コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Sweet×Sweet【短編集】
- 日時: 2016/01/16 16:06
- 名前: ヒナ (ID: dB4i1UE/)
はじめまして、こんにちは。
ヒナだった、左右りと、と申します。
閲覧頂きありがとうございます。
少し前までこの小説スレは、恋愛もののみ扱っておりました。
ですが、それ以外のものも含まれていたことに最近気づき、変更しました。
なんでもありの短編集です
わたしの妄想力を最大限に発揮させて頑張りますので、応援、又、コメントよろしくお願いします。
【Sweet×Story】
1. 本当の幸せ >>1
2. 雑踏の中で >>2
3. 青春の喜び >>4>>5>>6
4. チューリップ >>16
5. ヒヤシンス・白 >>17>>18>>19
6. スミレ・白 >>20
7. ニオイヒバ >>24
8. キイチゴ >>25>>29>>30
9. ホオズキ >>35
10.ヤブデマリ >>38>>41
11.雛菊 >>44>>45
12.いつだって答えは、そこにあった >>48
13.始まりの鐘 >>49
13,5.If Story/嘘 From 始まりの鐘 >>50
14.人生 >>53 そのあらすじ >>54
15.
16.
【お知らせ】
・4話からは、タイトルをお花の名前にしています。また【】の外に書いてある言葉は、花言葉ですので、よかったら覚えてくださiい(*^_^*)
・6/24……参照500突破!!!
・7/02……↑を記念、感謝して、イラスト公開!!>>31
・7/05……参照600突破!!
・7/16……スランプのようなものに陥りましたので、更新がさらに遅くなります。
・7/21……10話のお話は、長編の練習となっております
また、その続きを書くつもりなので、短編集とは言えなくなります
・8/01……話数が、10話を突破しましたぁ!!ありがとうございます
・8/07……参照700&10話突破を記念・感謝企画を実行!!>>42
・H26 1/1……あけましておめでとうございます!
たぶんスランプ脱しました!ありがとうございます
又、タイトルが花言葉じゃなくなりました
【about me】
名前:左右・りと/さゆう・りと
性別:女
年齢:中3
趣味:小説書く、絵をかく、切り絵、歌うこと
出没場所:コメディ・ライト、雑談掲示板の我がスレ、ツイッターetc...
コメント:ツイッターアカは【@Colalito】です。よく呟きます
よろしくお願いします!!
- Re: Sweet×Sweet ( No.41 )
- 日時: 2015/08/04 11:32
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode
(続き)
「…………え?」
ただでさえ静かな車内に、沈黙が下りる。わたしも恒も、言葉を見つけられずにただ宙に視線を彷徨わす。その沈黙を破ったのは恒。でも、言おうとしてることなんてわかる。
「俺は……」
「いいの。恒の答えはわかってるよ」
「………………」
恒は目を少し見開いて、そして私から顔を背けた。
「恒は…………三波さんが好きなんだよね……?」
「………………」
沈黙。恒は図星だとすぐ黙る。そのだんまりが、暗に肯定を示していることを知らないで。ほんと馬鹿だよ。それで誤魔化せていると思っているんだから。
「香織……」
「なんにも言わないで。……言わないでいいから、聞いて」
もう一度、恒の言葉を遮った。わたしの言葉に小さく恒が頷くのを見て、訥々とわたしは語りだす。
*
初めて恒と出逢ったのは、小学1年生の時。好きになったのは小学4年生の時。
そう思い返すと、随分と前から好きだったんだなって笑っちゃう。だって、7年だよ? 7年間ずっと恒のこと好きだった。
どこを好きになったか、なんて覚えていないけど。月並みな表現だけど、たぶん……全部が好きだった。
空気が読めないとことか、球技好きなのに全然上手じゃないとことか、馬鹿みたいなのに成績良いとことか、鈍感そうなのに辛いときはそばにいてくれるとことか、ココアが好きなの忘れないでいてくれるとことか、とにかく全部。
ははっ……たしかに、悪口かも。でも、悪いとこも好きだったんだよ。気持ち悪いくらいに。
でも、中学生になったら恒は遠い人になっちゃった。恒は明るくて気遣いできて頭もそこそこ良いから、すぐ人気者になっちゃって。同じクラスなのに、全然話せないし、話しかけてくれないし。
でも…………離れても気持ちは変わらなかった。
あっという間に中学校生活が過ぎて、受験生。恒はもとから成績良いから、頭いい学校に行くってわかってたから。わたし勉強頑張ったんだよ? 偏差値高いところ行くんだから、わたしのことも考えて、って言ってやりたかった。
それで、ものすごーく勉強して恒と同じ高校に入れた。だからと言って、特に話すこともなかったけどね。それでもよかった。恒と同じ学校に通えているだけで。
でもね、恒に好きな人ができたのに気づいたとき、わたしは心の底から嫌だって思った。恒に好きな人ができたことにじゃなくて、恒にわたしの気持ちを知ってもらえないまま、恒が誰かと付き合うのが嫌だったの。わたしの気持ちを…………知ってほしかった。今までそんなこと考えたことなかったのに。
だから、恒が一人で帰ることになる委員会の今日に告白しよう、て決めたの。
わたしのことを忘れていてもいいから、わたしの気持ちだけ聞いてもらえればいいって思った。……ううん、思ってたの。
わたしはそこで、口を閉じた。恒は静かにわたしの隣で次の言葉を待っている。
あぁ……もう。そこで笑い飛ばしてくれれば、わたしとしては楽なのに。変なところで真面目なんだから。
「でも、やっぱり駄目ね。わたし……恒にフラれるのわかっていたはずなのに………………やっぱり、辛いっ……!」
頬を暖かいものが伝って、制服に落ちる。
家で散々泣いたのに。だから絶対、恒の前では泣かないって決めてたのに。そんなことしたら、恒は責任を感じちゃうじゃない。恒の足かせにはなりたくないのに。
必死に涙を止めようとするのに、全然止まってくれない。こんなの予定になかったから、どうしていいかわからなくなる。パニック状態、どうしたらいいの。
止まって、止まって、止まってよ……。
沈黙の隙間に、わたしの嗚咽が混じる。
「……ぅう…………」
「……その、香織? なんて言っていいかわからないんだけど。……ありがとうな」
「……うっ……うぇ…………ば、馬鹿ッ!! な、で……そんなこと、言うの。馬鹿……馬鹿ぁ!!」
「な、馬鹿って……」
本当に大馬鹿。馬鹿、間抜け、でべそ。大好きだ。
「……ははっ……あはははっ!! もう、恒の所為だからね。悲しかったはずなのに……笑っちゃうじゃない!」
「なに逆切れてんだよっ!」
「だって恒が……!!」
恒をふりかえると、視線が合う。数秒交わって、どちらからともなく、笑いだす。
「「アハハハハ!!」」
“何が面白い”なんてわからないけど、笑った。さっきまで悲しくて辛かったのに、今は大笑い。本当に、恒と居ると調子が狂う。
少しして笑いがおさまると、わたしは笑みを浮かべて言う。
「ありがとう、恒。わたし恒の好きになれてよかったって思う」
「……うん、こちらこそ。俺なんかのこと、好きになってくれてありがとう」
……ったく、何回泣かせるつもりだ。だけど、大丈夫。もう泣かない。
「もっと感謝して」
「…………はっ!?」
「あんたみたいなの好きになってやったんだから、感謝してよ」
「なんだよ、それ!! ってか、あんたみたいなのって……」
よかった……わたしたちは、あの頃に戻れるんだね。離れていて、何年もほとんど話さなくても。それだけで、幸せだ。
「そうだ、お礼に肩貸して。なんか眠くなっちゃった……」
そう言って、恒の肩へ寄りかかる。制服の向こうに恒の体温を感じる。暖かい。
「お礼ってそんなんでいいのか?」
「うん、これだけで……十分。だから…………もうちょっと、待って——」
——わたしの気持ちが、消えるまで。
*
あれから数日がたったある日。
「おーい、香織!!」
友達と、お昼を食べようと立ち上がると、馬鹿うるさい声がわたしを呼んだ。教室に響くその声の主は、わたしへと駆け寄ってくる。なんだ、なんだ。
「一緒に昼飯食べようぜ!」
「はっ?」
あまりにも突拍子のない言葉に、目が点になる。というか、後ろに誰かいるの?
「……あ、あのっ! ご一緒してもいいですか?」
ぴょこんと出てきたのは、とても可愛らしい女の子だった。あぁ……そういうこと。
「つまり、わたしを針のむしろにしたいってこと?」
どこか見たことのある顔だと、思ったら……三波さんじゃない。何がどうして、出来立てほやほやのカップルに挟まれて楽しくお昼、なんてできるのだろう。そんなの、わたしのこと殺しに来ているの?
「……え? どういう意味?」
「…………馬鹿なの? まぁ、どうでもいいけど。お二人で食べてきなよ、わたしはお邪魔でしょ?」
「そんなことないですっ!!」
「そう? でも、残念ながらわたしにリア充の間でお昼を食べて幸せを感じる性癖はないんだ、だから。お二人で、どうぞ」
「そうか。残念だな……」
よしよし、それでいいんだよ。わたしは、あんたの幼馴染なんだから。このくらいの距離で、いいの。
「……じゃあ、また明日!」
「なんでそうなんのよっ!! ……もう、速く行きなよ、お昼休み終わっちゃうよ」
恒の背中を押して、どっか行くように促す。恒は渋々といった様子で、三波さんを連れて教室を出て行った。わたしはそれを笑顔で見送る。
確かにフラれてしまったけれど、恒が幸せならそれだけでいいかな、って思うんだ。
—————————————————————————————————————————End.
【ヤブデマリ もうちょっと待って】
いかがでしたでしょうか?
S×S初の悲恋系ですが、わたしとっても満足しています(*^_^*)
最後の方がイメージしていたものとは、少し変わってしまいましたが、まぁ……これでいいか、と(笑)
恒くんが三波さんにフラれれば、わたしとしてはもっと満足なんですけどね……
(リア充爆発しろ!!!)
リア充が末永く爆発することを祈って———
- S×S ( No.42 )
- 日時: 2015/08/07 17:31
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
- 参照: 参照700&10話突破 特別企画 キャラ設定公開!!!
S×S キャラクター設定
【出演作品】
○女子(5人) ●男子(6人) お気に入りの……☆女子(2人) ★男子 苦手な……△女子(2人) ▲男子(1人)
名前/よみがな (年齢)
(1個目の句点までが)その人物を一言で表すと。その他人物説明
【本当の幸せ】
○山本紗花/やまもとすずか (16)
隠れ積極的女子。一目ぼれしたから、と翔太に猛アタックする反面、腕をからませることには赤面する可愛らしい一面も。照れ屋で、頑張り屋の、純粋な女の子。
●松本翔太/まつもとしょうた (16)
過保護で照れ屋なクール男子。紗花に少し酷いことを言うが、それは紗花を想ってのこと。紗花に変な虫が付かないよう学校への送り迎えは欠かさない。また、照れ屋さんで、紗花と腕を組むだけで耳まで真っ赤になる純粋さん。
【雑踏の中で】
☆川口優奈/かわぐちゆうな (17)
トラブルメーカー。何かするとすぐ問題を起こす、ある意味問題児。成績も顔もそこそこ。トラメーってことを自認しているからこそ、どうにかしようとするが、それも失敗する。なのになぜかポジティブ思考。
●阿久津凌/あくつりょう (22)
隠れたやさしさ。参考にしたキャラクターは、神様のメモ帳(杉田光さま)の四代目です。よかったら、神メモを読んでみてください。とってもかっこいいです、四代目!!
【クロッカス】
○田中夕華/たなかゆうか (14)
男子恐怖症のリア充。男子が苦手でおとなしい。
●鈴木蓮/すずきれん (14)
元気いっぱい一直線。明るくて行動家。好きになった人にも臆さず、一直線。かといって気持ちを押し付けるわけではなく、あくまでも相手を想う。
【チューリップ】
△アメ/あめ (?)
霧雨。おとなしくて、ネガティブ女子。だけど、自分を解放しポジティブ系の女の子になった。
【ヒヤシンス キイチゴ】
☆桧木紗瑛/ひのきさえ (17)
ひかえめなマシンガントーカー。おとなしそうな外見に似合わず、罵詈雑言をマシンガンのように言う。だが、人に自分の気持ちを伝えることが苦手で、親しい相手にも遠慮しがち。
●風見頼人/かざみよりと (17)
チャラそうでチャラくない少しチャラい男子(←)。女の人はみんな好きだけど、大好きなのは紗瑛だけ。案外一途でヤキモチ妬きさん。紗瑛に調子を狂わされているので、現在目標は紗瑛に余裕をなくさせること。
【スミレ】
○スミレ/すみれ (?)
オールドクロック。大切な人を亡くし、時間が止まってしまったひと。
【ニオイヒバ】
○坂本瑞葵・さかもとみずき(17)
無類のパフェ好き。パフェは週4で食べる。食べないと禁断症状が……でません(笑)。
●中島凜・なかじまりん(17)
隠れ臆病者。
【ホオズキ】
●四十川・あいかわ(15)
消極的な不良。大切に思うほどに消極的になってしまう、照れ屋さん(?)。なのに不良(笑)。
△藤本杏花・ふじもときょうか(16)
面倒が大嫌い。面倒なことが大嫌いで、頼みを断ってごたごたするよりも、雑用をする方が楽・だと思っている。全然出てこないからキャラ不明。心の中で、いろいろ言ってそう。紗瑛ちゃんと気が合うかも。
【ヤブデマリ】
○香織・かおり(18)
切り替え上手。7年も好きだった人に告白して、フラれたが引きずっていない強い人。また、見せ掛けでもそうしようとする。かっこいい……!
▲恒・こう(18)
モテモテ男。人生の勝ち組系男子。一番むかつくやつ。嫌い。
参照700突破、そして話数が10話突破(?)!!!!
ありがとうございます<(_ _)>
まだ10話なのかぁ、やっとだな……と感じています
これからも、出来る限り書いていきたいと思います!!よろしくお願いします(*^^)v
そう言えば、キャラ設定を書いていて思ったんですけど、わたしの書く男子ってみんなヘタレですよね……
ヘタレ好きだったのか、わたしは
実際恋愛に積極的な方が、わたしは好きなんだと思っていたけれど
……そうか、ヘタレ…………ヘタレ……
ヘタレ……かぁ…………((ry
- Re: Sweet×Sweet ( No.43 )
- 日時: 2015/08/09 18:13
- 名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)
恒君がいらないなら私に香織ちゃんをください。
ください(切実)
あと、リア充爆発してください。
してください(切実)
香織ちゃんたくましくてかっこよくて惚れました……
参照700&10話突破おめでとうございます〜
ああ、あの子もいたなあ、あの子かわいかったなあと、しみじみしながらキャラ設定読ませていただきました。
恒君の説明には笑いました。
ヘタレ男子いいじゃないですか〜素敵じゃないですか〜
好きな子の前でわたわたしてるのが最高にかわいいです((
これからも陰ながら応援しています。
更新頑張ってください!!
- Sweet×Sweet ( No.44 )
- 日時: 2015/09/11 19:00
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
- 参照: 参照700&
【雛菊】
「美味しかったです! あとお花ありがとうございました!」
わたしはそう言って、お店のドアを閉めた。
今日は、凛と学校帰りに、パフェの美味しいお店探しをしていた。
そして、見つけた【喫茶店EGG】という、不思議と落ち着くような雰囲気のお店。リニューアルオープンしたばかりで、真新しい店内だけど、どこか昔からここにあるような感じ。
わたしは、また今度来よう、と心の中で決めた。
「ね—凛?」
わたしは、特に言うことも考えずに凜に呼びかける。
「ん? どうした」
わたしのことをちら、と見下ろした凛は、優しげな顔をしている。そう言えば、と昼間のことを思い出す。
『凛くんって怖そうだけど、かっこいいよね!!』
クラスの女のコが話していたのが、聞こえてしまった。
凛が良い評価をされるのは、幼馴染としてうれしいことなはずなのに、やっぱり胸が痛んだ。凛はそりゃ、かっこいいし、運動できるし、勉強だって得意な方だ。そんな凛が、モテないはずがない。女のコが放っておくはずがないんだ。むしろ、今まで告白してきた女のコの話が出ないことの方が、不思議なんだ。
そう思うと、今自分が凛の隣にいることが、不思議に思えた。自分の想いを伝えることもせず、かといって離れもせず、わたしはズルいんじゃないか。
「どうした、瑞葵。具合悪いのか?」
名前を呼んだまま、黙り込んでしまった私の顔を、凜は心配そうに覗き込む。
——わたしは、彼女でもないのに。凛の隣にいる資格が、ある……?
「……瑞葵!? ど、どうした?」
心配そうな凜の顔は、驚きと戸惑いの混ざった顔に変わる。どうしたんだろう? わたし、そんな変な顔してんのかな。
「……どうも、しないけど?」
「どうもしなくないだろ! なんで、泣いてんだよ」
珍しく声を荒げた凛が、わたしの顔を無理やり上に向かせる。凛の大きな掌が、頬に触れて恥ずかしい、そんな考えと同時にまた訪れる、不安。
「おい、瑞葵聞いてるのか? なんで泣いてる……おい、な、泣くなよ!!」
凛がさらに慌てて、ようやく自分の頬に何かが伝っていたことに気づく。視界もぼやけて凛の顔の輪郭がゆがむ。凛に気持ちを伝えたら、こんなふうに輪郭もわからないくらい遠くに行っちゃうのかな。
「うぅ…………凛っ……やだよ、わたし……凛と一緒に、いたいっ……!」
*
喫茶店EGGなる店から出ると、3月にしては少し暑い日差しが肌を灼いた。なぜかお店の人にもらった花をいじりながら歩き出し、はたと思い出す。
『その花、雛菊というのです。花言葉が素敵なのでもしよければ』
にこやかに笑った店員は、たしかそう言ったはずだ。花言葉……?
俺は少し、気になってスマホを取り出し、検索してみる。
【雛菊の花言葉:無邪気、お人よし】
確かに、さっきの店員は俺たちに花なんてくれたから、お人よしだけど。そのことが言いたかったのだろうか。
なんとなく、他のページも見てみる。一個下のページをタップすると、さっきとは少し違った花言葉が。
【花言葉:———】
「ね—凛?」
花言葉を読もうとしたとき、隣からつぶやくように小さな声で瑞葵が言った。若干うつむき加減の瑞葵の表情は、わからない。だが、あまり明るいようには見えない。
「ん? どうした」
そう返事をするが、その先の言葉はどれだけ待っても来なかった。不審に思って瑞葵の顔を覗き込む。驚いたような顔をした瑞葵が、少しさびしげな色を纏った瞳で俺の事を見返した。
「どうした瑞葵。具合悪いのか?」
そう問うても、ただただ俺の事を見るだけで返事はない。喋れないほど具合が悪いのかと考えていると、突然瑞葵の目に涙がたまった。それはすぐに表面張力を失うと、瑞葵の目からこぼれた。
「……瑞葵!? ど、どうした?」
瑞葵が泣くところなんて、小学校中学年くらいのころ以来だろうか。すっかり狼狽えてしまった俺は、だらしなく声をあげる。
「……どうも、しないけど?」
自分が泣いていることに気づいていないのか、瑞葵は心底不思議そうに首を傾げた。
「どうもしなくないだろ! なんで、泣いてんだよ」
自分にしては珍しく声を荒げてしまった。いきなりの大声にびくっと肩を揺らした瑞葵がおびえた表情をして、俺は無意識に瑞葵の頬を両手で包んだ。しかし、瑞葵の涙はさらにあふれ出す。
「おい、瑞葵聞いてるのか? なんで泣いてる……おい、な、泣くなよ!!」
完全に慌てきった俺は、どうしようもなく瑞葵の顔を覗き込むことしかできない。
瑞葵はようやく自分が泣いていることに気づいたのか、一瞬顔を歪めると、次の瞬間——
「うぅ…………凛っ……やだよ、わたし……凛と一緒に、いたいっ……!」
「………………っ!!」
暑い、いや……熱い。熱過ぎる。
空気が一気に熱を持ち体中に貼りついたように感じる。さっきまで、少し暑いくらいだったのに、何故。
「凜……わたし、もうやだよ! こんな、こんな関係、嫌なのっ」
熱暴走したコンピューターさながら、フリーズした脳は、すぐには動いてくれない。だが、それでもなお瑞葵は、叫んでいる。
「わたし、凜が女の子に、かっこいいとか、頭いいとか言われると、うれしいよ。でも、うれしさよりも、悔しさとか、妬ましさとか……黒い感情が湧き上がって来て、自分のことも嫌いになっちゃうくらいに!」
あぁ、俺の馬鹿。なにフリーズしてんだよ、こんな大事な時なのに。瑞葵が、本心を打ち明けてくれているのに!!
「わたし……わたしは、凛のことが——」
いつから、だろうか。瑞葵と、俺が友達以上の関係のまま平行線を進み始めたのは。
そして——。この瞬間を、待ち始めたのは。
「——好き」
本心を表す言葉たちから、目を背けたのは。
- Sweet×Sweet ( No.45 )
- 日時: 2015/09/11 19:02
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
*
「好き」
何回も、舌先まで出かかっては、引っ込めていたその言葉。だけど、今はするっと出てきてくれた。自分でも不思議なくらい、自然に。
凛はさっきからなにも言わず、黙っているけど、どう……なのかな。わたしは恋愛対象外? それとも、少しは……?
ちらり、と凜を見上げると——
「……っな、なに真っ赤になってんの、凜」
ゆでだこも真っ青なくらい、凜は真っ赤になっていた。目は驚きに見開かれて、口はぱくぱくと何か言いたげ。
わたしはと言えば、人生で初めての告白をしたのに、そんなに、驚くの? なんていたって冷静。何でだろう、全然ドキドキとか、してないかも。フラれちゃうかもなのに。
「う……いや、その…………」
凛は、わたしから視線を外すと、何か手持ち無沙汰なのか、スマホを見る。人が告白したのに、スマホなんか見て。失礼な。
「え!?」
「……な、何? どうしたの、凜」
突然凜が、叫び声をあげると、今まで歩いてきた道を勢いよく振り返った。そして、わたしを見て、もう一度スマホを見て、わたしを見る。なんなの?
「……ん」
凛が腕を伸ばす。わたしの目の前に、見たことある花。さっきもらった、雛菊。
「え、なに? 凛、これが……どうしたの?」
さっぱり、意味が理解できなくて、きょとんとしてしまう。さっきまでの、緊張とか、不安とか、どこへ行ったのか。なかったことになっているような、気もする。
「だーかーらー……コレ、俺の気持ち!」
「うん? お花、くれるってことは、OKってことなの?」
「そうじゃなくて!! いや、そうなんだけど……そうじゃなくって!」
「全然わかんないよ、何? ちゃんと、言って。わたしも、言った……でしょ?」
ちょっぴり、さっきの恥ずかしさが戻って来て、顔が火照る。凛は、まだ赤い耳をぽりぽりかいて、明後日の方をみてしまっている。
そのまま少し経つと、何か思い切ったように、わたしを見た。そして、また腕を伸ばす。
目の前には、スマホの画面。さっきから、これを見ていたの?
「何々? 雛菊の……花言葉?」
【花言葉:あなたと同じ気持ちです】
*
やっと、言えた。
やっと、聞けた。
やっと、届いた——。
————————————————————————————————————————————End.
【雛菊 あなたと同じ気持ちです】
こんにちは、お久しぶりです。
覚えていらっしゃいますでしょうか、りとです。
このお話は、ニオイヒバの続きのお話です。
お気付きの方がいらっしゃったら、すごいのですが……これは、わたしの大好きな作品である
【喫茶店EGG】
で、夕陽に書いてもらった短編をもとに、その後を書いています。
よかったら、そちらも読んでいただけると、わかりやすいかと思います(*^_^*)
とっても、心温まるお話ばかりですので……
*
そして、やっとくっつけることができました、この二人!!
いやぁ……書いていてもどかしかったです(・_・)
どうして、そうなんだ、もっとこう…………ねぇ!!
って(笑)
どの話も、結末に釈然としないようなものばかりで、すみません<(_ _)>
キャラもみんな似ている、と指摘されましたが、それも直していきますので!!
どうか、これからもよろしくお願いいたしますっ(*^_^*)
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