コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- リンゴと毒
- 日時: 2014/05/23 21:53
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
START…2014・05・09
気軽に立ち読みしてください/ 登場人物の記載はのちほど/
内容はまだちゃんとまとめていません。すいません。
just a minutes...
*登場人物紹介*
寿和ソウ(すわ・−)
平和と時間を貴重とするというかこよなく愛する高校1年生。ずばりツッコミ担当。
赤井凛狐(あかい・りんこ)
毒リンゴを作る謎の少女。年齢不詳。感情表現をあまりしない。
坂屋純一郎(さかや・じゅんいちろう)
小夜子に本気になる、根はやさしい男。
小松恭平(こまつ・きょうへい)
だいたい落ち着いているソウの友人。
藤島篠花(ふじしま・しのか)
家庭事情で学校にはほぼ行かないで働くソウの幼馴染。ヤキモチやき。
里中小夜子(さとなか・さよこ)
昼ドラ大好き国語教師。白雪姫になぜか重点を置く。
- Re: リンゴと毒 ( No.3 )
- 日時: 2014/05/10 08:02
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード3
———これね都市伝説なんだけど…毒リンゴってあるらしいよ
—————…
「毒リンゴ————作ってるのってアンタ?」
路地裏の陰で、壁に寄りかかってしゃがんでいる赤井凛狐(あかいりんこ)は頭上にいる男の声で目が覚めた。
黒髪に黒いコートを着ている彼女は、暗い路地の陰と一体化しているように見える。
「そうですよ。もしかして…あれ、買いにきたんですか?」
「んなわけねーだろ」
20代ぐらいのその男は、怖い顔をして凛狐を見下ろしていた。
「都市伝説だと思ってたんだけどな…現実で起こっちまうとは」
ギリッと奥歯をかみしめる。
凛狐はそんな男のことを無情で見ていた。
「俺の彼女が、リンゴかじって植物状態なったんだ」
「そうですか。そのリンゴまさに私が売ってるやつですね」
「どうしたらアイツは目覚めるんだよ」
「——」
「答えろよ。俺だって半信半疑だけど、目の前で起こった以上、信じるしかねーんだ」
「あなたの恋人、みゆさんですよね」
「あ、あぁ…」
「あー来ました来ました、つい1か月前にね。彼女言っていましたよ。あなた、何人もの女性と浮気しているんでしょ」
ふ、と魔女のような不敵な笑みをこぼした。
男は顔色を変えて、急に無言になる。
「デートしているときも突然、知らない女のところにいったり、だいぶ女グセが悪いって聞きました」
「なっ…」
「1か月待ったんですよ。1か月様子みて、やっぱりあなたはみゆさん一人を愛することができず、みゆさんは毒リンゴを食べた」
「なんだよ、自殺して俺に罪悪感を一生持たせる気だったのか」
「いいえ?彼女は、あなたを試したんですよ」
「試した?」
「毒リンゴを食べて、あなたがすぐに駆けつけてくれることを願って」
「は?何だよそれ。馬鹿なのか」
「女心が分からないんですね…よく何股できたもんですね」
凛狐は、ふところから赤い艶のあるリンゴともう一つ———…赤いが、黒さが混じったリンゴを出した。
「信じたんですよ、あなたを。自分が特別であることを。でも、何かあなたは違いますね…」
「なにが」
「あなたが彼女を目覚めさせたとしても、何ら変わらないような気がします」
「そんなことない!」
「どうだか。あなたには彼女を目覚めさせる権利はないです。もういいんじゃないですか?恋人なんて浮気している女からまた選べば」
「そんな、アイツはどうなるんだよ」
「ずっとあのままですよ。生きてるわけでもないし死んでるわけでもない」
「そんなの無理だ」
「それ、彼女を思って言ってます?周りから彼女を殺したって言われるのが怖いんじゃないですか?」
凛狐のまっすぐな瞳に、男は本音を隠せないでいた。
「あなたには彼女を思って彼女を助けたいなんてあるのかどうか分かりません」
「俺は…」
「そんな自分しか見えてない人は、ここに来ないでください。さあ、帰って」
男は無言で立ち尽くしていたが、ほどなくして、その姿は遠くへ消えていく。
- Re: リンゴと毒 ( No.4 )
- 日時: 2014/05/11 11:58
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード4
午後8時に近づくころ。ソウは走っていた。商店街を突き抜けて———。
「篠花っ!」
飲み屋の前で、ふらふらになっている少女を見つけた途端、ソウはそう叫んでいた。
篠花と呼ばれたその少女は、ネオンイエローのワンピースを着ていて顔は厚化粧している。
藤島篠花(ふじしましのか)はソウの幼馴染だ。
ソウの姿に気づいた瞬間、篠花は酔った勢いでソウに飛びついた。
「おわっ」
「やばい、吐く……」
「お前お酒飲まされたの!?」
「だって…仕事だし…」
「馬鹿だろ。未成年なのに、お前。飲み屋とかで働くなよ、すぐやめろって」
「…できるわけないでしょ、給料いいんだから」
ソウはため息をついて、篠花の手を自分の肩にまわし、街の中を歩き出す。
「歩ける?」
「視界ぼやけてるー・・ていうか気持ち悪い〜」
「いくらなんでも断れよ、未成年の飲酒は犯罪なのに」
「だって年齢偽って働かせてもらってんだもん・・むりー」
「はー。学校は?もう1週間来てないじゃん」
「う〜ん…どうなるのかな。辞めようかな……」
「辞めんの?中退こそどこにも働くとこないだろ」
ソウがあまりに質問攻めにするものだから、篠花は余計気持ち悪そうに青白い顔になった。
彼女のようすをみて、口をはさむのをやめる。
「だけど……さすがソウだ…」
「え?」
「何があってもすぐに駆けつけてくれるね…」
「は…」
きっと満面の笑みをしている———— ソウは横を向けなかった。
「これからもアタシのピンチにはすぐに駆けつけてね」
そういうものだから、篠花のおでこをペシンとたたいて「ふざけるな」と言っておいた。
篠花は「へへ」と言いながらデレデレの顔をしている。
とうとう酔いが完璧にまわっている。
ソウは足早に彼女の家に向かってひたすら足早に帰る。
そのソウの横を、いくつもリンゴを抱えた赤井凛狐が通り過ぎる。
ソウは不意に彼女のほうを見た———正確には彼女が持っているリンゴに目が奪われた。
リンゴで、里中に今日言われたことを思い出した。
『アンタ試すために毒リンゴ食っちゃうかもよ』
「リンゴ、ねー…」
小声でそうつぶやきながら、まっすぐまえに歩いていく——。
少ししてから、凛狐は立ち止まり、後ろを振り向いた。
篠花を抱えて歩くソウの後ろ姿が見える———。
凛狐はふっと笑いながら、持っていたリンゴの一つを手に取り、においを堪能しながら一口かじった。
「甘っ…」
- Re: リンゴと毒 ( No.5 )
- 日時: 2014/05/13 20:11
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード5
一週間が過ぎる——明日は土曜日————学校に行かなくていいという嬉しさは半端ない。
ソウは8時にセットした目覚まし時計で目が覚めた。
「んあ・・・?あれ、今日土曜じゃん・・・しくったー」
と言いながら、もう一度ベッドの中に戻った。
すると、枕元に置いていたケータイが鳴る。
手を伸ばして、何度か違うところを掴んで、3回目ぐらいでケータイに届いた。
布団の中で画面を見ると、坂屋からメールが来ていた。
『やべーよソウ!これ見たら電話してくれ』
そう表示されていて、眠気がまだうっすら残っていたが、電話をした。
コール一回目で坂屋は出た。
『あ、ソウ?』
「なんだ?」
『やべーんだ俺!不安で寝れなかった!!』
「はあ?何言いたいかさっぱりなんだけど」
『俺の従兄弟の仲いい兄ちゃんがさ、犯罪者なりそうなんだよ!』
「まじか・・何したんだ」
『まだ犯罪をしたか分かんねえんだけど、彼女を・・殺したっぽい』
「それリアルにやばいパターン・・」
『けどまだ分からないんだ!何か彼女が誤ってリンゴを詰まらせたとか言うんだけど・・』
「リンゴ……」
最近、身近で「リンゴ」が頻繁に出てくるような…。
ソウは不思議に思いながら、坂屋の言葉を待っていた。
『俺・・・真実確かめたいんだ…。その彼女さんが近くの病院にいるみたいなんだけど』
「俺もついてこいとか・・?」
『ありがとうソウ!!さすが俺のダチだ!!』
「誰が行くと言った!?行かねえよ!!」
『なあ頼むよー!!俺マジ死にそうなんだよ』
「なんでお前が死ぬの?」
坂屋に促され、やれやれとOKしてしまった。
土曜という貴重な休日の午前から、何でそんなヤバいことに関わらなければいけないのか…。
ソウはため息をつきながら、ベッドから起き上がった。
私服に着替え、玄関を出ようとした。
すると、同時に戸が開いた。
「あれ、ソウ…。どっか出かけるの??」
藤島篠花がそこに立っていた。数日前の厚化粧とは違い、ナチュラルな顔だった。
しかしもともと顔立ちがいいためか、これはこれできれいだった。
「そうだけど…俺んちになんか用事でもあるの?」
「え、てか、ソウに用事がある!お買い物ついてきて!」
とびきりスマイルで誘われた。
いや、俺ついさっき出かけるって言ったんだけど……。
「むり。こっち用事があるし。友達誘えって」
「むり。アタシ学校いってないせーで友達とかいない!」
「友達いないとかストレートに言うなよ・・」
「ソウしかいないんだもん、ねえ、その用事終わったら買い物ついてきてよ。給料入ったから少し洋服買えるんだー」
だだをこねる子供のようだった。
ソウは仕方ないという顔をして、「用事が終わればな…」と答えた。
篠花はたちまち笑顔になる。
「それじゃあアタシもその用事に付き合うよ!」
「いやいいよ!」
用事どころじゃない…もしかしたらヤバいかもしれないってのに。
「ええー。ねえ用事ってなにー?」
「言えねえ・・・」
「まさか…デート?アタシがいるのに!?」
「違うし!つーかアタシがって何だ!!」
「デートじゃないんなら着いていっていいでしょ?」
「無理だ無理」
「ひっどーーー」
そうこうしていると、ケータイが鳴った。
坂屋から電話だった。
「もしも・・・あっ!」
ケータイを篠花にとられてしまった。
ソウは「返せ!」と奪い返そうとするが、篠花はひょいひょいとよけながら電話に出た。
『ソウか?』
「あっもしかして坂屋君?」
『その声…藤島さん?』
「そうだよ!久しぶり!ねえ、もしかしてソウ今から坂屋君と遊ぶの?」
『ん?遊ぶ…?一応、会うんだけど』
「ねーそれならアタシも行っていい?」
軽い調子で篠花が言うから、反動的に「いや無理に決まってるだろ」とツッコミをいれたが、ケータイの向こう側にいる坂屋は「OK」を出したようで、篠花が飛び跳ねた。
「やったー、アタシもついてくねー!」
「え・・・まじ・・・」
ソウは脱力する。
- Re: リンゴと毒 ( No.6 )
- 日時: 2014/05/17 19:35
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード6
愛することには毒がある————。
某病院———。ソウと篠花は、坂屋の言っていた女の人がいる病室へ向かっていた。
坂屋はもう先に行っているらしい。
「びっくりした。結構、すごい用事だったんだね」
「だからムリだっつったんだよ」
「確かにちゃっちゃか終わらせそうにないね…」
篠花はがーんとした顔でさっきから足取りが重い。
そんな篠花をほっといてソウはスタスタ進んだ。
「あっ、病室見つけた」
女の人がいるという病室—————ソウはゆっくり中をのぞいた。
「おう、ソウ」
坂屋がいた。そしてその横には坂屋の従兄弟の兄——と思われる人物が立っている。
篠花を手招きして、二人は病室の中に入る。
「あぁ、君が寿和ソウくん…か」
その男の人は、どうも少し疲れた顔をしていた。ソウは「初めまして」と頭を下げた。
「こっちは俺が言ってた、従兄弟の雅也兄ちゃんで————こっちが……」
気まずそうに坂屋がベッドにいる女の人を見る。
「彼女のみゆだ」
雅也が言った。
みゆ———という女の人は、見ただけじゃただ寝ているようにしか見えない。
「雅也兄ちゃん————…兄ちゃんは何も…やってないんだよな?」
「————・・・」
雅也は黙っている。
焦った坂屋は「兄ちゃん!」と怒鳴りながら、彼の体を揺さぶった。
「ハッキリしてくれよ」
坂屋が真面目な顔で雅也に言いよる。
そんな光景をソウと篠花は心配そうに見つめていた。
「信じてくれるはずねーよ…」
「何をだよ」
雅也は近くにあった椅子に座る。
「俺の話なんて、絶対信じてくれるはずない…」
「そんなことない。信じるよ俺」
坂屋が言うと、雅也はじっと…みゆを見つめた。
「俺も信じますよ」
「あ、あたしも…」
ソウと篠花も続けていった。
雅也は決意したようにうなずいた。
「毒リンゴの都市伝説———知ってるか?」
3人は「え?」と、一瞬口を開いて停止する。
何よりもソウは、目を大きくしていた。
(また・・・リンゴ・・・・・・)
何の縁があるのか。または運命なのか。
「その都市伝説ってどういうの?」
坂屋が聞くと、雅也は「そのまんまだよ」と返す。
「毒リンゴを食べて起きなくなるんだよ」
「え。ちょっと待って。よくわかんないんだけど俺…え?」
「お前の反応が正しい」
「つまり…その毒リンゴを食べてみゆさんは起きなくなったの!?」
「そうだよ」
「いやいやいやーそれはさすがにーーー・・・」
坂屋は笑いながら雅也の肩をポンポン叩く。
しかし、雅也は表情一つ変えないでじっと下を向いている。
さすがに冗談には見えない。
「坂屋、本当だと思うよ。本当に毒リンゴを食べたと思う」
ソウが確信を持って言う。
「そんなこと有り得るのか!?」
坂屋は半信半疑の顔でソウと雅也を交互に見る。
- Re: リンゴと毒 ( No.7 )
- 日時: 2014/05/19 20:18
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード7
世界には、ありえないことなんて山ほどある。
「あーは言ったけど、ほんとなのかな」
同じフロアにある休憩室のところで、自販機の中からペットボトルドリンクを取りながら篠花が言った。
ソウはためらいなく「ほんとだよたぶん」と言葉を返す。
「えーソウは信じちゃうかー。アタシ微妙だな〜」
「誰でもそうだよ普通は」
「どうしてソウは信じちゃうわけ?」
「———なんとなく?ていうか最近、ホント俺の周りで『毒リンゴ』のワードが出回りすぎだわ」
「え?」
「なんでもねー」
ソウは手を伸ばして「ふぁあ」とあくびをしながら、ふと先ほどいた病室を見る。
すると、同時に誰かがその病室から出てきたのだ。
黒いロングコートを見にまとった少女だった。
無意識にソウの体が動いた。
それを見た篠花が「ソウ!?」と声をあげた。
ソウはその少女の背中を追った。
そして、
「すんません!」
と声をかける。
少女が気づいて振り返る。
赤井凛狐だった——————。
どこまでも黒い長髪を後ろで団子にして、その団子に三つ編みを一周させている。くりっとした目、色白い肌。
口紅をしているかのような、きれいな赤い唇が印象的だった。
わりと身長が低いが、同世代のように見える。
「あーすんません。あの…もしかしてその病室にいる患者さんの知り合いですか?」
凛弧は、ソウをしばし眺めながら「いえ」とあっさりした言葉を返す。
「え?じゃあなんでその病室に・・・」
そのとき、向こう側から雅也と坂屋が並んで歩いてきた。
凛狐が向こうを見た途端、雅也がハッと彼女の存在に気づく。
「お前!」
雅也の驚いた声が響く。
ソウは意味が分からず、雅也の表情に目が留まった。
少しの間そこに立ちすくんでいた雅也が、急にどしどしと凛狐に押し寄せてくる。
「雅也兄ちゃん・・?」
坂屋も怪訝そうにそう言った。
「どうしてここにいる!?」
凛狐の目の前に立つと、突然厳しい顔つきになった。
とうの凛狐は平然としている。
「みゆを助けてくれる気になったのか」
その言葉に、ソウは何かの関係性を感じた。
「様子を見にきただけです。みゆさんと———そしてあなたの」
「いい加減たすけてくれよ。俺もう…やばいんだよ…」
雅也が髪をくしゃくしゃかきあげながら、苦しそうなそんな表情をしていた。
そんな雅也の顔を、凛狐がのぞきこむ。
「イヤです」
凛狐はそう言い放ち、彼の隣を通り過ぎた。
雅也はガクリと地面に落ちていく。
「雅也さん!」
ソウが駆け寄り、様子を見る。
「あの子なんだ、さっき言ってた毒リンゴの。毒リンゴを作ってる奴だよ」
「あの人がですか?」
無言で何度もうなずく。
ソウは立ち上がり、「俺が話してくる」と言ってまたもや凛狐を追いかけた。
「おいソウ」
坂屋が呼び止めるが、ソウは構わず走っていく。
「えーー、もーーなんなのよーー。ソウってば」
一人、この場の雰囲気を読めず、篠花が不満げに駄々をこねていた。
この掲示板は過去ログ化されています。