腹立たせる要因となる。


篠花は水の入ったグラスを持って、思いっきりソウの頭にぶっかける。


「ぐぎゃあ!おまッ…!」

肌にひやっと染み渡る水。
驚くソウをよそに、彼女はソウを飛びのいた。
そして振り返りざま、

「気づけ馬鹿っっ・・・・最低」


そう言い放つと、涙をぬぐって店を出ていく。
険悪ムードの残ったソウたちのテーブルを、周りのお客さんたちが見ていた。


ソウは、半分キレていた。


「んだよ、アイツ! あーくそ、びしょびしょじゃねーか」

篠花の気持ちなどみじんも感じていないソウの様子に、小松は眉を下げる。


「ソウ——。藤島さん追ってこいよ」

小松が真剣な顔でソウに言った。
この中で、篠花の心情を理解しているのはたった一人小松だけなのだ。


「待てよ、被害あったの俺なんだけど!」
「ソウはだいぶ馬鹿だよ。藤島さんがどういう気持ちだったか理解できてるか」
「は……どういう気持ちって」
「——本当馬鹿だな。これで理解できないんなら、今から追って、彼女に直接聞きに行けよ、ほら」
「ちょっと待てって…」
「うるさい、行けすぐに、今すぐに」

小松の力強い言動に、ソウは舌打ちして「分かったよ」と吐き捨てる。
言われた通り、ソウは急いで走った。

ソウの姿が見えなくなるのを確認すると、小松は大きくため息をついた。


「馬鹿ばかりだと正常なヤツって——こういう時疲れるな…」

小松の意外な一面を見てしまったのか、坂屋が信じられないような顔をしていた。

「小松ってあーいう感じだっけ」
「あーあ、坂屋もこういうヤツかあー」

小松が再度ガックリする———————。

Re: リンゴと毒 ( No.20 )
日時: 2014/05/29 19:00
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)


エピソード20


「いや俺分かるよ、藤島さんがソウのことスキだってことぐらい」

坂屋が当たり前だと言わんばかりの顔をしてきた。

「じゃあ藤島さんが怒った原因は?」
「——…そりゃ、あれだろ」
「なに?」
「何でしょう」
「ふざけてんの?」

ここまで力説する小松には何かがありそうな気がした。
場の状況を把握しているのか定かではないが、凛狐は小松の表情を眺めている。

「他の女の子に気がいってるソウがイヤだったんだよ」


小松がまとめた。


「え!?ソウって凛狐様が好きだつーこと!?」
「坂屋ー…。そうじゃなくて自分の存在なんて忘れたように赤井さんと喋ってたのが気に食わなかったんだ」
「そんだけ?」
「それだけのことでも女の子は敏感だからなー…」
「面倒くさいね、女の子」

目の前に女の子である凛狐がいるというのに容赦ない。
というか今日の坂屋は空気が読めていない。
ラブレター症候群であろうか。


「ソウって平和と時間を大切するわりには、なにか面白い事みつけると小学生みたいに興味深くなるからな…」

小松はしっかり人間観察ができているようだ。


「あれだな、鈍感王子様みたいな♪」
「坂屋、笑えない」
「だな。王子様って称するほどソウはイケメンのイさえないしな」
「そういうことじゃなくて」

坂屋の思いの内が見えてしまった。
それにしても微妙なメンバーとなっている。
小松は凛狐との面識もなく互いの素性さえ知らない。
坂屋は今日に限ってか毎日に限ってか空気を読めていないので、どうにもならない。


「あの2人は幼馴染ですか」


そういえば凛狐がいた。と2人は何となく存在に気づく。
ほとんど影のように座っていて気づかないと思えば気づかないでいられる。


「そうだよ、よく分かったな」と坂屋。
「何となく」

凛狐はそう言いながら、何かを考えているようだった。


「あの女の人には毒リンゴが必要なみたいですね・・・・・・」

ボソリと凛狐がつぶやく恐ろしい言葉に二人は言葉をなくす。

「え?凛狐様?正気?」
「幼馴染となれば大切さもそんじょそこらの方々とは違いますから」
「なあ君って何なんだ…」

小松が驚くのも無理はない。
坂屋は凛狐のことについて教えた。雅也とみゆさんのことも話した。



「そうなんだ——確かに魔女みたいな人だね……」

凛狐は何とも思っていない。


「それで毒リンゴで、あの二人を試す気なのか?」

小松の問いに凛狐は黒い微笑みをした。
「もちろん」と表情が語っている。

「こわいこわいこわい凛狐様こわい!」
「さすがにやめといたほうがいいと思うけど?」


改めて凛狐という人間におびえる坂屋。
小松は慎重な顔で凛狐に忠告する。


「俺、なんか赤井さんがそうやって遊んでるようにしか見えないよ。あんまりやってると後で自分に返ってくるよ」


小松の顔を一瞬見据えた。
そして「そんなの承知の上です」と言いながら立ち上がる。

「どこかに消えるの?ソウは君の行動が気になってるみたいだし、君のアジトを教えてくれないかな」
「アジトですか……————私はどこかの森にいます」


どこか笑っているような顔が見えたと思いきや、足早に彼女はその場から去る。



「なんか凛狐様、あっさり教えちゃったなー。あ、いや逆にヒントだったりして」
「違うよ、たぶん本当だと思う」


小松には理解できていた。



凛狐はすっかり暗くなってしまった夜道を歩きながら、ふと空を見た。
自分がさっき言ったことを思い出し、ため息をつく。


(私も馬鹿に近づいてるみたいだ———)

Re: リンゴと毒 ( No.21 )
日時: 2014/06/01 14:05
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)


エピソード21


「はー」

翌日の学校で、ソウはいつも以上に力が入っていなかった。

「おはよ…」

そんなソウの横から登校してきたばかりの小松が挨拶をしてきた。

「———…」

ソウは黙っていた。というかムスッと小松を睨んでいる。
そんなソウに気づいて、小松も対抗して強気な顔で挑んできた。


「別にケンカしたわけでもないんだからさ、そんなケンカ腰になんないでよ」
「ケンカなんてする気ないわ。小松、おまえホント昨日…」
「うざかった?」
「おう!!」

ソウはイライラを顔に出した。
けれど、その顔はすぐに消え去り——

「けど——助かったわ…なんか」
「藤島さん、話つけたんだ」
「まあ、一応な」


————昨日…あの後


「篠花!!」

追いかけまくってやっとのところで篠花の肩をガシッと捕まえた。
彼女は振り向きざまに「触んな!!」と怒鳴った。
もう大泣きしてしまって、メイクが崩れて顔がボロボロだ。


「何で怒ってんだよー」
「はあ!?あんた謝るために追いかけてきたんじゃないのー!?」

またもやソウに苛立ちを感じた篠花は、涙があふれでた。

「俺だって何で泣かしたか分かんないんじゃ謝れねえもん」
「あの状況で理解できなかった!?」
「そうだよ!俺バカだから!」
「都合よくバカなんて使うな!!」

篠花は、涙をぬぐい、「何でわかんない、のよ…」とつぶやく。
自分はソウに何とも思われていない。その可能性が大きいような気がしてこわくなる。


「おしえてよ」


それでもソウは、真剣な顔でそう聞いてくる。
向こうだって、冗談ではないだろう。

ソウのそんな顔を見て、篠花は自然と口が緩んだ。

「ソウ、がぁ……あたしのこと…いないみたいにするからぁ」
「え!?なことしてねえし」
「してるよぉ。あの子のことばっかり気にしてて……あたしがやきもちやいてることぐらい分かりなよぉ」

とうとう本音を口にしてしまった。
でも、篠花は酔ったような気分でベラベラしゃべり続ける。


「別に赤井のこと気にしてないって」
「なにさぁ……興味深そうにいろいろ質問しちゃってさ、てゆうか今日のはあたしに色々おごってくれんじゃなかったの…なのに目的忘れて勝手にあの子連れてくるから…」


女と言うのは分からない————…そのぐらいで?とソウは思ってしまったが、女子には女子の事があるんだと篠花の様子を見ながら深く納得した。


「だから、あたし、今日楽しくなかった———……」
「——わかった…それは、本当にゴメン」
「本気で謝ってる?」
「半々かな…悪いと思う自分もいるけど、いない自分もいる」
「ひど…」
「だって仕方ないだろッ俺だって女心とかわかんないから…悪いふうに聞こえるけどさ。篠花だって男心わかんないだろ!?」
「ソウに男心あるの…?」
「あるわ!!そりゃあ・・・・あるぞ」


篠花はぐすっと泣くのをこらえた。


「分かった…それならあたしもわかった。ちゃんとソウのことも理解する」
「俺も…篠花のこと理解するから」
「———うん…。ねえ、ソウ。最後に、これに答えてくれたら今日の事は許すから」
「・・・え、なんだ?」
「ソウは今、好きな人がいる?」
「ぅええ!!」
「どっち?」

そんなことを言われても困る。ソウはよく考えれば何だかんだそういうことを深く考えたことがなかった。
そしたらどう答えるべきなんだ…。

「わかんねぇ……」
「それ、隠してるの?」
「や、違う!!ホントに分かんねえ!!」

ソウの顔は事実を語っていた。
長年、ずっと一緒にいた篠花にはそれが分かる。

ソウの言葉をきいた途端、篠花はやわらかな笑顔を浮かべた。


「わかった——。ならいい」


そう言うと、ソウの胸のあたりに顔をコツンとおしつけた。
安心したように笑顔を浮かべる篠花をよそに、ソウはどうしたらいいか分からず体が震えっぱなし。


(えっと……これ、一件落着、か!?)


とりあえず、篠花とは和解ができたようだし・・・・・・まだ分からないことはあるが、これから分かっていけばいい。

Re: リンゴと毒 ( No.22 )
日時: 2014/06/01 20:25
名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)


エピソード22


「そう。よかったじゃん仲直りができて。あ、和解って言ったほうがいいのかな」
「どっちでもいいよ、んなもん」

小松は話を聞き終わり、なんだか表情が柔らかくなっていた。
ソウは最近の出来事で、もういっぱいいっぱいでこれ以上は勘弁してくれと感じている。

「それで———ちゃんと藤島さんの気持ちわかったんだね」
「は———?なに気持ちって———」


やっといつもの小松に戻ったかと思えば、その言葉を聞いた途端、ソウの頭にげんこつをいれた。

「んなー!お前ぇぇぇえ」
「ソウおかしいよ、結局のところ理解できてないじゃん。鈍感もいいところだって。これハーレム漫画でもなんでもないからな!」
「何でいきなりそういう言い方すんだ!!」

小松はもう仕方ないとカミングアウトという手を打った。


「藤島さんソウが好きなんだよ。恋愛対象として」
「・・・・・」
「以上」
「ぅえええええ」
「今更その反応遅いから」

小松は冷めきった目をしていた。


「あーでも、確かにアイツ…昨日やきもちだとか何とか言ってったっぽい…」
「その時点で何か勘付くだろ、ふつう」
「はあ、俺バカだからさ…」
「都合よくバカとか使うんじゃないよ」
「それ、昨日誰かからも言われたし・・・・・」


篠花も困った男を好きになってしまったようだ。


「で、どうするの?」
「どうするって、———別に……」
「ソウはとりあえず恋愛についてどうなわけ」
「は?何その質問……」
「彼女欲しいって時々ほざくわりには、恋愛自体に疎いよなー」
「ほざかねえし!…いやまあ、ほざくかも・・・しんないけど…そりゃ高1だし」
「藤島さんのことは好きじゃないんだ?」
「もうお前問い詰めんなーって」

疲れたソウは、机に突っ伏した。


「でもはっきりさせないと、あっちも不安でいるまんまだよ」
「篠花は——・・・その、昔からずっと一緒いたけど、家族みたいな感じなんだ…」
「好きか嫌いかで言えば?」
「はぁ…そりゃ嫌いじゃないけど」
「好きという意味が違う、かぁ」
「まあ・・・あーまじわかんなくなってきたぁぁあ」


髪をぐしゃぐしゃかき回す。
ソウの心のなかも、複雑でいる。

「付き合えばいいじゃん。藤島さんだーいぶ美人さんだし」
「そんなん出来ねえよ…」
「そうかな?前々から二人見ててももう付き合ってるように見えるけどなー」
「マジかよそれ。———…俺さ。いろいろ迷惑かけさせてたよなー…絶対」
「うんそうだね。俺昨日とかソウ見てて何度もイライラしたし」

笑顔でさらりと本音をこぼす小松に、ソウは苦笑いをする。


「藤島さんはちょっと心が砕けやすいし、ソウのことに敏感で大変だろうけどさ、いい子だと思うよ」
「分かってるよ・・そのぐらい——」
「ソウだって大事な幼馴染だって思ってるんなら、付き合って全面的に大事にしてやればいいじゃん」
「——それは駄目だって。俺、まだちゃんと自分が誰を好きだとかそんなんバカだし分かんねえってのに、中途な気持ちでアイツと付き合うとか一番やっちゃいけねーだろ」


ソウだってバカだけでは終わらない。
だからこそ、ちゃんとした気持ちができている。



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