コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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SANDAI
日時: 2015/08/04 11:45
名前: いろはうた&墓書 (ID: CiAwflFH)

目次

【戦国】【舞姫】【一目惚れ】
>>003 >>006 >>009 >>011

【楓】【机】【手紙】
>>012 >>015 >>017 >>019

【旅】【笛】【昆布】
>>020 >>023 >>026 >>027

【童謡】【雪うさぎ】【恋慕】
>>028 >>031 >>032 >>035 >>036

【騎士】【姫】【ヨーロッパ】
>>037  >>038  >>039 >>040

【ホーム】【ペンキ】【日暮れ】
>>041 >>042 >>043 >>044

【超高層ビル】【エレベーター】【壁どん】
>>047 >>048 >>051 >>052

【花】【霧】【目】
>>053 >>054 >>055 >>056 >>057

【羽衣】【花弁】【香】
>>058 >>059 >>060 >>061

【醒める】【冷める】【覚める】
>>062 >>063 >>064 >>066

【海】【馬】【タンザナイト】
>>067

〜ご挨拶〜



みなさまこんにちは。
いろはうたです。
現在、「ナメコとワカメのふらいあうぇいっ」という小説を執筆させていただいております。



今回は、私の友人、墓書(はかがき)と共に、
3題小説をリレーで書いていかせていただきたいと思います。

どんな感じかといいますと、
3つのお題に基づいて小説を書いていく、という至極簡単な内容です。
基本は、起承転結のみの短編集のようになります。


え〜いろはうたの場合、ご存知の方も多いと思いますが、割と恋愛ネタに全力疾走します←
墓書は……どうなんだろう。
お、お題によるんじゃないでしょうか……


コメント返しは、いろはうたと墓書のどちらかが行いますが、
コメントしてくださった方の小説には、基本いろはうたが伺います。
出来る限り、マッハで!!

「いろはうたなんか来るな!!コメントくれるなら墓書がいい!!」

とおっしゃる方。
そ、そこをな、ななな、なんとかおっお願いします!!(泣
ご了承くださいませ。



それでは、記念すべき第一回目。
お題。


「舞姫」「戦国」「一目惚れ」





…………………ごめんなさい。
いろはうたの趣味全開のお題になりました。
いくらでも謝罪はしますが、撤回はしません!!


それでは、墓書からのスタートです!!







えー、いろはうたの友人の墓書と申します。
どうぞ、お見知りおきください。

一応注意として、墓書はガッツリ初心者です。
既にお題を見て、心が折れそうです。
しかしそこは、当たって砕けろ。
砕けた欠片はいろはうたに拾ってもらおうと思います。

なお、カキコ自体が初心者です。
コメントに関して、彼女の方が丁寧に対応してくれると思います。
また、いろはうた目当ての方も多いと思います。
ですから、コメントは読ませていただきますが、コメント返しはいろは中心になってしまうと思います。

また、執筆スピードについて。
いろはうたのスピードを鑑みて、墓書は間違いなく亀…いや、なめくじです。
長編は絶対書けないくらいに止まります。
そこをいろはにフォローを期待しつつ遅い足を進めてみたいと思います。

ひとまず、至らぬ点は多々ございますがよろしくお願いします。



よろしく、いろはうた!

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Re: SANDAI ( No.40 )
日時: 2014/10/25 21:43
名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

……このSANDAIがカオスじゃなかったことなんてあっただろうか。いやない。(真顔


……ああそうだ認めますよ!!
いろはうたの頭の中はお花畑だって!!!!!(投げやり

ちなみに一番最近に見た夢は、ひたすら紫のネイルを我が友人の爪にフードコートで
シンナーの匂いをまき散らかしながら、うどんを放置して塗り続けるという
なんともカオスな夢でした……



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



*「あ、姉貴……!?」


この男前でいて、全然女っ気のない顔。

見間違えるはずがない。


「どうした。

 おまえ、いつもは可愛らしく、お姉さま☆っていうじゃないか」


どうしたもこうしたもねーよ。

いや待て。

その前に、なぜ姉貴までここに!?

つか、これは夢なのか!?

マジでわかんなくなってきたんですけど!?


「レイ様。

 貴方様は女性ではなく男性でございます」


と表情も変えずにネアと呼ばれた超絶美形が答える。

……は?

女……じゃないだと……!?

え。

なんだ。

女装癖があるっていうのか!?

姉貴に!?

いや、姉貴はそもそも女で……ああああああああわけわかんねえ!!

っていうか、その隣でお姉さまとやらが盛大に舌打ちしていらっしゃるんですが。


「いちいち言うな、ネア」

「ですが」


つまりあれか。

姉貴はこの世界で男のくせに、ドレスを着ていて、しかも妹というポジにいる俺に

お姉さま☆と呼ばせているらしい。

どうかこれが夢であってほしい。

なんてカオス。

頭がこんがらがってきた。

ショート寸前です。


「……頼むから、一人にしてください」


俺はコルセットのせいで息が出来なくて朦朧とした意識の中でなんとか言った。








部屋から俺以外出て行った。

ばたっとふかふかのベッドに背中から倒れる。

やばい。

ふかふかすぎる。

温かすぎる。

肌触りよすぎる。

目まぐるしく起きるわけわからん事態につかれていたらしい俺は

起きたばかりだというのにまたも意識が薄れていった。









っは。

意識が浮上するのを感じる。

えーっと……

そっと目を開ける。

手を持ち上げて視界に入れる。

よし、人間の手だ。

しかもごつごつしていて男っぽい。

姫じゃない。

よし。

よしゃあああああああっ

一気にテンションが上がる。

がんばって目をこじ開けた。

今度こそ、騎士でありたい。

がばっと体を起こして、一番に目に入ったのはかぼちゃのパンツ。


「……え」


なんか白タイツまで履いていて、キモいことこの上ない。

小田和正さんの歌が脳裏に流れるんですけど。








………どうやら、今回は騎士じゃなくて、かぼちゃパンツの王子になってしまったようです。








Re: SANDAI ( No.41 )
日時: 2014/10/26 22:40
名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

うーん……
このSANDAI。
アダルトな内容がないですよね〜
ということで、今回はビターな内容にしようかと!!
とりあえず、えーい☆





〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜










*ぼんやりと光を感じて薄目を開ける。

オレンジ色に照らされた塗装の禿げた天井が見えた。

数度瞬きをして、小さく欠伸をする。

ああ。

だるいし眠い。

もう一眠りしようか。

そう思った時、かすかな悲鳴のような音が聞こえた。

悲痛な女の声。

怒鳴る男の声。

言い争いをしているようだ。

男の声の方にひどく聞き覚えがある。

おれの兄貴の声。

おれなんかと違ってすごく出来のいい兄貴だ。

全てが完璧。

容姿も、地位も、学業も。

……その性格をのぞけば。

相手の女の声は、兄貴の恋人のものだろうか。

まあ、いい。

どちらにしろ、おれには関係ない。

今度こそ目を閉じようとしたとき、おれのいる洋館の一階のドアがバタンとしまった。

女のすすり泣くような声が聞こえる。

洋館の中から。

おいおい。

嘘だろ。

驚いて固まっていたら、確実に足音はおれのいる部屋に近付いてきて、

階段がきしむ音まで聞こえてきた。

言い争った挙句、こちらに逃げ込んだようだ。

おれは舌打ちをすると、ベッド代わりに使っていたボロボロのソファから立ち上がると、

ドアの前に腕を組んで立った。

案の定、すぐにドアノブが回り、耳障りな音をたてて塗装の禿げたドアが開く。

それをこちらからぐいっとひっぱってやると、

栗色の髪をした綺麗な女がよろけながら小さく悲鳴をあげて部屋の中に足を踏み入れた。

女の手を掴みこちらに引き寄せ、その口が悲鳴をほとばしる前に、すばやく手でふたをする。


「……悲鳴なんかあげんなよ。

 おとなしくしてろ」


女はくぐもった声で、何事か言おうとして、さらにもがいた。

部屋の中にまさかおれのような人間がいるとは思わなかったらしい。

手に濡れた感触がした。

女の涙かもしれない。

べたついて、不愉快だ。

おれは寝起きですこぶる機嫌が悪かった。


「うるさい黙れ」


低く言ってやれば、腕の中で華奢な体がびくっと震えた。

動きが弱々しくなる。

おれはため息をつくと、手を放してやった。

数歩距離を取る。


「……アンタ、兄貴の女?」


女の頬には涙の痕が残っていた。

恐怖で見開かれた瞳が驚いたようにおれの制服に目を走らせる。


「柊哉の、弟、さん……?」


声はかすれていたけど、凛としていた。

髪は乱れ、目も充血しているが、綺麗な女だ。

大学生くらいに見える。


「そうだけど」


柊哉はおれの兄貴の名だ。

女じゃない、とは否定しなかった。

どうやらそうらしい。


「兄貴と喧嘩したんだ?」


女はうつむいて何も答えなかった。

まあ、当然だろう。

兄貴は、見た目が言い分、女にモテる。

本人も女は嫌いじゃないからタチが悪い。

女遊びもひどいから、彼女になるやつは気の毒だと他人事のように思ったことは何度もあった。

しかも、傲慢で、自分勝手だ。

おれのような弟は人間のクズとしてしか見ていない。

おれは自分の兄貴が大嫌いだった。


「アンタ、馬鹿じゃないの。

 なんで兄貴みたいなのと付き合ってるわけ?」


幸せになれないのなんて目に見えている。

女はなにも答えない。

悲しそうにただはらはらと涙をこぼしている。

おれは舌打ちをした。

女の涙は嫌いだ。

こっちが悪いことをしているような罪悪感に陥らせる。


「……アンタは、悪くない」


吐き捨てるように言った。

悪いのは兄貴だ。

事情など知らないが、そうに決まっている。

女は首を横に振った。


「別れたら?

 ……あんな男」


嫌悪も隠さずに言ったら、女はまた首を横に振った。

ため息をつく。


「……あっそ。

 おれ寝るから」


関係ないことのはずなのに、なんでおれがむしゃくしゃするんだ。

それがまた腹が立つ。

ソファに向かおうとしたら、あの、と小さい声が聞こえた。


「何?」

「もうすこしだけ、ここにいてもいい……?」


すがるような声だった。

外には兄貴がまだいるかもしれない。

外には出たくないのだろう。


「……勝手にすれば」


そうつっけんどんに言ったら、小さく、ありがとうって聞こえた。

別に何もしてないし。

そう言うのもなんかしゃくで、おれは黙ってソファに横になった。


















「アンタ、また来たの」


これで何回目だろう。

この前かくまってくれたお礼とか言って、兄貴の女がまた来た。

おれが学校が終わったら寝に来ているだけのなんの面白みもない洋館に。

少なくとも1週間に一度は必ず来る。

なにかしら手土産を持って。

メロンパンだとか、スコーンだとか、明らかに手作りであろうものを持ってくる。

しかも、めちゃくちゃ美味い。

兄貴も食ったことがあるのだろうか。


「馬鹿だな」


おれは、女の細い手の甲にできている火傷の痕を見ながら言った。

その火傷の仕方からして、オーブンで負ったものに違いない。

馬鹿だな。

また思った。

おれなんかにスコーンを焼くために、火傷なんかしている。

せっかくきれいな手をしているのだから、もっと他のことをすればいいのに。

いや。

期間限定の手だ。

その手は、また兄貴に向くだろう。

おれには……関係のないことだ。


「私、キコっていうの」


女、キコが不意にそう言った。

アンタ呼ばわりが気に入らなかったらしい。

ちらっと見上げると、キコはじーっとおれを見ていた。

期待に満ちたまなざし。

ふいっと視線をそらす。


「……彰哉」


ぱっとキコの顔が明るくなったのが分かった。

目がその笑顔にくぎ付けになる。

キコが笑うとその場が華やぐ。

ここ何回か会いに来てくれた時には、つっけんどんな態度しかとらなかった。

これ以上、近づくのが怖かったからだ。

これだから、嫌だったのだ。





おれは、キコに惹かれている。






認めたくない事実だった。

Re: SANDAI ( No.42 )
日時: 2014/10/28 20:01
名前: 墓書 (ID: Uj9lR0Ik)

あだるてぃ…とは。

一度あらぬ方向へと思考が傾きましたが、持ち直したよ!

墓書、本を読む際あだるてぃになると真顔になります。

ほのぼのが良いですよ、猫と戯れるのが一番です。

あ、そうじゃないか。

まぁ、うん、いいや。投げよ。


承、




*玄関のドアが開き、大きな音を立てて閉まる。

そこで漸く怠い身体を起こした。

「なんでよりによって今日なんだよ…」

口を拭うと白シャツが汚れ、思わず舌打ちをする。

別に自分が洗うわけでもないし、潔癖性でもないのだけれどひどく苛立つ。

上から釦を外すと肌にピリッと痛みが走った。

「…さいあく」

じっと自分の身体をみていると、足音が響き此方に向かうのが聞こえた。

音の響き具合からやはりキコだろうとわかる。

早く服を着ようと手を伸ばすと間違って兄貴の服を手に持っていることに気付き部屋の端に放り投げた。

もう面倒だ。

そこまで付き合いも長くないし、女性の前で半裸を見せるのはどうかとは思うが、もうどうでもいい。

ぽすりとソファに身を沈める。

すると、暫くしてドアが開いた。

「はいるよ〜…って、え…何脱いでるの?」

ドアを開けながら声を掛けても意味がないと思う。

キコの問いかけを無視し目を閉じると、キコが近づくのがわかった。

「怪我してるじゃない。」

それでも返答せずにいると腕を掴まれた。

「いっ!…何すんの。」

「見せなさい。ていうか、手当するから。」

そういうと一度手を離してドアから出て行く。

少しすると何処から見つけたのか救急箱を持ってやってきた。

「ほら、観念しなさい。」

そこまで嫌がった覚えは無いんだけど。

仕方なくソファに腰を下ろすとキコはすぐ側で膝立ちになり手当を始めた。

真剣に傷の手当をするのを上から眺めるとつい長い睫毛に目がいってしまう。

果たして、これは本物のキコ自身の物なのだろうか。

女なんてメイクでどうにでも変えてしまう生き物とはわかっているのに、それでも綺麗だと思ってしまう。

そんな自分が、どうしようもなく馬鹿だと思った。

数分程度、無言の時間が流れた。

粗方のことは終えたのだろう。

ふとキコが口を開いた。

「学校で喧嘩でもした?」

黙っていることを肯定と捉えたのだろうか。

「へぇ、案外やんちゃしてるんだ?」

キコが面白そうにクスクスと笑う。

バカなことを言う。

なんでそんな面倒なことをしなければならないと言うのだろう。

「アンタのせいだ。」

「え?」

言うつもりなんて無かったのに口が滑った。

表情は変えないまでも、内心は苦い顔をする。

「別に…なんでもない。」

キコの手を払いのけるが、逆効果だったらしい。

怖い顔をして此方を見ている。

「私のせい…って、どういうこと?」

「…あんたの彼氏さんがね、なに人の女に手、出してんだよ、だってさ。」

彼氏も何も俺の兄貴だ。

それでも、そんな風に嫌味を言ってしまったのは、キコが俺の気を奪ってしまうのがいけないのだ、と責任転嫁したかったから。

アンタが悪い。

アンタが俺をこんな風にするから。

自分のことで精一杯だった。

言い訳にもならないかもしれないが、そのせいで、その時キコがどんな顔をしていたかなんて全く気がつかなかった。

「別にそんなつもりないのにさ、言い掛かりつけられてさ。本当ウザくて。黙ってたら、挙句にはお前がキコのことを好きでもキコは俺に惚れてるし、お前なんてなんも思ってねぇよ…って、なぁに勝手に人のことわかったように。んなつもり、ねぇんだよ。アンタが勝手に来てるだけじゃんか。キレて殴ったら返り討ち。このザマ。ほんと、笑える。」

堪え切れず笑い出してしまう。

本当は自分のせいだ。

兄貴にあんなことを言われて、咄嗟に否定できなかったのは自分に邪な気持ちがあるからに違いなかった。

手を出したのは図星をつかれたからだ。

そんな自分があまりにも滑稽で笑いを止められなかった。





Re: SANDAI ( No.43 )
日時: 2014/10/31 23:50
名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

*今回は、わりと書きやすくまとまってくれて心底ほっとしましたなり



いろはうたは、どうも最近、ドラマcdで
どろどろした不倫とか、奪い合いとか、そういうのが自分の中でキテるみたいなんですよねぇ
相手から奪ってでもおまえがほしいZ☆みたいな
……いや、違うか……


本当は、ここがコメディライトじゃなったら、あーんなことやこーんなことを……
い、いや、やめておこう……






次のお題は「超高層ビル」「エレベーター」「壁ドン」










〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜








*「アンタさ、もう来ないでよ」


おれはキコの手首をみながら言った。

目を見れないからだ。

そして、その細くて白い手首にあざが残っていたからだ。

キコだって兄貴になんか言われて、乱暴もされたんだ。

馬鹿な女。

なんで、兄貴に脅されてもまだここに来るんだ。

なんで…………おれに、絶対に叶わない希望をもたせるんだ。

期待をしてしまう。

キコが、お礼のためだけじゃなくて、おれに会いに来てくれているんじゃないかって。

すこしでも、キコの心におれが居るんじゃないかって。

ぎりりとこぶしを握り締める。

期待、なんてもうずっと昔にやめたはずだったのに。


「帰ってよ。

 迷惑だから」


そんなこと、ありえないってわかっているからこそ、頭がガンガンするほど苦しい。

キコは兄貴の女だ。

絶対におれのにはならない女だ。

わかっている。

痛いくらいにわかっている。

わかっていた……はずだったのに。


「ごめん……なさ……い……」


涙の気配がする。

涙は嫌いだ。

ああ、むしゃくしゃする。

なにもかもが思い通りに行かなくて。

でも、これだけひどい言葉を投げつければ、キコはもうここには来ない。

兄貴になんかひどい事をされる心配もない。


「最、後に……」


震える声に、おれはのろのろと顔を上げた。

キコの目には涙がたまっていた。

目が充血している。

おれのせいだ。

でも、これでいいんだ。


「わたしに、なにか、できることは………」


つっかえつっかえの言葉。

なんでこんな時まで、こんなひどい事を言う相手に気を使おうとするのだろう。

でも、答えなんて、決まっている。





おれのになってよ

好きだ

初めて会った時から

キコを想う気持ちだけは

絶対に誰にも負けない

兄貴にも負けない

おまえを守る

全てから

おれの全てをかけて守るから

だから

だから——————






「アンタ、馬鹿じゃないの?

 アンタにできることなんてないんですけど。

 わかったら、さっさと出て行ってくれる?」


けど、答えは言わない。

代わりにひどい言葉を投げつける。

キコがここに来ないようにするための、キコを守るためのお守り。

キコが哀しそうに顔を歪めた。

滑らかな頬に、透明な雫が伝う。

無言で部屋を出ていく細い背中を見送る。

おれはしばらく動けなかった。

さよなら、とおれの乾いた唇がつぶやいた。






Re: SANDAI ( No.44 )
日時: 2014/11/01 09:44
名前: 墓書 (ID: GlabL33E)

小走りに遠ざかる足音。

物理的にも心理的にもキコが俺から離れていく証のようで、耳を塞ぎたくなる。

けれど、きっとこれが最後だからと手をギュッと握りしめて、キコが俺の感覚から消えるまでその音に縋ろうとした。

扉が開く音ともに聞こえたのは小さな悲鳴。

それは何かに驚いたかのように聞こえて、ハッとした。

兄貴と鉢合わせたのかもしれない。

もしかしたら、また乱暴なことをされるかもしれない。

あんな風に突き放して、放っておけばいいのに、衝動に駆られるがままに部屋を飛びたした。

たった数メートルだというのに息が上がる。

おそらくキコと兄貴が居るだろう玄関の手前の扉の陰で息を整え、チラリと様子を見る。

「…あの野郎…」

向こうには届かないほどの小声で思わず悪態つく。

そこに居たのはキコと兄貴と、それから派手な化粧をして兄貴の腕に絡みつく女だった。

「柊哉ぁ〜?この女だぁれ?お姉さぁん?」

甘ったるくて吐き気さえ催しそうな声で女が兄貴に話しかける。

キコは状況をいまだに理解できていないのか、腕を縮こませ黙ったままでいる。

それを幸いにと思ったのか兄貴は人を馬鹿にしたように鼻で笑った。

「前の女だよ。」

ビクリとキコの身体が揺れる。

兄貴が重ねて何かを言おうとしたのを見てこれ以上聞かせてはいけないと思った。

ガンッと押し退けたドアが壁に叩きつけられ大きな音を立てる。

三人の視線が此方へ向いたが、気にすることなく真っ直ぐキコの元へと向かう。

濡れた瞳を見て、あの日、出会った日を思い出した。

あの時のように手を掴んで引き寄せる。

そのまま外へ連れ出そうとすると、兄貴が後ろからおい、と声を掛けてきた。

「てめぇ、また…」

「このクソ野郎が」

後で何を言われようが気にするものか。

どうせくだらない事を言うのだろうとわかっていたから、途中でぶった切って外へと飛び出した。










気付いた時には小さな公園にいた。

鉄棒と砂場とベンチがあるだけの公園。

横にはちょこんと地蔵様があって五円玉が置かれていた。

あのまま走って、走って、休まずに走って、ようやくここで足を止めた。

二人の荒い息が重なる。

手を繋いだままである事に気付いたが、今更離す気にはなれない。

…いや、むしろ離したくない。

そのまま手を引いてベンチへと向かう。

そこでキコも手を繋いでいる事に気付いたのか、握力が弱くなるのを感じて、逆に手に力を込めた。

「彰哉くん…?」

訝しげにキコが俺に話しかける。

「キコ…大丈夫か?」

そう尋ねると、先程の様子を思い出したのか顔がゆがむ。

「兄貴の言ってた事って…本当?」

きっと何も聞かれたくないだろう事はわかっていたのに聞いてしまう。

何も知らなければキコに何も言えないからという事もあったが、ただ知りたいとも思ったのだ。

「…はじめてきいた」

ならば、兄貴の嘘か。

もう実質別れたようなものである気がするが、答えを聞いて落胆する。

キコはまだ、あいつが良いのか。

キコを見ると顔を俯かせている。

「キコ…」

一つ息を吸い込んだ。

「俺じゃ、ダメなのか。」

「え…」

ガッと顔を持ち上げたキコは惚けた顔をこちらに見せた。

と、同時に震えていたキコの手が止まるのがわかった。

「まだ、あの最低野郎がいいのかよ…なんで俺じゃねーの。」

確かにスペック的にはあいつの方が上だ。

けれど、そんな事が気にならなくなるほどキコに対する想いは強く、キコを大切にできる自信があった。

ゆらりと体を傾け、キコの肩に頭を置く。 

「まだ、あいつが好き…?」

キコと触れる部分から俺の気持ちが伝わればいい。

「…わからないよ…。もうわけわかんない柊哉のことも、自分のことも、彰哉のことも。」

「俺のことも?」

こくりと頷く。

はらりと落ちる涙を見て、心底ハンカチを持っていないことを悔いた。

ところで、キコは俺の何がわからないというのだろうか。

只今の俺の感情はある意味で単純なもので占められているというのに。

「…キコが好き。それだけだ。」

そう言ってもっと身を寄せる。

キコは何も言わなかった。

ただ、ほんの少しだけ。

ほんの少しだけこちらへ持たれかかるのを感じて、胸が熱くなった。






end


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