コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- SANDAI
- 日時: 2015/08/04 11:45
- 名前: いろはうた&墓書 (ID: CiAwflFH)
目次
【戦国】【舞姫】【一目惚れ】
>>003 >>006 >>009 >>011
【楓】【机】【手紙】
>>012 >>015 >>017 >>019
【旅】【笛】【昆布】
>>020 >>023 >>026 >>027
【童謡】【雪うさぎ】【恋慕】
>>028 >>031 >>032 >>035 >>036
【騎士】【姫】【ヨーロッパ】
>>037 >>038 >>039 >>040
【ホーム】【ペンキ】【日暮れ】
>>041 >>042 >>043 >>044
【超高層ビル】【エレベーター】【壁どん】
>>047 >>048 >>051 >>052
【花】【霧】【目】
>>053 >>054 >>055 >>056 >>057
【羽衣】【花弁】【香】
>>058 >>059 >>060 >>061
【醒める】【冷める】【覚める】
>>062 >>063 >>064 >>066
【海】【馬】【タンザナイト】
>>067
〜ご挨拶〜
みなさまこんにちは。
いろはうたです。
現在、「ナメコとワカメのふらいあうぇいっ」という小説を執筆させていただいております。
今回は、私の友人、墓書(はかがき)と共に、
3題小説をリレーで書いていかせていただきたいと思います。
どんな感じかといいますと、
3つのお題に基づいて小説を書いていく、という至極簡単な内容です。
基本は、起承転結のみの短編集のようになります。
え〜いろはうたの場合、ご存知の方も多いと思いますが、割と恋愛ネタに全力疾走します←
墓書は……どうなんだろう。
お、お題によるんじゃないでしょうか……
コメント返しは、いろはうたと墓書のどちらかが行いますが、
コメントしてくださった方の小説には、基本いろはうたが伺います。
出来る限り、マッハで!!
「いろはうたなんか来るな!!コメントくれるなら墓書がいい!!」
とおっしゃる方。
そ、そこをな、ななな、なんとかおっお願いします!!(泣
ご了承くださいませ。
それでは、記念すべき第一回目。
お題。
「舞姫」「戦国」「一目惚れ」
…………………ごめんなさい。
いろはうたの趣味全開のお題になりました。
いくらでも謝罪はしますが、撤回はしません!!
それでは、墓書からのスタートです!!
えー、いろはうたの友人の墓書と申します。
どうぞ、お見知りおきください。
一応注意として、墓書はガッツリ初心者です。
既にお題を見て、心が折れそうです。
しかしそこは、当たって砕けろ。
砕けた欠片はいろはうたに拾ってもらおうと思います。
なお、カキコ自体が初心者です。
コメントに関して、彼女の方が丁寧に対応してくれると思います。
また、いろはうた目当ての方も多いと思います。
ですから、コメントは読ませていただきますが、コメント返しはいろは中心になってしまうと思います。
また、執筆スピードについて。
いろはうたのスピードを鑑みて、墓書は間違いなく亀…いや、なめくじです。
長編は絶対書けないくらいに止まります。
そこをいろはにフォローを期待しつつ遅い足を進めてみたいと思います。
ひとまず、至らぬ点は多々ございますがよろしくお願いします。
よろしく、いろはうた!
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- Re: SANDAI ( No.55 )
- 日時: 2014/11/23 21:02
- 名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
いろはうたは、どうやら最近、禁断モノがマイブームのようです……
ちなみに、この話の登場人物の名前の由来は、トルコ語で
ラハナ→キャベツ
ムスル→トウモロコシ
オレン:イェリ→遺跡
メルヴェ→フルーツ
……きっと名付けた時のいろはうた、おなかがすいていたんですね……(遠い目
ごめんね墓書……
知ってると思うけど、いろはうた、ネーミングセンスないのよ……
次のお題は、「羽衣」「花弁」「香」
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
転
*あの時から早くも一月がたった。
ラハナにわかったのは、イェリが変な人であるということだ。
イェリは毎日ラハナに会いに来る。
皇子としての執務や軍隊長としても隊務で忙しいだろうに、
欠かさずラハナの部屋を訪れる。
最初は警戒していたラハナだったが、いつしかそれも消えていった。
花瓶にささっている一輪の花を引き抜くとそっと髪にさして飾ってみた。
先程イェリが部屋を訪れた際に、手土産として持ってきた可憐な白い花。
庭で腐るほど咲いていたからおまえにやる、と言う台詞と共に。
この花は、ラハナの国ではめったに見られない珍しい品種だ。
この国では違うのだろうか、と棘や虫が綺麗に落とされた花瓶にさる残りの花々を見る。
どう見てもよく手入れされたものにしか見えない。
本当に変な人だ。
敵国の王女に毎日会いに来て、花まであげて、でも手は出さない。
何がしたいんだろう。
コン、カンカン、コン
この独特の扉のたたき方。
メルヴェ王国流のものだ。
「お茶をお持ちしました」
扉の向こうから静かな低い声が聞こえた。
ああ。
ほら。
期待などしなければよかった。
「どうぞ入ってください」
失望を隠し、自ら立ち上がって扉を開ける。
茶と菓子を載せたお盆を持って召使が入ってくる。
珍しい。
いつもお茶を持ってくるのは侍女なのに、今日は男の人だ。
不思議に思いながら扉を閉める。
「ラハナ!!」
背後から抱きしめられ、身体が硬直する。
……この声。
この高木の焚き染められた香り。
「む、ムスル兄様……?」
おそるおそる背後を見やると、すぐ近くにムスルの顔が見えた。
一月ぶりに見たムスルの顔は少し痩せたように思える。
そのしなやかな体はオレン帝国の召使の服が包んでいる。
変装をしているようだ。
ただただ状況が信じられなくて目を丸くしかない。
「ぐずぐずしてはいられない。
早急にここをでよう」
「え!?」
短い時間の間たくさんのことが起こりすぎて頭がついていかない。
ここを出る……?
「何を驚く。
メルヴェ王国に帰るんだ」
「し、しかし、イェリは、私がここに残ることがみんなの命の保証になると……!!」
「名を呼びあうほどの仲なのか……?」
急に平坦になったムスルの声に驚いて彼の顔を見上げる。
その目。
何と言い表したらいいのだろう。
「……どこまで手を出された」
兄が何を危ぶんでいるのかがわかり、瞬時に顔が熱くなる。
「な、何もされておりません!!」
「……間に合ったということか。
よかった」
ムスルの心からの安堵のため息が額をくすぐる。
この人は昔から少し過保護なところがある。
そう思っていたら瞳を覗き込まれた。
真剣なまなざしに言葉を封じられる。
「ラハナ。
こんな時に伝えるのも野暮というものだが、今、伝えよう。
……おれは、おまえを好いている。
妹としてではなく、一人の女性として」
頭を重いもので殴られたかのような衝撃。
ムスル兄様が……私を……?
ムスルの手がラハナの手をそっと掴んで包み込んだ。
大きなて。
剣ダコが目立つその手はいつだってラハナを守ってくれていた。
「メルヴェ王国に帰ったら、おれと婚儀を挙げてほしい。
異母兄妹の結婚は許されている。
……ふたりで、メルヴェ王国を再建していこう」
真面目なムスル兄様。
この人が冗談でこのような口にするような人じゃないことぐらいラハナにはわかる。
「返事は後でかまわない。
……とりあえず、ここを出よう」
呆然としているラハナを抱き上げるとムスルは部屋を出て走り出した。
- Re: SANDAI ( No.56 )
- 日時: 2014/12/16 16:27
- 名前: 墓書 (ID: w.lvB214)
お久しぶりです。
あまりに読まないジャンルなのに加え、まさかの禁断ネタ。
俺の管轄外ッスよ、せんせー。
かっこ良いムスル兄様はいません。
別にいろはみたいに乙ゲーしたこともなく、少女漫画や恋愛本もあまり手を出さず…結果、萌え要素が見当たらない残念なことに。
結はいろはがやるべきやったなぁ…。
まぁ、何とかなるだろう精神で思い腰をあげ完成したら思いの外長い。
死にかけです。
そんなゾンビなりかけの奴が書いたものですが、読んでいただけると幸いです。
結、
*身体が揺さぶられると同時に脳の中身までも掻き回されているのではないか。
そう錯覚してしまうほど、ラハナは混乱していた。
懐かしい兄の匂いが心を落ち着かせ、一方では、懐かしい声で語られたあの台詞がその心を揺るがす。
「ムスル兄様…」
縋りたい…その一心でラハナはムスルに声を掛けるが、返答はない。
ムスルは焦っていた。
ラハナに会うまでは順調に事は運んだ。
しかし、この状況を誰かに見られでもしたらそこでお終いである。
とにかく、ラハナさえ安全なところへ連れて行かなければ…。
そればかりが優先されて、余裕を持てなかったのか。
異変に気づいたのは、室内に立ち込める霧が視界を遮ったからだった。
「…っ」
不明瞭な視界。
突然の変化に驚き、ムスルは一瞬足を止める。
しかし、止まっていても仕方のないことだと、すぐに足を踏み出そうとした。
「待て」
通路に響く声。
「……!!」
その声はラハナにとって、すでに聞き慣れたものになった声だった。
「イェ…リ?」
抱きかかえられたままの態勢ではその姿を捉えることはできなかったが、確かにイェリの声だ。
「舐められたものだな…」
足音が近づく音が響く。
緩んだ腕からラハナはようやく抜け出し、ムスルを見上げると固い表情がうかがえる。
「そんな堂々とこの城から出すと思うか?」
数メートル先でイェリは立ち止まる。
「何が不満だった。たった一人を人質にだすだけで、誰も死なずに済んだ。これほど良心的な提案はなかっただろう。それにラハナも了承したはずだ。」
「ラハナの名を軽々しく呼ぶな!!それにあの状態では了承するしかなかった!」
ムスルは叫んだ。
余計に人を呼ぶことになると考える余裕もなかったのだろう。
掴みかからんばかりに吠えるムスルをラハナは必死に抑えた。
「兄様!もういいのです!皆のためになるならば、こんなことはたいしたことでは!」
「それがいけないと言っているんだ!お前は優しい。あいつの言った条件はただの脅しと言っていいだろう。お前の優しさにつけ込んだな!」
もちろん、そんなことはラハナにだってわかってはいる。
イェリもそうわかって提案したのだろう。
だが、実際にラハナは何もされてはいないし、最悪の場合を考えるとあの状態は救いがあったと見ていいと思っている。
「それがどうした」
そう問い掛けるイェリの冷たい声。
そこでラハナはイェリは敵であったことを思い出した。
と、同時に胸がギュっと詰まるような感覚を覚える。
息が苦しい。
なぜかはわからない。
恐怖かそれとも別の何かのためか。
ムスルはイェリを睨めつけ、ラハナは目を逸らす。
二人が黙ったままなことに焦れたのか、イェリは重ねて問いかけた。
「聞いているのか?それがどうしたと尋ねている。お前たちはそもそもが負けたんだ。にも関わらず、俺を前にして誰も死なせたくない、人質も嫌だ、などと…。わがままが過ぎるな。此方にも体裁というものがあるのはそちらも承知しているだろう。人質が無ければ、いつ其方側が復讐を企て始めるやもしれん。まさか、そんなことも知らずにぬくぬくと育ったわけでもあるまい?」
「ぐっ…」
畳み掛けるようなイェリの言葉にムスルは何も言えない。
「それに…」
「もういいわ、イェリ」
そのまま言い募ろうとするイェリをラハナは制した。
そうして、イェリを真っ直ぐ見つめる。
「少し…兄と話す時間をください」
スッとイェリは眉を顰める。
「何故だ」
不審気にイェリは尋ねた。
まさか、ここまで来て逃げはしないだろうとは思っても、何を画策するかわからない。
「兄様も、あまりに急なことに納得が出来なかったんだと思うわ。お別れも満足にできなかった。だから…」
「…わかった。わかったが…少しだけだぞ。」
仕方が無いな、そう言いた気にイェリは了承する。
そこに何となくだが、囚われていた時に見たイェリらしさというものが垣間見えて、ラハナは微笑んだ。
- Re: SANDAI ( No.57 )
- 日時: 2014/12/16 16:29
- 名前: 墓書 (ID: w.lvB214)
「ラハナ…」
先程まで黙っていたムスルが呼び掛ける。
「俺は…やはりお前を行かせたくはない。兄としても、男としてもだ。暫くお前が囚われていたというだけでも、自分を許し難いというのに…。」
語尾の震えがムスルの思いの強さを物語っている。
しかし、ラハナは首を振った。
「ムスル兄様。私は帰れません。」
「…っ!!けれど、ラハナ…!!!」
「兄様は私ばかりでなく、国のことも考えなければなりません。それに、兄様の気持ちに私は答えることは出来ないのです。…やっぱり、私にとって…ムスル兄様は兄様なんです。」
「…!!…そ、うか…。だが、俺は兄としても…」
そう食い下がるムスルだが、やはりダメージは大きかったらしい。
辛そうに表情を歪め、口を噤む。
「…終わったか?」
二人が何も言わないのをみて、イェリは問う。
「あと、少しだけ…。兄様、大丈夫。きっと彼は悪い人じゃないから」
ふわりとラハナは微笑んでそうムスルに告げた。
「何を…ラハナ。こんな状況で…そんな訳がないだろう!」
「いいえ、私にはわかるんです。いえ、共に過ごすうちにわかるようになったんです。」
別に直感でそう思ったわけではない。
一つ一つの動作に表れるイェリの性格、言葉の端に見える気持ち。
それらから、ラハナはイェリがけして悪人ではないことを確信していた。
むしろ、敵で無ければ好意を覚えさえしただろう。
「だから、大丈夫。取り敢えず、今は兄様は一人で国に帰ってください。手紙を送りますから。」
ラハナをじっと見つめるムスル。
そこに確固たる決意を感じ、溢れ出る感情をぐっと堪えた。
「…何かあってからは遅いんだぞ。」
「大丈夫、今までもそうでしたから。」
その言葉を聞き、ムスルはスッと息を吸い込んだ。
そして、
「オレン=イェリ!!」
唐突に名を呼ばれ、イェリはムスル見やる。
「ラハナを信用して、私は国におとなしく帰る。だが!!貴様を信じたわけでも、ラハナを人質としてずっと差し出すことを了承したわけでもない。妹には絶対手を出すなよ!!!」
「兄様!!」
最後の一言に思わず動揺するラハナだが、イェリは少し眉を動かしただけであった。
「お前ら兄妹は、俺をなんだと思っているんだ…。しかし、まぁ、そうだな。その言葉に容易には頷くことは出来ぬな。」
「何…?!!」
予想外の言葉にムスルもラハナも絶句する。
「人の気持ちに絶対は無いからな。…もう、面倒だ。おい、外へ連れて行け。どうせ、何かしら用意してあるのだろう。しっかりと帰ったかだけを確かめて、あとはもう休んでいい。」
「は、ちょ、おい!待て!このままでは帰れないぞ!どういうことだ!離せ!ラハナ!」
「えっと、…手紙出しますね!」
収拾がつかないと思ったのか、ラハナはムスルに向って手を振る。
さっきのイェリの言葉は気になるが、今はどうこうということもないのだろう。
「ちょ、待て…!おい…!!!」
両腕を掴まれ、遠ざかるムスルの声がだんだんと小さくなって行き、何も聞こえなくなってから、イェリは大きく息を吐いた。
「…お前の兄はまったく。アレで本当に王子なのか?」
「普段はもっと兄様らしく、冷静なんです。まぁ、少し熱い性格はしていますが、あんな兄様は初めてです。」
どうやら、周りにいた家来も全員いなくなったようだった。
すると、イェリは思い出したようにラハナの方を見て、口を開く。
「そうだ。お前はいつからあんなふざけたことを思っている」
「ふざけた…?」
キョトンとイェリを見ると、呆れたように再び溜息を吐かれた。
「俺が悪い人では無いと、甘ったれた事を言っていただろう。まったく、わけがわからない。」
そのままブツブツと何か言うイェリを見て、ラハナは微笑んだ。
「言動を見たらわかりますよ。それに…」
「それに?」
「貴方は言っていたでしょう。」
今度はイェリが不思議そうに、ラハナを見た。
「何をだ。」
「大切なものを人質に取られると人は容易に動けなくなると。それを、その人を思うがゆえに。…それは、貴方自身がそうだから…ですよね。あの言葉を聞いてから、貴方の事をずっと観察していました。貴方の大切なものが何か気になったんです。」
「趣味が悪いな…」
嫌そうな顔をするイェリ。
それを見て、ラハナはくすりと笑う。
「使用人や家来に労いの言葉をかけていたり、窓から貴方が孤児院施設の子供と遊んでいるところも見かけました。貴方はこの国が、この国の人々が大切なんですよね。もし、大切な人がひどい事をされたとしたら、その気持ちがわかるからこそ、貴方は私に酷いことはできなかった。そうでしょう?」
自分の考えをすべて告げ、ラハナはイェリを見る。
暫くイェリは黙っていたが、ゆっくりと口を開いた。
「…まぁ、否定はしない。俺はこの国を命を掛けて守ると誓った。もしも、民が襲われ、乱暴に扱われれば、冷静ではいられなくなるだろう。だが、お前をひどく扱わなかったのは、別にそのためだけでは無い。」
予想外の返答に、ラハナは再びキョトンとした。
それなりに自信があった考えなのに、何が違うのだろう。
考えを巡らせるが、さっぱり思いつかない。
「それは…どういう事ですか?」
「言わぬ」
即座に返答するイェリ。
あまりの早さにラハナは驚いた。
「え!ここまで言っておいて?」
「言う必要はない。早く部屋に戻れ、もう直ぐ夕食の準備が整うだろう。それまでに髪でも整えておけ、ぐしゃぐしゃだぞ。」
「え、あ!!うそ、兄様のバカ!!」
こんな姿で他の人の前にいたなんて、と髪の毛に手をやりラハナは慌てる。
手櫛であらかた整え直し、イェリに軽く礼をして小走りに部屋へと戻っていく。
その姿を後ろから眺め、イェリは小さく呟いた。
「…もう少し、アピールをわかりやすくするべきかもしれんな」
ラハナの髪に飾られていた花を思い浮かべ、今度は手ずから飾ってやろう、そう思うのであった。
end.
- Re: SANDAI ( No.58 )
- 日時: 2014/12/16 16:35
- 名前: 墓書 (ID: w.lvB214)
いろはが趣味に走るなら、俺だって走るんだ。
でも、こういうのっていいと思いませんか?
【羽衣】【花弁】【香】
起、
*或る日の昼下がり。
一人の青年が縁側に腰を下ろし、前庭の花を眺めていた。
朝方に降っていた雨は既に上がっており、葉に残る雫が光を反射して煌めいていた。
濡れた香が鼻腔を擽る。
いつもならばそろそろ猫が餌を強請りにくるのだが、一向に現れる様子はない。
仕方があるまい、気まぐれな猫のことだ。
そんな日もあるだろう。
ぶらぶらと足を遊ばせると、足元の石に下駄の歯が当たって小気味良い音を奏でた。
どうせなら、このまま出掛けてしまおう。
あとで猫が来た時に、と彼は手に持っていた鰹を石の横に置いた。
着物の裾が少し濡れてしまったが、歩いていれば乾くだろう。
念のためにと傘を手にとって、裏口から通りへと足を向けた。
数分ほど歩くと、団子屋の小母さんが店の腰掛けを外に出しているのが見える。
「おや、榊さんとこの息子さんやないの。お出掛けかい。」
彼に気づいたようで、小母さんから声を掛けてきた。
「こんにちは。雨、止んで良かったですね。」
「ほんまにね。どう、寄ってかへんか?」
「いえ、今はお腹も空いてないんで、帰りにでも寄らしていただきます。」
「そうかい、気をつけや。」
小母さんと別れ、暫く歩く。
何か足りないものはあっただろうか、と思いを巡らせていると、ふと入ったことのない細道を見つけた。
暫く考えてから、少し入ってみようと思い立つ。
未だ、何を買おうかも決めていないし、ぶらぶらと探検してみるのも楽しいかもしれない。
そうして、奥へと足を進めた。
−−−−にゃあ
猫の鳴き声がして、視線を向ける。
「…なんや、こんなとこにおったん?」
その声の主は、いつも家にやってくる三毛猫だった。
長い尾をくねらせて、スリスリと身体を彼の足へとすり寄せる。
「なんも持ってへんよ、置いてきてしもうた。」
そう言いつつ、彼はその場にしゃがみこみ猫の背を撫でる。
少し濡れた感触がして、もしや雨のせいで来れへんかったんかもしれんと心の内で思った。
彼が立ち上がると、猫はくるりと周りを回ったあと、てくてくと先に進む。
そして立ち止まると、にゃあと一声鳴いて彼を見上げた。
「ん、一緒に行ってくれんの?せやな、案内して貰おかな。」
彼はくすりと笑い、猫について行く。
ひと気のない石畳の道を一人と一匹だけが歩いていた。
機嫌の良さそうな猫につられて暫く歩く。
周りを見ると先は長屋が続いていて、所々には赤い提灯が吊り下げられていた。
店はあっても、どれも閉まっているようだ。
「…どないしたんやろ、今日なんかあったやろか?」
不思議に思っていると、ふと香木の匂いに気づいた。
「…なんかええ匂いやな。」
再び鳴き声がして猫を見ると、一つの建物に入っていくところだった。
「あ、待ってや。」
慌てて後を追うが、はたしてここは店だろうか。
少し戸惑いながら隙間のあいた引き戸に手をかけると、先ほどの匂いが増してどうやらここからの匂いだったのだと気づく。
と、ガチャンと何かが割れた音がして思わず戸を引いてしまっていた。
- Re: SANDAI ( No.59 )
- 日時: 2014/12/17 10:53
- 名前: いろはうた (ID: 16oPA8.M)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
こう……なんといいますか……
このお話、あまりにも穏やかに時間流れすぎて、
その穏やかさをぶち壊したくなr……いえなんでもありません。
そこらじゅうに墓書の趣味がぶちこまれていて、
これどういうベクトルに走ればいいのか……悩みますよね……ううん……
方言か……
いろはうた、方言で書くの……苦手なんだよなあ……
まあ、いろはうたは、いろはうたらしく行こうと思います!!
そうだそうしよう!!
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
承
*薄暗い中をのぞいてみれば、しゃがみこんでいる娘の姿があった。
どうやら皿かなにかを落としてしまったらしく、床に散らばった白い欠片を拾い集めていた。
鼻腔をくすぐる風雅な匂い。
棚の上にはいくつもの小さな器が置いてあった。
店……のように見える。
猫が娘の方にすりよって小さく鳴く。
それに気づいた娘が、猫が欠片を踏んで怪我をせぬように咄嗟と言う風に
欠片をさっと自分の方にかき集めた。
その拍子に、床に落ちるこちらの影に気付いたらしい。
娘が顔を上げてこちらを見る。
若い娘だった。
その目にかすかに驚きが混じって見えた。
こちらの気配に気づかなかったということだろう。
「まあ、すんまへん!!
どうぞお入りくださいな」
「おじゃまします」
店におじゃましますと言って入るのもおかしなものだが、
なんんとなくつぶやいて薄い布を使ったのれんをくぐって店に入る。
とたんに全身を何とも言えぬ空気が包んだ。
こんな店、いつのまにできていたのだろう。
ぱたぱたと足音がして、娘が奥にひっこんでしまったのを見る。
床を見れば大きな欠片は取り除かれていた。
小さな欠片は残っているから、それを箒で履く気なのかもしれない。
「危ないからなぁ」
欠片のほうに行こうとする猫をそっと抱き上げる。
先程よりも少しだけ毛は乾いている気がした。
改めて棚や机の上に乗っている小さな器を見る。
どうやらこの不思議な香の匂いはこの器からするようだ。
「練香水です」
唐突に声をかけられそちらを見る。
奥から箒を抱えて娘が出てきた。
「練香水……」
店を見るに、それだけしか売っていないようだ。
器の中をのぞいてみると、なにか固まった油のような、軟膏のようなものが入っているのが見えた。
こんなものからこんな風雅な香りがするとは思わなかった。
「お兄さんみたいな男の人がうちに来はるのは珍しいんですよ。
女の人がよくつけはるものやから」
「へえ……」
手のひらに蜜柑よりも小さな器をのせ、しげしげとそれを眺める。
女向けとは言われたが、この穏やかな香りなら別に男がつけてもおかしくない気がする。
腕の中の猫がまた小さく鳴いた。
「一つ、いただくわ」
気付けば、箒で床を履いている娘にそう言ってしまっていた。
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