コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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ルミエール・エグゾルシスト
日時: 2014/11/08 00:24
名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)



 どうも、凪乃(なぎの)と申す者です。
 今回は閲覧いただきありがとうございます。

 発音しにくいタイトルですが、何卒よろしくお願いいたします。
 タイトルはフランス語を使っております。『ルミエール』が光、『エグゾルシスト』は悪魔祓いという意味の『エグゾルシズム』を、悪魔祓いする人、ということで『エグゾルシスト』と少し変えちゃってます。
 大体の意味としては『光の悪魔祓い』でしょうかね。

 この作品には悪魔は出てきませんが、魔人が出てきます。
 そしてそれを退治する『滅凶師(めっきょうし)』というものも出ます。
 『滅凶師』と魔人の熱いバトルアクション! ——になる予定です。

 出来るだけ個性的なキャラで、読者様に印象を与えるキャラを作っていきたいと思います!

 では、応援? よろしくお願いしますっ!

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Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.30 )
日時: 2015/08/10 10:30
名前: 凪乃 (ID: 4/G.K5v4)



 2


 戦況は優勢だった。
 三人の滅凶師を取り囲むのは100を優に超える大量の魔人の群れ。
 個々の力は弱くても、これだけの数がいればたった三人の滅凶師を潰すのは充分だ。下で雑魚魔人が足止めしている間、自分はゆっくりとこの巫女の力を喰らう術を探せばいい。
 と、悠長に考えていた。
 故に優勢『になるはずだった』。
 三人の滅凶師はあかりに憑いた魔人の予想を裏切ってくれた。
 錐崎双太は自分に襲い掛かってくる魔人を、右拳に纏った光のグローブで闇雲にぶん殴っている。ただの単純な攻撃だが、元々魔人に最も有効とされる光属性の攻撃だ。一撃は耐えても、二、三撃で消滅する魔人がほとんどだ。
 上沢風鈴はなるべく遠くにいる敵を矢で撃墜している。こちら側に魔人が進出して来ないよう、細心の注意を払いながら攻撃している。出来るだけ接近戦向きの双太と依瑠華の負担を減らしているのだろう。
 しかも命中率がかなり高い。あかりが憶えているだけでも一発も外していない。
 そして別格なのが如月依瑠華だ。
 遠くとか近いとか、距離も関係なしに魔人を焼き尽くしている。彼女の一振りで約十体くらいの魔人が一気にやられているのだ。一方の依瑠華は涼しい表情で、おそらく彼女の実力の一割もまだ出していないだろう。むしろただの単純作業に飽きてきた、といったような調子だ。
 あかりが巫女の力をどう喰らうか探すことも忘れ、三人の方をじっと見ていると不意に依瑠華と目が合ってしまった。
 他の二人はよそ見をする余裕なんてないというのに、この戦場で彼女だけがその余裕を見せていた。
 三人の脅威にあかりが身を強張らせていると、それに気付いた依瑠華が獰猛な笑みを見せた。
 まるで『すぐに滅してやるから待ってろ』と言わんばかりに。
 これはまずい、とあかりが判断したのはその直後だった。呑気に力を喰らう方法を探っている場合じゃない。すぐに離れなければ、今までのことが無駄になってしまう。
 逃走すると見たのか、依瑠華が周りにいる二人に声を掛けた。
「おーい、双太。風鈴。自分の身は自分で守れよ」
 二人が問い返すより速く、依瑠華が刀の切っ先に生み出した炎の玉を上に打ち上げた。
 何をしてるんだろう、という二人の疑問はすぐに現象となって帰って来た。
 空に赤い点が何度も、そしていくつも明滅する。空を見上げていると、その赤い点が徐々に大きく、いや地上に向かって落下してきているのが分かった。しかも赤い点は炎の玉だ。先ほど依瑠華が打ち上げた炎の玉が空中ではじけ、複数の炎の玉となって降ってきたのだ。
「……って、これはヤバいだろぉぉぉ!?」
 双太の叫び声は地面に着弾する炎の玉が巻き上げる爆音でかき消された。
 数秒後、辺りは激しい土煙で充満する。溢れ返っていた魔人は一匹と残らず消え去り、土煙の中、依瑠華だけが平然と立っていた。
 周りを見回した依瑠華は小さく息を吐くと、
「久し振りにやったなー、この技。腕が訛っていたせいかせいぜい八割程度か。よし」
 依瑠華が帽子を上から押さえつけると、
「最終決戦だ。いくぞ、双太。風鈴」
「切り替えられるかッ!!」
 土煙の中、埃まみれの双太が思わず叫ぶ。風鈴も双太と同じような有様で、少しだけ不服そうな表情を浮かべている。
「だから言ったろう? 自分の身は自分で守れ、と」
「だったらせめて何をするかぐらい言えよ! 危うく周りの魔人と一緒に死ぬトコだったんだぞ!?」
「文句を言うな。誰のおかげで全滅できたと思っている?」
「アンタのおかげだけど、こうなったのもアンタの仕業だよ!」
 二人がぎゃあぎゃあと子供のように言い合っていると、風鈴が何かに気付いたように、焦った声を上げた。
「錐崎くん、依瑠華さん、あれを!」
 二人が言い合いをやめて風鈴が指差した方向へと視線を向ける。そこにはあかりが咲桜を磔にしていた黒い茨の木だ。だが今そこに咲桜の姿はなく、あかりの姿もなくなっていた。
「な……! いなくなってる!?」
「先ほどの攻撃でまとめて、という可能性はないでしょうね!?」
 風鈴が振り返ると、依瑠華は溜息をついた。
「馬鹿にするな。範囲くらい調整している。おそらく逃げただろうな……あそこだ」
 依瑠華が向けた視線の先に、黒い翼を羽ばたかせているあかりの後姿があった。
「いた! 今ならまだ追いつける!」
 双太たちは逃げるあかりを全力で追いかける。

Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.31 )
日時: 2015/09/06 01:24
名前: 凪乃 (ID: 4/G.K5v4)



 3


 双太、依瑠華、風鈴の三人は逃走するあかりを追っていた。
 黒い翼を羽ばたかせ、低空飛行で疾走するあかり。当然ながら、人間である双太たちに追いつける速度ではない。距離が縮まるどころか、開いてしまっている。
「くそっ! これじゃ追いつけねぇ!」
 遂に見つけたあかりと咲桜を見逃すわけにはいかない。ここで逃がしてしまえばもう見つけられないかもしれないし、何よりあかりと咲桜の両方を救うことも叶わなくなるかもしれない。
 それだけは絶対に阻止しなければならない。
 今は双太の「咲桜だけでなくあかりも助けたい」という我儘に、依瑠華と風鈴を突き合わせている状態だ。
 双太が止めなければ、あかりの中に魔人が憑依していると気付いた時に、魔人を滅することができた。
 だが、双太は撃とうとする風鈴を止め、一回目のチャンスを逃した。そして今回だって、ギリギリまであかりを助ける方法を試すという危険な賭けに出ているのだ。
 二人とも救うためには、逃がさないというのは絶対条件だ。
「ふむ、逃げられてしまうのは良くないな」
 双太の少し後ろを走る依瑠華がそう呟く。
 彼女としても、ここで逃げられるのは好ましくない状況らしい。
「ですが、ここまで差が開いては詰めるのは難しいのでは? それにこちらは走っているのに対し、向こうは飛んでいます。どう足掻いたって追いつくことは出来ないんじゃ……」
 依瑠華と並んで走る風鈴がそう意見する。
 飛ぶのと走るのとではさすがに進むスピードが違う。それも人と人の形をした人外であるのならば尚更だ。足で走るのと翼で飛ぶのとでは差が開くのは言うまでもない。
「どうする!? このままじゃ逃げられちまうぞ!!」
「そもそも、錐崎くんが原因ですよ。あの時君が止めなければ……」
「まあ落ち着け風鈴。ここでまた言い合いしても仕方ないだろう」
 喧嘩の火種となりそうなのを、依瑠華があらかじめ消す。喧嘩して連携に支障を来されてもこちらには何の得にもならない。お互いに思うところがあっても、なんとかうまく立ち回れている今の状況を崩すわけにはいかない。
「それに、距離を詰める手立てがないわけじゃない。ただ上手くいくかどうか分からないから、使うのを躊躇ってただけだ」
「あるのか? 手段が!」
 走りながら振り返った双太の目が輝いている。
 依瑠華は不敵に微笑む。
「ああ。試してみるか?」
「僅かでも可能性があるならやってくれ!」
「それならそうしよう。失敗しても文句は言うなよ?」
 言いながら依瑠華は両手の掌に炎の玉を生み出す。直径十センチ程度の小さな火球だ。
 その火球をどうするか、双太と風鈴にはなんとなく予想がついた。
「……え、依瑠華さん……。まさか……」
「なんだ、珍しく察しが良いな双太よ。お前の予想通りだ」
 依瑠華は両手の火球を前を飛んでいるあかりに向かって投げた。
 その行動に双太は顔を青くした。
「アホかー!!」
 思わず叫び依瑠華の肩を掴んで、前後に激しく揺さぶる。
 急な揺れに依瑠華の顔を青くして、双太に落ち着くように促す。
「……お、おお、落ち着け……!」
「これが落ち着いてられるか! 俺は竹宮を助けたいって言ったんだぞ!? あんなもん当たったら死ぬだろうが! あかりの傍には咲桜もいるんだぞ!」
「……わ、私は竹宮あかり本体を狙ったんじゃない……!」
 双太の揺さぶり攻撃が終わり、依瑠華は呼吸を整えると、
「私が狙ったのは翼だ。追い付けないのなら、奴の動きを止めるしかないだろう。だが狙うにしては距離が遠すぎたし、確実に翼に当てる自信が無かったら使わなかったんだ」
「それなら、上沢の矢で狙う方法があっただろ」
 二人の視線が風鈴に向けられるが、風鈴はあっさりと否定した。
「無理ですよ。動きが直線だったり、止まっているものなら可能性はありますが、上下に大きく動く翼に当てるのは不可能です」
 三人が立ち止まってそう議論していると、

「ギャー!!」

 というあかりの悲鳴が聞こえてきた。
 その方向に視線を向けると、依瑠華の放った火球があかりの翼に直撃し、穴の開いた翼で飛べなくなったあかりが、そのまま地面に落下していくのが見えた。
「ほれ、行って来い。走れば翼の再生までに間に合うはずだ」
「ああ。サンキュー依瑠華さん」
 そう言って双太はあかりの方へと走っていく。
 そんな双太の背中を見送りながら、緊張感のある声で風鈴が呟く。
「大丈夫ですかね、錐崎くん」
「さあ。だが今は奴に賭けるしかない。お前や私では滅することしか出来んからな」
 魔人の憑依された人間を救うことが出来るのは、光の属性を持つ滅凶師だけだ。炎の依瑠華、風の風鈴が出来ない今、光の属性を持った双太に賭けることしか出来ない。
 それもついこの間滅凶師になったばかりの素人に、難易度の高い技でだ。
 言ってみれば、初めて包丁を握る相手に高級料理店で出されるフルコースメニューを、誰のアドバイスや手助けなしに作れ、と言われるようなものだ。そのレシピさえも存在していない状態でもある。
 依瑠華さえも今まで成功例を見たことがないし、依瑠華が今まで最強だと思っている光の滅凶師でさえ「不可能だ」と言って習得を諦めたのだ。
 依瑠華は帽子を深くかぶり直しながら、
「不思議なことに、私は双太に今まで誰にも寄せたことのない多大な期待を寄せている。私のいくつもの戦いの中で培われた直感が告げている。双太なら出来るとな」
 依瑠華は隣で不安そうな表情を浮かべている風鈴に言う。
「だからお前は祈っていろ。その矢を向ける相手が竹宮あかりではなく、彼女の中にいる魔人であることをな」

Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.32 )
日時: 2015/09/07 19:03
名前: レモン ◆R7p.UJM/qI (ID: 5oA1mSSW)

( `・ω・´)失礼します。初めまして。レモンと申します。

まだのんびりと読み進めている途中ですが、とてもカッコイイ作品ですね!出会えてよかったです。

今後ともぜひぜひがんばって下さいね。

Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.33 )
日時: 2015/09/08 00:21
名前: 凪乃 (ID: 4/G.K5v4)



 レモン様>


 コメントありがとうございます!

 読んでくださってありがとうございます! ゆっくりで大丈夫ですよw 割とスローペースなので、追いつかれるかもしれませんw
 いえいえ、そんなお言葉をいただけるほど大した作品じゃありませんよっ! でもありがとうございます!

 これからも更新頑張らせていただきますね

Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.34 )
日時: 2015/09/08 00:49
名前: 凪乃 (ID: 4/G.K5v4)



 双太たちが追いかける中、竹宮あかりという自分の肌に合う極上の器を乗っ取り、〝巫力〟という謎の力を持った少女を抱えながら、憑依型の魔人は低空飛行で空を飛んでいた。
 地面からはおよそ五十メートルから百メートルほど離れている。万が一にも滅凶師たちに追いつかれて、巫女の少女を落とさないように、すぐに着地できる低い高度で飛んでいるのだ。
 それに初めて翼を出して飛んだ、ということもあり、単に高い場所を飛ぶのが怖いというのも本音だった。
 だが滅凶師たちに追いつかれることはまずないだろう。
 翼で飛ぶことにあまり慣れている方ではないが、相手が足で走っている分にはまだ速度を緩めても追いつかれることはない。今はせいぜい六割程度の力しか出していない。それでも距離は徐々に開きつつある。
 しかし元が臆病な魔人は、何をしてくるか分からない以上、まだ気を緩めることは出来なかった。臆病な彼は、滅凶師たちを全て排除して初めて、安心できるのだ。
 まずは安全な場所へと行くのが先だ。
 それが結果的に滅凶師たちから逃げることにも繋がるだろう。もう少しいけば背の高い岩が連なり、入り組んだ地形に突入するはずだ。そこへ逃げ込めば、とりあえずは時間稼ぎも出来る。
 そんなことを考えながら、魔人は先ほど力を喰らおうとした時に、見えない壁のようなものに弾かれたことを思い出す。
「ったく、なんでこいつの力は喰えねーんだ? 見たところお守りっぽいモンを身につけてもいなさそうだし、巫女の力を喰らうには、何か手順でもあるっつーのかよ?」
 頭をがしがしと雑にかきながら、普段の竹宮あかりならば話さないであろう口調で独り言を呟く。
 彼は「巫女の力を喰らえば魔人として驚異的な力が手に入る」ということは知っているものの、一体何をどうすればいいかは分からない。このまま彼女の力を喰らえず放っておくと、知能の高い魔人に横取りされてしまう可能性も否めない。
 もしそうなってしまえば、力の弱い自分は太刀打ちできないし、臆病で死ぬのも嫌だから泣きながら彼女を差し出し、許しを乞うことになるだろう。いくら人間の身体を手に入れ、自分の力が増幅していても勝てる相手と勝てない相手がいる。
 そうなる前に、巫女の力を喰らう方法を見つけ出さねば。
 早く強大な力を手に入れたいという高揚感と、敵の脅威から逃げ出したいという焦燥感に駆られ、少しだけ速度を上げようとしたその時だった。

「アホかー!!」

 という叫び声が後ろから聞こえた。
 一瞬自分に向けられて言われたのかと思い、ビクッと肩を大きく震わせて驚く魔人。
 勢いよく振り返ると、自分を追いかけている滅凶師三人が何やら言い合っている風景が目に入り、自分に言われているものではないことを知り、ほっと胸を撫で下ろした。
「なんだ……俺に言ったんじゃないのか、驚かせやがって。しかしアイツら何やってんだ? 早く追いかけねーと友達の命が危ないってのに、言い争いなんかしてるヒマは……ん?」
 すると、三人の滅凶師がいた方向から、二つの赤い点が飛んでくるのが分かる。
 その距離が縮んでいくにつれ、点ではなく小さな火球だと認識出来るように鳴る。しかもその火球は真っ直ぐ迷うことなく自分に向かって飛んできている。
「な、なんじゃこりゃ!?」
 いきなり迫ってきた火球を交わすことが出来ず、目を閉じ棒立ちになって迫ってくるのを待つ魔人。だがいつまで経っても火球は自分の身体を焼き尽くすことはなかった。
 まさか方向が逸れた? と恐る恐る目を開ける魔人。
 自分の身体になんともないことを確認すると、額の汗を拭う仕草をして、
「ふぃー、焦らせやがって。なんだよ、ノーコンなのかよ」
 急に。
 自分の身体に重力が戻ってくる。
 急降下する自分の身体。何がどうなっているのか分からずテンパる魔人。ふと両の翼を見ると、きれいな穴が開いていた。どうやらあの火球は自分本体を狙ったものじゃなく、自分を逃がさないために翼を狙ったものようだ。
「ギャー!!」
 悲鳴とともに落下する魔人。巫女の少女は傷つけまいと、腕の中に抱え込んで少女の身体を守り、自分は背中から地面に激突する。
「いってぇ!!」
 今まで味わったことのない痛みに悶絶する魔人。膝立ち状態になって穴が開いた自分の翼を眺める。
「……ちくしょー、ど真ん中に綺麗に開いてやがる。こりゃ回復には時間かかりそうだぜ」
 魔人は舌打ち交じりにそう呟くと、
「だが、それを悠長に待ってはくれないよなあ?」
 まるで誰かに話しかけるような口調で、魔人はゆっくりと後ろを振り返る。
 そこには、さっきまで遥か後方にいたはずの滅凶師、錐崎双太がこちらを真っ直ぐに見据えながら立っていた。
「よう、追いついたぜ竹宮」
「今はそっちの名前じゃねーよ。忌々しい滅凶師が」


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