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- ルミエール・エグゾルシスト
- 日時: 2014/11/08 00:24
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
どうも、凪乃(なぎの)と申す者です。
今回は閲覧いただきありがとうございます。
発音しにくいタイトルですが、何卒よろしくお願いいたします。
タイトルはフランス語を使っております。『ルミエール』が光、『エグゾルシスト』は悪魔祓いという意味の『エグゾルシズム』を、悪魔祓いする人、ということで『エグゾルシスト』と少し変えちゃってます。
大体の意味としては『光の悪魔祓い』でしょうかね。
この作品には悪魔は出てきませんが、魔人が出てきます。
そしてそれを退治する『滅凶師(めっきょうし)』というものも出ます。
『滅凶師』と魔人の熱いバトルアクション! ——になる予定です。
出来るだけ個性的なキャラで、読者様に印象を与えるキャラを作っていきたいと思います!
では、応援? よろしくお願いしますっ!
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.15 )
- 日時: 2015/03/03 09:14
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
3
「えっと……竹宮、さん……?」
咲桜は突然話しかけてきた少女を見て、目を丸くした。
今日転校してきた、いわば今学校で一番注目を浴びるであろう少女が、自分みたいな特に目立つわけでもない生徒に話を掛けてきたら、それは驚くだろう。しかも彼女の座っている席には、彼女に話しを掛けてきたであろうクラスメートや他のクラスの生徒もいる。その生徒たちを放って自分に話し掛けてきたのだから尚更だ。
咲桜がきょとんとした表情を浮かべていると、転校生の竹宮あかりは、ぷっと吹き出して上品そうに手を口元に添えて笑って見せた。
「その顔可愛い。モテるでしょ?」
「えっ!? そ、そんなからかわないでよ……モテないし」
実際に告白なんてされたこともない。咲桜は自分がモテていないと思ってはいるものの、実際には告白されていないだけでそこそこの人気はあるのだ。ただ、近くにいつも双太がいるので、男子から声を掛けられないだけである。
咲桜が顔を赤くしながらあかりの言葉を否定すると、
「そうかなぁ? あたしが男子だったら、絶対に放っとかないんだけどな〜」
冗談めかすように笑顔で言うあかり。
余計に顔を赤くする咲桜。彼女としてもモテたくないわけではないのだが、振り向いてほしい相手に振り向かれないのなら、他の人からモテても意味が——。
「えっと……小野さん、だっけ? 名前間違ってたらごめんね?」
「ううん、合ってるよ。なんなら咲桜って呼んでくれてもいいし」
「じゃあそう呼ばせてもらおうかな」
あたしも名前で呼んでくれていいから、と笑顔で言うあかり。
常に笑顔を絶やさずに話し掛けてくれるその態度に、咲桜は気分が良かった。大抵初対面の人と話す時は誰だって顔が強張ったり、どこかぎこちなくなってしまうものだ。
だが、彼女は一切そんな様子がない。彼女のそんな柔らかな態度は少々人見知りな一面がある咲桜にとっては、とても助かることだった。
咲桜は向かいの、双太が座っていた場所に座るようにあかりに促した。双太はまだ帰って来ないし、帰って来たとしてもあかりに席を譲るだろう、幼馴染だからこそ出来る判断だ。
「それで、あかりちゃんは双太に用があるの?」
「ん? どっちかっていうと、二人に……かな?」
「わたしにも?」
再びきょとんとする咲桜。
しかし双太と咲桜は学校でもそんなに目立つ存在ではない。そんな自分たちに一体何の用だろう——いや、なんとなくの想像が出来てしまう。
同学年の男女が一緒に昼食を摂ったり、仲良くいればまず質問されるだろう。
「……あのさ小野さんと、その……」
あかりが言いにくそうに視線を泳がせる。やはり、男女に付き合っているかどうか、というのは聞きにくいのだろうか。
咲桜がそう思っていると、
「ごめん、男の子の方の名前なんだっけ?」
咲桜が思わずずっこけそうになった。転校初日で名前を覚えるのは難しいだろうが、さっきほどから引き継いできた真剣な空気が一瞬で台無しになった。
咲桜が素直に名前を教えてあげると、あかりは思い出した、というような表情を見せた。
「じゃあ仕切り直して」
こほんと咳払いをするあかり。
「小野さんと錐崎くんって、仲良いよね?」
「……うん、まあ」
あかりは真っ直ぐに咲桜を見つめて問う。
「間違ってたらごめんだけど……二人ってさ、もしかして幼馴染とかなにかかな?」
「だからわたしと双太は……って、え?」
思わず咲桜はいつもと同じ言葉を言いそうになって、途中で言葉を止めてしまった。
それであかりがしまった、というように、
「え、違った? ごめん!」
「いや……合ってる、けど……。初めて言われた。幼馴染なのかって」
咲桜としては初めてのことだった。
いや、おそらく双太も初めてだろう。高校生で男女が仲良くいたら、普通は付き合っているものだと思われるだろう。だが初対面で、その二人が幼馴染だと見抜けるものは、そうそういないと思う。
「……すごい……すごいよあかりちゃん! どうして分かったの!?」
思わず身を乗り出して聞いてくる咲桜にあかりは戸惑ったような表情を浮かべた。それから、こめかみに人差し指を当てて、考えるような仕草を見せる。
「うーん……なんというか、あたしの見方では二人は付き合っている、というよりは、姉弟みたいに見えたから、かな?」
あかりの見解を聞いて、咲桜は思わず笑ってしまう。
「あかりちゃんからはそう見えるんだ。でも……」
咲桜はふと窓に移る青い空に視線を移す。
「……弟っぽいかもね……わたしの前じゃ」
だからなのかもしれない。
だから、咲桜は双太の傍にいたいのかもしれない。世話が焼けるから。一人じゃ危なっかしいから。いいや、きっとそれだけが理由じゃないと思う。今まで培ってきた彼との十五年の月日——その中で芽生えた、きっと初めてで最後の感情——。
双太の傍にいてあげたい、という気持ちと、双太に傍にいてほしい——この二つが重なり合って、今の一番近くて付かず離れずの関係を保っている。
もう一歩、もう一歩だけ踏み出してみたい。
でも今の関係が壊れるのが怖い。
だから今のままでいい。今はまだ、この距離が愛しい。この距離が大好き。
だが、いつかはこの気持ちも伝えなければいけない。そう感じている。このままにしておくのは、自分もきっと辛いから。
「いいなあ」
あかりが頬杖をつき、咲桜を見つめながら呟く。
「何が?」
咲桜が首を傾げる。
すると、あかりはにこっと笑顔を見せて、
「二人みたいな、お互いがお互いを信頼し合っている関係」
「……うん」
今はただ、一緒にいたい。一緒にいられればいい。
弟みたいで、幼馴染で、大好きで仕方がないあの危なっかしい男の子と——。
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.16 )
- 日時: 2015/03/09 18:35
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
4
「違うよ」
突然、眼鏡を掛けた知的な少年から出された問いかけに、双太は首を左右に振りながら短く答えた。
「正しくは、半分正解で半分外れってとこだけどな」
「……半分?」
知的な少年は双太の言葉に首を傾げる。
人目を気にしてか、双太は周りを見渡している。周りに生徒の数がほとんどいないことを確認すると、それでもいつもよりは小さめな声で少年に説明する。滅凶師や魔人などといった話をしているのを、他の生徒に聞かれたくないのだろう。
「滅凶師なのは俺だけ。咲桜は違う。アイツはただの一般人だ」
まあ魔人に襲われはしたけど、という言葉を心の中で付け加える。ここでそれを言えば少しややこしくなりそうだし、襲われた理由を聞かれてもいまいち双太も分かっていないので、聞かれても説明できないのだ。
答えを聞いた知的な少年は、優しげな微笑を浮かべて眼鏡を少しだけ上げる。
「そうですか。にしても、随分と簡単に答えてくれましたね?」
双太は頭をがしがしと荒っぽくかきながら、
「まあな。お前がそう聞くってことは、お前も滅凶師なんだろ? だったら、俺が滅凶師だって知っても、お前が俺を襲うことはない。違うか?」
「……僕が、滅凶師ではなく魔人だという可能性は、考えなかったんですか?」
言われて双太はさっとファイティングポーズを取る。たとえ彼が魔人であってもここで戦うつもりはないだろうが、素人の双太を殺すことは簡単だろう。簡単にやられないための、一応の身構えは取っておく。
そんな双太を見て、少年はくすっと笑みを浮かべた。
「ご安心を。僕は滅凶師ですよ。それにあなたと戦うつもりもありません。ただ知りたかったんです」
「……そういや、今気付いたけど……お前は、なんで俺と咲桜が滅凶師だと思ったんだ?」
滅凶師かどうか聞かれた時はあまり気にはしなかったが、今気付けば双太たちが滅凶師だと思うこと自体しないはずだ。修行中二依瑠華にちらっと言われたが、魔力などを探索してその者が滅凶師かどうかを調べることも出来るらしいが、双太は素人でそういう頭のよさそうなことは出来そうにない、という理由で詳しくは教えられなかった。今思えば、相当失礼な考えだ。
双太の質問に知的な少年は眼鏡をくいっと上げて、
「実はお二人が登校してくる時の会話を聞いてしまいまして……盗み聞きするつもりはなかったのですが。お二人の声のトーンがいつもと変わらないような気がして。もう少し声を小さくして話した方が良いかと」
気付かなかった。
確かに意識して声を抑えた憶えはない。それを言われれば咲桜もそうだったろう。夜の出来事で疲れて、そのあたりの意識が弱かったのかもしれない。これからは気を付けよう、と双太は心に誓うと同時、後で咲桜にも言っておこう、と思った。
「お二人のお話を聞いて、僕は少し嬉しかったんですよ」
「嬉しかった?」
その意味が分からず、双太は聞き返す。少年はこくりと分かりやすく頷いて、微笑を浮かべたまま続ける。
「ええ。滅凶師など、世間に知られていない存在。僕は今まで、自分以外の滅凶師とほとんど会ったことがありませんので、同じ学校で同級生の、それも同性の方が僕と同じ滅凶師……もしかしたら、仲良くなれるかもと思いまして」
少年は嘘のない言葉に双太も思わず笑みを浮かべてしまう。
しかし引っかかる点が一つだけあった。ほとんど会ったことがない、ということは、最低でも一人には会っているんじゃないだろうか、と。
だが、ただその人が異性であったり、年が離れていたりして彼があまり距離を縮められなかっただけだろう、と解釈してその引っかかりは口にしないようにしておく。
「つっても、俺は滅凶師になりたてだぜ?」
「期間は関係ありませんよ。よろしければ、僕と友達になってくださいませんか?」
すっと握手を求めるように手を差し出してくる少年。
他の滅凶師とつるむな、とは依瑠華から忠告されたわけでもないので、双太としてはここで彼と仲良くなる分は特に問題はない。そもそも、依瑠華もこうも早く他の滅凶師と会うとは思っていなかっただろうから、そう言ったのだろうが。
「……友達になんのはいいけどさ、その前に大事なこと聞いてないけど?」
双太が言いながら少年を見る。
少年はなんだろう、という風に首を傾げると、やがて思い至ったかのように目を丸くすると、顔を一瞬伏せて、微笑を浮かべながらもう一度顔を上げた。
「上沢風鈴(かみさわふうりん)です。よろしくお願いします」
「んじゃ、こっちも改めて。錐崎双太だ。よろしくな、上沢」
こちらこそ、と二人は握手をする。
すると、昼休み終了五分前を告げるチャイムが校内に響き渡る。そのチャイムに、双太はげ、とまずそうな表情を浮かべた。
そもそも双太は買い忘れた飲み物を買おうとしていたところ、風鈴に呼び止められていたのだ。手短に、ということだったがなんだかんだで数十分ほど話し込んでしまったらしい。
「すいませんでした、長時間呼び止めてしまって」
「ん、ああ気にするなよ。そういやさ、今日の放課後、俺を滅凶師にした人のとこに咲桜と行くんだけど……お前も来るか?」
思わぬ誘いに、風鈴は嬉しそうな表情を一瞬だけ浮かべるが、すぐに申し訳なさそうな顔に変えて、
「折角のお誘い嬉しいんですが、今日は私用がありまして。またの機会に行かせていただきます」
そうか、と少し名残惜しい気分になる双太。するといいことを思いついたかのような明るい顔をして、風鈴の目の前に立つと、自身のスマートフォンの画面を見せる。
その画面は、自分の電話番号とメールアドレスが記載されていた。
「いつでも連絡してこいよ」
「……あ……ありがとうございます!」
風鈴は今日一番の笑顔を浮かべて、自分のスマートフォンに双太の電話番号とメールアドレスを登録する。
結局、双太は飲み物を買うこともなく、昼飯に一切手を付けることなく、空腹のまま午後の授業を乗り越えなければならなくなった。
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.17 )
- 日時: 2015/03/17 20:38
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
5
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、教室の生徒たちはあとは終礼だけとなった学校に安堵し、伸びをしていた。他には部活に速く行くため、鞄に教科書やノートを急いで詰めている生徒もいた。
十分足らずの終礼も終え、生徒たちは次々と机から立ち上がり教室を出て行く。
朝の自己紹介から注目の的となっていた転校生の竹宮あかりは、駆け寄るように咲桜に近づくと、
「じゃあね、咲桜ちゃん! また明日!」
「うん、また明日。バイバイあかりちゃん」
大きく手を振りながら、教室の外で待っていた仲良くなったクラスメートと合流するあかり。その様子を見て、双太は驚いたように目を丸くしていた。
「……お前と竹宮って、仲良くなったのか?」
「うん。双太がお昼休みに飲み物買いに行ってる時に。結局買ってこなかったけど、何かあったの?」
咲桜がくすっと笑いながら問う咲桜。双太は目線を逸らしながら、色々あってな、と話を濁した。別に風鈴のことを言っても問題はないと思うが、どうせなら風鈴が一緒にいる時にまとめて紹介した方がいだろう。
帰り支度を済ませた双太は鞄を持ちながら立ち上がると、隣で立って待っていた咲桜と一緒に教室を出る。
「さて、依瑠華さんとこに行くか」
「滅凶師と魔人——少なくとも、この二つについては教えてもらわないとね」
咲桜が自分の指を折りながら言う。
そう、双太は咲桜を助けるために滅凶師となった。だが、双太が生き返る時の制限時間の都合で、双太自身も依瑠華から滅凶師や魔人については詳しく聞かされていなかった。
今日はその説明をしてくれる、ということなのだが、双太にとって心配なのは依瑠華と出会ったあのお悩み相談室『いるか屋』の状態である。
双太が初めて訪問した時には、扉の前に積まれた本のせいで、奥の部屋から出られなくなってしまっていた。今日はそんなことにならず、中の掃除とかをしてくれていればいいのだが——あの人の性格からして、それはしていないだろうなあ、と溜息をつく。
「でも『いるか屋』なんてお店、あったかなあ? 双太曰く、目立つんだよね?」
「ああ、カラフルだったからな。逆にあれを見つけるなって方が困難だと思うぜ?」
「ふーん……でも、依瑠華さんってカッコいいよねぇ。なんかこう、理想の女性って感じがするよ!」
咲桜の記憶にあるのは、助けに来た依瑠華であるため、こうなってしまうのは仕方がないが、綺麗好きである咲桜が『いるか屋』の惨状を見たらどうなるだろう。一応暴走しないように、双太はあらかじめ釘を打っておくことにした。
「……まあ一応言っとくけど、店内を見ても驚かないようにな」
「……どういう意味?」
首を傾げ、問いかける咲桜に双太は答えなかった。
理想の女性、如月依瑠華の店内がすさまじく汚いなど、咲桜に言っても信じないだろう。こうなれば見せた方が早い。長年の付き合いで、双太が導き出した結果だ。
しばらく歩いていると、目立つとかそういう問題じゃないカラフルな看板が目に付いた。双太が以前訪れた時よりも看板がグレードアップしている。妙なところにこだわるなあ、と双太が呆れていると、隣の咲桜もリアクションに困ったのか、苦笑いを浮かべてしまっている。
「……たしかに目立つね」
「……だろ? 目に入らない方がおかしいだろ」
双太と咲桜が高難易度のリアクション看板を突破し、ドアの前に立つ。ドアノブを握りしめた双太は、もう一度だけ咲桜に忠告した。
「……いいか? とてつもないことになってるからな。本当に驚くなよ?」
「大袈裟だってば。多少部屋が汚いくらいじゃ、わたしもそこまで気になんないし」
冗談めかすように咲桜は答える。
双太は意を決してドアを開け放った。せめて、部屋が片付けられていますように、という願いを込めて——。
——だが、現実とはなんとも残酷なものだった。
双太が来た時より、散らかっている本の冊数が増えており、以前は辛うじてあった足の踏み場が今はもうない。床には看板のグレードアップに使用したと思われる、赤や青のマジックペンが転がっている。
部屋の惨状に溜息をつき、額に手を当てる双太。一方で咲桜はあまりの惨状に言葉を失っていた。理想の女性像である如月依瑠華が崩れていく音が、なんとなく聞こえた気がした。
「……な、ななな……!」
咲桜がやっとの思いで紡いだ言葉がこれだった。そうなってしまう気持ちは、さほど綺麗好きでもない双太でも分かる。綺麗好きな彼女なら余計だ。
この状態では奥の部屋に行くのさえも困難な状態なのだが、入り口付近での会話に気付いたのか、奥の部屋の扉が開く。扉が開くとは思えないような、がこっ、という重たい音を響かせながら。
「……おお、双太と咲桜か。よく来たな」
奥の部屋から出て来たのは依瑠華だった。しかし奥の部屋から出ようとしない。いや、もしくは足の踏み場がなくて出られないのか。
「……依瑠華さん、片付けろよ」
双太が溜息交じりに言うと、依瑠華は明るく笑い飛ばしながら、
「いやぁ、ついつい調べごとに夢中になってしまってな。昔から、そういう性質(たち)なんだ。まあ気にせず入ってくれ。奥の部屋はまあ……」
ちらっと部屋の中を見て、
「まだ片付いてる方だから」
「そっちも散らかってんのかいっ!!」
思わずツッコミを入れてしまう双太。
すると、今まで黙っていた咲桜が身体を震わせながら、
「……ましょう……」
何事か呟いた。
双太と依瑠華が聞き返すより速く、咲桜は叫ぶのと同じような声のトーンで言った。
「片付けましょう! 今すぐに!」
双太は、やっぱりこうなったか、と小さく溜息をついた。
咲桜の剣幕に驚いた依瑠華が、彼女をなだめるように、
「ま、まあまあ落ち着け。とりあえず、今は滅凶師と魔人の説明をだな——」
「……あん?」
「なんでもありませんっ!」
燃え盛るオーラを纏っている(ように見える)咲桜に睨まれ、思わず敬語になって返事をしてしまう依瑠華。本来ならこうなるはずじゃなかったのだが、汚い部屋を見ると咲桜は狂人的になってしまう。何度か双太も経験している。
掃除自体は咲桜の効率的なやり方と速度で二時間ほどで終わった。散々働かされた双太と依瑠華は椅子に腰を掛けて、乱れた息を整えていた。咲桜は綺麗になった部屋を見渡して、満足そうに満面の笑みを浮かべていた。
「……依瑠華さん、俺たち何しに来たんだっけ……」
「……知らん。お前たちが来た目的など知るか……」
綺麗になった部屋の真ん中に机を設置し、椅子を三つ置いて双太と咲桜が並んで座り、その向かいに依瑠華が座る。
掃除で使い果たした依瑠華は、徐々に体力が戻ってきたのか、背筋を正して二人を真っ直ぐに見据える。
「さて、では滅凶師と魔人の説明に移ろうと思うが、その前に双太」
依瑠華が双太に視線を向ける。
「お前には一度説明したが、咲桜には説明してなかったので、生界と亡界の説明をするぞ? 聞いた話だから退屈だと思うが……辛抱してくれ」
「ああ、いいぜ。ぶっちゃけ俺も忘れたから」
「はっはっはっ。あとでお仕置きだな」
悪びれもせず、まるで誇らしく告げる双太に依瑠華は乾いた笑みとともにそう言った。彼女の声こそ笑っていたが、目と口は一切笑っていなかった。
「——では、説明を始めようか。我らが住まう生界と、魔の世界である亡界の」
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.18 )
- 日時: 2015/03/31 20:33
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
6
椅子に座った依瑠華は、足を組んでおり、その膝の上に指を組み合った両手を添えている。ただそれだけなのに、その姿から気品が漂っていた。
依瑠華の凛とした声音で、滅凶師と魔人についての説明が始まった。
「まず『生界』の説明からだ。簡単に言うと、私たちが今住んでいるこの地球全体が『生界』だ。書いて字の通り、生きる者が住まう世界だ」
その辺の説明は理解したのか咲桜はこくこくと頷いていた。一方の双太はパンを食べながら聞いていた。おそらくは昼食に食べ損なった物だろうが、あとで本当にお仕置きが必要だな、と依瑠華は心の中で思う。
「次は『亡界』だが……双太。お前本当に何も憶えてないのか?」
もぐもぐと口を動かしていた双太は、口の中の物をごくりと飲み干すと、うーん、と短く唸ってから、腕を組んで難しい表情を作る。
「……全くっていうと嘘になるな」
「何を憶えている?」
焦らすような解答をする双太に依瑠華が問いかける。憶えている、といってもうろ覚えなのか眉間にしわを寄せながら、更に低く唸りながら考え込む。
「……『善の世』と……あともう一個。なんかあったな」
「ほう。それを憶えていたか」
依瑠華は感心したような表情を見せると、視線を咲桜へと移す。
「『亡界』は死者の世界。魔人たちが住まう世界だが、『亡界』は二つの世界がある。一つは双太の言った『善の世』だ。お前たちで言うところの天国といったところか。生前に正しき道を歩んできた者が行き着く世界だ」
お前が死んだら『善の世』行きだろう、と咲桜を指さして答える依瑠華。一方の咲桜はメモ帳にメモしていっている。どうやら忘れてしまって同じ質問をしないようにしているらしい。変なところでマメな性格だ。
「もう一つは『邪の世』といって、こっちが生前の罪深き者や魔人が住まう世界だ。まあ付け加えるとすれば、その『邪の世』に送られた人間が魔人になる、ということなのだがな」
「ちょっと待てよ!」
それを聞いて反応したのは双太だった。それが意外だったのか、依瑠華は目を丸くして双太を見つめる。
「じゃあ、夕べ咲桜を襲った魔人もそうだったのか? 人っつーより、犬みてーだったけど……」
「落ち着け。全てがそうだというわけじゃない。そうなる可能性もあるということだ。だが、知能が低く形も異形と呼べるものなら人が変わったパターンだ。強力な力を持ち、形も人に近く知能も高ければ、そいつは元から魔人だ」
依瑠華の言葉に難しそうな表情を作った双太は、ゆっくりと座りながら『難しいんだな』と呟いた。複雑な説明をしてしまったか、と依瑠華が小さく息を吐くと、
「……つまり、『亡界』は死者の世界で『善の世』と『邪の世』に分かれてる。『善の世』は天国だけど、『邪の世』は悪い人や魔人がいる。魔人は化け物みたいな者は、生前の罪深い人が変化した姿。それ以外は元から魔人として生まれた……ってことでいいんですよね、依瑠華さん?」
「……ん? ああ……そうだが……」
急に小さく挙手して咲桜がメモ帳に記したことを纏めて説明した。それを聞いた双太が驚いたように咲桜を見ながら、
「今のスゲーな。依瑠華さんより分かりやすい」
「え、そ、そう?」
メモ帳を覗き込む双太。自然に双太と距離が近くなってしまい、咲桜は頬を赤く染めるが、依瑠華がわざとらしく咳払いをして注目を再び向けさせた。
双太と咲桜が依瑠華へと視線を向けると、足を組みかえて説明を再開する。
「『生界』と『亡界』の説明は以上だ。次は滅凶師だが……双太はどんな風に理解している?」
再び指名された双太は嫌そうな顔をした。学校の授業で先生に宛てられた時と同じ表情をした双太に、咲桜が深い溜息をついた。双太は頭をかきながら、実に答えづらそうな表情をすると、
「俺だって、まともな説明受けてないんだぞ? 分かんねーよ」
「だからこそ聞いている。お前は、滅凶師をどういうものだと思っている?」
依瑠華に真っ直ぐ見つめられて、双太は頭の中で言葉を整理しながら答える。
「……悪霊退治、みたいな」
「ふむ。あながち間違ってはいない。そうだな、双太の言う通り魔人を滅するのが私たち、滅凶師の役目だ」
子供っぽい双太の答えに依瑠華は頷いた。
魔人というのは『亡界』で現れる、いわば悪霊のようなもので、それが『生界』に逃げ込んだ際に退治する、というのが滅凶師の主な役目だ。だが、そもそも魔人が『生界』に侵入する事態などそうそう起こることではないし、そう簡単に起こってはならないものでもあった。
『亡界』の『善の世』に魔人を滅する滅凶師の団体が組織されている。その名も『滅凶師生界協会(めっきょうしせいかいきょうかい)』。腕利きの滅凶師が集った、魔人討伐の専門機関だ。
「一般的な滅凶師はそこに所属している。が、もちろん例外はある。そういう組織が苦手な者は協会にいないし、お前のように突如として滅凶師になった者も協会にはいない。だが、一応知っておけ、世話になることもあるかもしれんからな」
それを聞いて上沢もそうなのかな、と学校で知り合った滅凶師——上沢風鈴を双太は思い出していた。なんとなくだが、そういう協会に入っていなさそうだし、入っていたらそれはそれで何か言うかもしれない。彼はそういう性格のように思えた。
双太が一人で思案していると、咲桜が手を挙げて依瑠華に質問する。
「じゃあ、この前魔人がいたのは、その協会の人が取り逃がしちゃったってことですか?」
弱かったとはいえ、『亡界』の魔人が人間に憑依して咲桜に危害を加えたことは間違いない。それでも協会の人間が動いていたような気配はなかったし、そもそも侵入したこと自体把握していたのか、そこも疑問点である。
「本来ならば、あの程度の魔人を取り逃がすことなどないはずだが……向こうで何かあったのか?」
顎に手を添えて考える依瑠華。
しかし分からないことは考えても分からない。依瑠華は首を左右に振ると、説明を続けた。
「まあ滅凶師については以上だ。次は魔人だが……その前に、結構駆け足の説明だが、平気か?」
心配そうな表情で問いかける依瑠華に、咲桜は勢いよく手を挙げて、
「わたしなら平気でーす!」
「俺もいいぜ。半分以上理解出来てないけどな」
「分かった。ならこのままでいこう」
メモ帳に記入している咲桜は心配していなかったが、双太は案の定理解できていなかったらしい。先ほどの言葉も、二人に、というよりは双太に向けてのものだったが、彼がいいというのだからこのままのペースでいこう。
「魔人は大きく分けて三種いる。うち二つは、先ほどちらっと言ったがな」
「知能の高い人に近いのと、知能の低い化け物寄りのですよね?」
咲桜の答えに依瑠華は腕を組んで小さく頷いた。隣の双太はそんなの言ってたなー、という感じの表情をしており、相変わらず依瑠華の期待を裏切ってくれない。
「もう一つは咲桜を襲った魔人だ。知能はそれほど高くはないが低くもない。力でいえばかなり脆弱だが、厄介な能力を持っている」
厄介な能力? と双太と咲桜が首を傾げる。
二人の視線を浴びて、依瑠華は今までで一番の真剣な表情を作って、二人を見つめる。その眼差しは射抜くように鋭かった。
「他者に憑依する。これは滅凶師にも憑依する可能性がある、かなり厄介なものだ」
「はー、疲れたぁー!」
帰宅し自分の部屋に戻った竹宮あかりは、ベッドの上に鞄を放り投げると、そのままうつ伏せでベッドに倒れ込む。
「でも割と馴染めそうなクラスで良かったなぁー! 友達も出来たし!」
彼女の表情はとても嬉しそうなものだった。初めての転校ということもあって、高校生ともなれば自然とグループが出来てしまっている。そこに馴染める自信がなかったようで、その不安がなくなってほっとしていた。
すると、
『おう、帰ったのかあかり』
「うん、ただいま。ちゃんと良い子にしてたー?」
あかり以外誰もいない部屋に響く声に返事をするあかり。その声の主は机の引き出しの中から出て来た。全長数センチほどの黒い蛇のような生き物だった。その生き物は空を泳いで、あかりが立てておいた人差し指に巻きつく。
『良かったぜ! お前が学校に馴染めたようで』
「心配してくれてありがと。あたしはコミュ力高いから平気だよ」
『とか言って、今朝出る前はかなり不安がってたじゃねーか』
「そんなことないですよーだ」
明らかに異常な光景である。
見たことのない生き物と人語で会話をしている。普通の人が見ればおかしいと思うのが普通だろう。だが、あかりはそれを気にすることもなく、あるいは自室で誰にも見られないから気にする必要もなく、その異形の生物と楽しげに会話をしている。
その生物の正体を知ってか知らずか——。
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.19 )
- 日時: 2015/04/27 02:30
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
7
「……さて、以上で『生界』と『亡界』、滅凶師、魔人の説明を終えるが……何か質問はあるか?」
説明を終えた依瑠華は、椅子の上で思い切り伸びをしながら向かいに座る双太と咲桜を交互に見遣る。双太は、ずっと話を聞くだけでも疲れたのか、あるいはただ眠いだけか、大きな欠伸をこぼした。
そんな双太の隣に座る咲桜は、説明中懸命に記入していたメモ帳を見つめながら、分からないところがないか確認していく。
「俺は別にいいぜ」
「ああ。もとよりお前から質問が来るとは思っていない。予想通りだ」
そう言われて思わず口を閉じてしまう双太。
そもそも双太は頭より身体で憶えるタイプなので、こういうやり方はどうも得意じゃない。だから勉強より、体育の成績の方が僅かに高い。
咲桜もこくりと頷くと、メモ帳を鞄の中にしまう。
「わたしも大丈夫です。ありがとうございました!」
ぺこっと小さくお辞儀をする咲桜。
すると依瑠華は思い出したように、ポケットの中へと手を忍ばせた。
「そういえば咲桜。お前に渡しておくものがある」
首を傾げて依瑠華が取り出したものを丁寧に両手で受け取る咲桜。
彼女の掌に置かれたものは、真ん丸な赤い水晶がついたネックレスのようなものだ。一見してアクセサリーショップなどに売っているようなものではないと分かってしまう、どこか現実離れした空気を纏った代物だった。
「……これは?」
咲桜が依瑠華に尋ねると、依瑠華はしまった、というような顔をして咲桜に渡したものをそそくさと回収する。
「……すまん、間違えた。これだ」
赤い水晶の付いたネックレスを自分の傍に置いて、さっきとは別のものを咲桜に渡す。
これもネックレス状のもので、さっきとは違う銀色のリングがバツ印に交差しているものが先端についている。こちらも現実離れした空気を纏っており、滅凶師関係のものであることが分かる。
「依瑠華さん、これはなんだ? ついでにさっきのも」
双太が尋ねると、依瑠華は赤い水晶の付いたネックレスを自分の首に提げる。
「それは治癒と防御を同時にこなせる道具だ。名前は『聖女の聖域(せいじょのせいいき)』という。傷の回復と結界を張ることが可能なものだ。護身用に持っておけ」
「で、でも……上手く使える自信が……!」
心配そうな面持ちで言いながら、受け取ったものを返そうとする咲桜。だが、依瑠華はそれを手を出して制した。
「いいんだ。どちらにしろ、私が持っていても上手く使えない」
「……どういうことですか?」
咲桜が首を傾げると、依瑠華は溜息をつきながら腕を組んだ。そして困ったものを見るような表情で、咲桜の両手に収まったネックレスを見つめる。
「どういうわけか、それは滅凶師の魔力に反応しないんだ。何度試しても無理だった。私はもちろん、双太にも使えんだろう」
「だったら、尚更わたしは使えないんじゃ……」
咲桜は滅凶師や魔人と関わった、というだけで普通の人間だ。滅凶師でも扱えないものを、普通の人間である咲桜が使える可能性は低いだろう。
「いや、もしかしたらお前には使えるかもしれない。それにお前には、魔力とは似て非なる力が宿っているからな」
依瑠華の言葉で、咲桜は思い出した。
そういえば、自分を魔人たちが襲った理由はそれが原因だったじゃないか。男は言っていた。『君には魔力に似た特別な力がある』と。もしかしたら依瑠華は、それのことを言っているのか。
「……知ってるんですか、その力のこと」
聞かれるとは思っていなかったのか、依瑠華は一瞬だけ驚いたような表情をして、腕を組んだまま低い唸り声を上げる。
「厳密に言えば分からない。未だ不明な部分が多いしな。だが、もしかしたらという答えはある」
「それでいいです」
咲桜は頷いてそう言った。さっきの依瑠華の話は聞いているのかどうか怪しかった双太だが、今度の話は真面目な表情になって依瑠華の言葉を待っている。
「……多分だが、咲桜の身体に宿っているのは〝巫力(ふりょく)〟だ」
「……〝ふりょく〟? 浮くのか?」
双太の言葉に、そっちの浮力じゃない、と依瑠華のツッコミが入る。
「巫女の力だ。大分昔の話だが、『生界』には三つの種族が世界ぼバランスを守っていた、という話がある」
一つは魔人。村に現れては暴虐の限りを尽くし、全てのものを壊し、奪い、殺していく悪の権化。
二つ目は滅凶師。その魔人からすべてを守るべく、魔人を退治する人間たち。昔は滅凶師としての才を持って生まれてくる者が多かったようだ。
そして三つ目が——巫女という存在。
「巫女は言ってしまえば強力な魔人をおびき寄せるための生贄だったらしい」
「い、生贄!?」
依瑠華の言葉に双太と咲桜が同時に声を上げる。
「ああ。弱小な魔人はそれほど脅威とされていなかったが、強力な魔人は大きな巫女としての力——いわゆる〝巫力〟を持った者に惹かれるらしくてな。その巫女を魔人をおびき寄せるための餌にして、おびき出された魔人を滅凶師が狩る、という方法を取っていたらしい」
もちろん巫女も単なる〝餌〟なので、魔人が巫女を食う前に滅凶師が救い出していたらしいが、今となっては背筋がぞっとするような話しである。もし失敗すれば、生贄として出された巫女は食われてしまうのだから。
「なんか、聞いててあんま気持ちのいい話じゃないな」
「今となってはただの昔話だがな。で、話をその道具に戻すと、当時の巫女の力を集約したのが、その『聖女の聖域』というわけだ。巫女は〝巫力〟を使って怪我の治癒や守るための結界を張っていたらしいからな。つまり、魔人を武を以って退けるのが滅凶師で、智を以って退けるのが巫女だ」
咲桜は両手に収まったネックレスに視線を落とした。
これがあれば——、
「これがあれば、守れますか? わたしの大事なもの、大事な人を」
咲桜の強い瞳が真っ直ぐ依瑠華を見据える。依瑠華はその視線を真正面から受け止めて、頬杖をつきながらにやりと笑みを浮かべた。
「——ああ、守れるさ。お前にその強い気持ちがあるならな」
ぎゅっと、ネックレスを強く握りしめる。
これで今度こそ、今度は自分が守ってあげられる。大事なものを、大事な人——いつまでも傍にいてほしいと思っている人を。
「そんで、さっき咲桜に渡し間違えたそれはなんなんだよ? どうせ滅凶師関係のモンなんだろ?」
双太が依瑠華の首から提げられている赤い水晶のネックレスを指さしながら尋ねる。
依瑠華はどこか懐かしむような表情で、赤い水晶をすくい上げるように手の平に乗せた。
「大事な物だ。とても、な。すごく大事な人にもらったものなんだ」
「……そっか」
依瑠華の答えを聞くと、その人が依瑠華にとってどういう人かを双太は聞かなかった。それ以上言及するのはよくない、と双太なりの配慮なのだろう。普段は馬鹿だが、そういうところは気が利いたりするのが、彼の良いところだ。
「んじゃ、帰るかな。今日はありがとな依瑠華さん!」
気が付けば外は少し暗くなっていた。時刻は七時前。咲桜はともかく、二日続くと双太の妹二人は面倒なことになりそうだ。
双太は軽く手を振って、咲桜は礼儀正しくお辞儀をしながら『いるか屋』を後にする。店の前まで出て、二人を見送った依瑠華は、背中を見つめながらぽつりと呟いた。
「……咲桜から僅かな魔力の残滓を感じる……面倒なことに巻き込まれないといいが……」
帽子を深く被り直した依瑠華は、そのまま『いるか屋』の中へと戻っていく。
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