コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ルミエール・エグゾルシスト
- 日時: 2014/11/08 00:24
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
どうも、凪乃(なぎの)と申す者です。
今回は閲覧いただきありがとうございます。
発音しにくいタイトルですが、何卒よろしくお願いいたします。
タイトルはフランス語を使っております。『ルミエール』が光、『エグゾルシスト』は悪魔祓いという意味の『エグゾルシズム』を、悪魔祓いする人、ということで『エグゾルシスト』と少し変えちゃってます。
大体の意味としては『光の悪魔祓い』でしょうかね。
この作品には悪魔は出てきませんが、魔人が出てきます。
そしてそれを退治する『滅凶師(めっきょうし)』というものも出ます。
『滅凶師』と魔人の熱いバトルアクション! ——になる予定です。
出来るだけ個性的なキャラで、読者様に印象を与えるキャラを作っていきたいと思います!
では、応援? よろしくお願いしますっ!
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.10 )
- 日時: 2015/01/27 23:06
- 名前: ★ (ID: hodsxr1W)
初めまして!★(くろぼし)っていいます!
題名を見た瞬間に…ビビッ!ときました!
すすす…素晴らしいです!すごいです!めっちゃ引き込まれますよ!?これ!
おとと…つい敬語が乱れてしまいました…
双太くんかっこよすぎです!速攻で大事とか言える…すごい魅力的なキャラですね!主人公って感じです!
幼馴染みという設定も引き込まれますね〜死ねないとか「待たせたな」の時ヤバイっす…男性キャラってあまり好きになることがこのコメディライトで読んでいてないんですが…これは例外ですね!
本当に大好きです!この作品!
是非とも続けて貰いたいです!続きが気になるので(笑)
てて…なにいってんだ…すいません!図々しくて…でも本当に大好きですよ!これは本当です!
えと…その…更新待っております!
もしよければまた覗かせてください!
では…長々とすみません!応援してます!
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.11 )
- 日時: 2015/02/03 19:42
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
★さん>
コメントありがとうございます^^
題名は結構悩みましたねw
でもその甲斐あって中々いい題名がつけられたのではないか、と少し自信がありますw それを褒めていただきうれしいですっ!
双太はもうテンプレ主人公をイメージしました。「主人公とはなにか?」と聞かれたら答えに出てくる感じで。主人公の模範解答が彼です。
なので、カッコいいセリフとかクサい言葉もすっと言えちゃうんですよねぇw その真っ直ぐさに咲桜ちゃんも惹かれているんだと思います。
ありがとうございます! わたしも書いてる時って男キャラはあんまり好きにならないんですが、彼はなんかキーボードを打つ手がとまらないんですよw わたし自身も彼はお気に入りですね。
はい、続けさせてもらいますよ^^
双太や咲桜に負けないくらい個性的なキャラや、魅力的なキャラもバンバン放出していきたいと思います。ちなみにこの章ではあと二人、キャラクターが登場する予定ですのでお楽しみに!
この作品を気に入っていただき、さらに大好きとまで言ってもらえてとても嬉しいです。書いててよかった、と思わせていただきました、ありがとうございます!
返事が遅くなってしまい申し訳ありません、応援を力に激しくキーボードを叩いていきたいと思っています(笑)
ではでは、更新の方楽しみにしていてくださいね^^
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.12 )
- 日時: 2015/02/03 21:17
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
司令塔の男は数歩後ずさる。
一対一で張り合えば今の自分では明らかに勝てない。錐崎双太が戦いの素人だと思って油断した。
だが男の想像はあながち間違ってもいなかった。
錐崎双太はたしかに戦いにおいては素人だ。彼が今まで戦った、といえるのはテレビゲームやトランプ、ボードゲームくらいだ。
その証拠に構えも隙だらけだし、体さばきもお世辞にも良いとは言えない。殴り方もなにもかもが素人くさい動きをしている。それでも最初の二人が倒されたのは、錐崎双太の瞬発力によるものだろう。
恐るべき判断力で攻撃をかわし、相手の身体に的確に攻撃を叩き込む。普通の拳じゃ効かないが、今の彼は拳に光のグローブを纏わせている。大人であっても耐えられるものではない。
男は低く舌打ちすると、まだ周りに残っている男たちに命令する。
「お前ら何をしている! さっさとやれ! たった一人だろうが!」
男の叫びで全員が双太に襲い掛かろうとした瞬間、双太と司令塔の男のみを取り囲むように炎が円を描いた。円状の炎の壁は高く、飛んで中に入ることなど出来そうもない。
「な、何だこれは……!?」
狼狽する男の、凛とした声音が炎の壁の外から聞こえてくる。
「野暮だな。部下たちを使って、その間に逃げるつもりか? 男だろう、一対一も出来んのか」
声の主である如月依瑠華は、炎の壁をすり抜けるように中に入ってきた。それに続いて咲桜も入って来る。炎をくぐったというのに二人には火傷はおろか、服すらも焼かれておらず焦げてすらいない。
「き、貴様……! どこまでも邪魔を……!」
忌々しげに歯を食いしばりながら、鋭い眼光で依瑠華を睨む男。だが依瑠華真っ直ぐに男の目を見つめ返している。その表情には微かな笑みさえ見えていた。
「邪魔は周りのギャラリーだろう。戦いが終わるまで、奴らには外で待機していてもらう。それともなんだ? 素人のガキ一人にお前は勝てんのか?」
依瑠華の挑発に、男は面白いくらい引っかかった。
こめかmに青筋を立てて怒る男は、食いしばっていた口をやがて笑みの形に変えた。
「……くくく、はははは……」
男の口から笑いがこぼれる。
「ははははははははははははッ!! 面白い! 僕も随分と舐められたものだ! 僕が彼と戦うのを渋っていたのは、何も怖かったからじゃない。ただ……君を潰す力を、このクソガキに一滴たりとも注ぎたくないからだよ!!」
男の叫びとともに、彼の身体に変化が見られる。
彼の細かった腕がみるみるうちに膨らんでいく。筋が浮かび、ゴリラよりも太く強靭な腕へと変化した。足も太く強靭なものへと変わっていき、刃物で傷つけようとすれば、逆に刃物の方が折れてしまいそうな、そんな印象を与える。
身体も筋肉に覆われた屈強な戦士のようなものへと変わり、美しかった顔は狼のような獣のそれへと変わっていく。口からは鋭い牙が光り、瞳も細く鋭い眼光で双太を睨みつけている。
「……オイオイ……なんだよ、これ……」
変わった、というよりは変わり果ててしまった男の姿に、双太は冷や汗を流す。表情には笑みが浮かんでいるが、これは苦笑いだ。目の前の巨大な壁に、どうしていいか分からずただ笑うしか出来なくなっている、といったところだろう。
「……双太……!」
咲桜が心配そうな表情で双太を見つめる。きゅっと胸元で小さな拳を握りしめた。
つばの広い帽子を深めにかぶり直して、依瑠華は真剣な表情と声音で口を開いた。
「……これは予想外だった。まさかあれほどの力を引き出せるとはな……」
だが依瑠華は抜いていた刀を、薄紅色の鞘へと納めながら、あっけらかんとした声と表情で、
「まあお前ならなんとか出来るだろう。双太」
「無茶言うなよ、オイ!?」
依瑠華の無責任な言葉に双太は反射的にツッコミを入れる。中々の反応速度だ。
「倒してくれ、とまでは言わないから、せめて手ぐらいは貸してくれよ。こんなデカいの俺じゃとても——うおっ!?」
双太が依瑠華に反論している途中に、巨大な生物と化した男の巨大な腕が振り下ろされる。なんとかかわした双太だが、男の腕が振り下ろされた場所は、大きなクレーターが出来上がっている。それでさらに表情を引きつらせる。
「……こんなん食らったら、創造したくねぇなぁ……」
巨大な生物と化した男は畳みかけるように双太に攻撃をしていく。だが双太は紙一重でかわしていく。
その光景を咲桜ははらはらしながら見つめている。そして傍にいるおそらくは強いであろう依瑠華の服の裾を引っ張って、必死に訴えかける。
「ね、ねえ、お願いします! 双太を助けてあげてください! わたし、双太が……双太が死んじゃったら、生きていけない……! だから——、」
いつの間にか涙を流していた咲桜の頭を、依瑠華は優しく撫でる。女神のような美しい微笑を湛えながら。
「安心しろ。私の弟子は……お前の惚れた男は、あの程度でくたばるような男じゃないだろう?」
「……」
咲桜は何も言わずに再び双太の方へと視線を向けた。
その時だった。
決してかわせるタイミングじゃない場面で、男の巨大な拳が双太へと襲い掛かった。
「双太!!」
咲桜は思わず叫ぶ。依瑠華も納めた刀の柄へと手を伸ばす。が、
振り下ろされた巨大な腕を、双太は片手で受け止めた。
「なッ……!?」
「ぐるっ……!?」
依瑠華たち三人の表情が驚愕に染まる。
攻撃を受け止めた双太は、にやりと笑いながら、
「……大したことねーな……んじゃさっさと」
双太は男の太い腕を押し返す。その反動で男の身体は思いきり揺らいだ。その隙に双太は巨大な身体を利用して渡り、男の顔へと肉薄した。
「咲桜を泣かした罪を、償ってもらうぜッ!!」
ガゴッ!! と殴ったとは思えない音ともに、男の身体は大きな地響きとともに崩れ落ちていく。それと同時に巨大化した男の身体も次第に元のサイズへと収縮していった。
依瑠華は周りに張っていた炎の壁を解除した。
外に放置されていた男たちが中の光景を見ると、自分たちの司令塔が倒されたことに気付き、情けなく背中を見せながら撤退していく。と思いきや、彼らの身体の中から銀色の毛並みを持った狼が飛び出していく。
すでに倒した最初の二人と、司令塔の男からも同様の狼が飛び出して、急いでどこかへと逃げようと必死に四本脚を動かしている。
「あ、あれって……?」
咲桜が驚いたような表情を浮かべると同時、依瑠華が素早く刀を鞘からしゃらん、という音を響かせながら引き抜いた。
「……やはりか」
依瑠華が刀を横に一閃すると、三日月形の炎の斬撃が飛ぶ。その斬撃は逃げる狼たちを全て焼き切ると消滅し、銀色の狼も一匹残らず灰へと変わり、周りの空気に混じって風化していった。
周りの男たちは一人残らず倒れていた。双太が倒したわけでも、依瑠華が倒したわけでもないただ、銀色の狼が身体が飛び出したのと同時に、糸が切れたようにその場に倒れ込んだのだ。
「……依瑠華さん、これって……?」
双太が依瑠華に問いかける。
咲桜は無事に帰ってきた双太に寄り添うように、彼の傍へと寄り添った。依瑠華は刀を鞘に納めると、再び帽子を深くかぶり直した。
「……詳しい説明はまたあとだ。今日は学校だろう? 放課後に『いるか屋』に寄るといい。双太も咲桜も知らないことばかりだろうからな」
双太はポケットにあったスマートフォンを起動させる。
壊れているかもしれない、と思ったがそんな心配はいらなかったようだ。正常に起動すると、現在の時刻を日にちと一緒に表示してくれる。
現在の時刻は午前三時半。
依瑠華の試練を制限時間ぎりぎりでクリアしたから、こんな時間なのだろうと思いながらも、双太は寄り添っている咲桜の頭を優しく撫でた。
全ての謎は今日の夕方にしてもらうことにしよう。
急いで戻らないと。学校が始まるまで、あと五時間しかない。
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.13 )
- 日時: 2015/02/15 00:09
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
第二章 滅凶師と魔人
1
「おはよ、双太!」
見慣れた気怠そうな後姿を見つけて、咲桜は駆け寄りながら明るい声で挨拶をする。隣に行くと、双太も口元に微笑を浮かべて同じ言葉を返してくれる。
「おう、おはよう咲桜」
どうして彼の傍はこんなにも安心するのだろうか、と双太の隣で心地よさを感じていると、双太が気遣わしげな声と表情と聞いてきた。
「お前、ちゃんと寝れたのか? いろいろあって、逆に寝れなかったんじゃねーか?」
「……うん、ちょっと寝不足かな……」
咲桜が指で眠けまなこを擦ると、ふわぁ、と大きな欠伸をしてしまう。欠伸をしたところを双太にじっと見られていることに気付くと、頬を赤らめながら急いで口を閉じる。
恥ずかしそうに横目で睨んでくる咲桜を落ち着かせるように、双太は視線を泳がせながら、
「ま、まあ……欠伸は誰でもするだろ。でも、お前に授業中寝られると……テスト前に俺は誰に勉強を教えてもらえば……」
「そこは双太がなんとかしなきゃいけないところでしょ! わたしだって、いつまでも双太の傍にいられるわけじゃないんだからね?」
それはそうだけど、と双太は気まずそうに言ってから、咲桜の頭にぽんと手を載せた。
「——でも、今は頼っていいだろ?」
そう言われて咲桜が顔が熱くなって行くのを感じた。きっと今は頬も赤くなっているだろう、と自覚をしながら、幼馴染の不意な言葉に心をきゅんとさせられた。
そんな風に言われたら、頼らせてあげなくもないけど——と口にしようとしたところで、
「……そこは、ずっと傍にいてくれ、じゃないんだ……」
不意に紡がれた言葉に、自分自身で顔をさらに赤くなってしまう。
「ん、何か変なこと言ったか、俺?」
咲桜の顔が真っ赤になっていることに気付いた双太がそう聞いてくる。幸いにもさっきの言葉は聞いていなかったようだ。聞かれていたら、もう恥ずかしいどころの騒ぎじゃない。
咲桜はぶんぶんと手を振って双太の言葉を否定する。
「ううん!? いつも通り、変じゃなかったよ!? そ、それよりさ、双太の方こそ大丈夫だったの?」
話題を変えようと、咲桜は無理矢理に話を逸らす。
そこを別に気にしないのが双太のいいところだが、それが鈍感にも繋がっているので、助かる反面困るところでもあるので、どうか上手い具合にいかないものか。
咲桜の質問の意味が分からないのか、双太は首を傾げている。
「双奈ちゃんと双葉ちゃんのこと。昨日家に帰れてないんでしょ?」
双奈と双葉は双太の妹のことだ。双太は違うが双奈と双葉は双子である。
家庭の都合上、双子の妹と三人暮らし状態である双太は家事の全般をこなしている。そのため全く、というわけではないが双奈と双葉は家事が出来ない。洗濯くらいは出来るだろうが、料理はほぼ不可能だろう。
双太は二人が心配で、友達とお泊り会などをしたくても出来ないのだ。
「まあ、今回は急に咲桜の家に泊まることになったって言って誤魔化しといた。ないと思うけど、二人から今日のことを聞かれたりしたら、上手く口裏合わせといてくれ」
「分かった。にしても、双奈ちゃんも双葉ちゃんも今の年齢では珍しいくらい双太のこと大好きだよね」
咲桜がふとそんな言葉を口にする。
たしかに、いわれてみればそうかもしれない。今の二人は中学二年生だ。同年代の妹を持つ同級生の話では、最近目を合わせてくれないどころか、ろくに口もきいてくれないという。酷いところでは苗字で呼ばれたらしい。
そんな悲しい妹たちの話を持つ同級生に比べれば、不思議なくらい双奈と双葉は双太にべったりだ。そういえば同級生の何人からかは羨ましがられたこともある。
「わたしもあんな可愛い妹がほしかったなあ」
「なんなら今度うちに泊まりに来るか? 二人も喜ぶだろうし」
「うんっ、行く!」
咲桜は笑顔で返事をする。
正直双奈と双葉のことは咲桜も大好きだ。毎回『咲桜お姉ちゃん』と呼び慕ってくれる。双奈からは本当のお姉ちゃんになってほしい、と言われたりもするが、叶うならば本当にそうなりたいものだ。
だが、そうなってしまえば双太と——することになるので、その場では照れて弱い反抗しか出来ずにいる。
「そういえばさ、滅凶師と魔人ってなんなの?」
咲桜が双太にそう問いかける。
話しは今日の明朝、昨日の深夜とでもいえばいいのだろうか。非日常のような出来事のことに変わる。
咲桜の質問に双太は黙ってしまう。
「……正直、俺もよく分かってねぇんだよなあ……。まあざっくり説明すると、魔人っていう妖怪みたいなのを退治するのが滅凶師ってことだ」
「うわぁー、超ざっくり」
まあこういう説明になるだろうと思っていたから、咲桜も平淡なリアクションを返す。
「つまりさ、双太はヒーローってこと?」
「どうなんだろうな。まあその辺の話は今日依瑠華さんに聞こうぜ。俺もだけど、咲桜も依瑠華さんのことよく知らないだろ?」
咲桜はこくりと頷く。
「分かるのは、双太の命の恩人ってことくらい」
双太は放課後に咲桜を連れて『いるか屋』に行くことを決めた。もう一回あのごみ溜め場みたいなところに行くのか、あの光景を見たら綺麗好きの咲桜は黙ってないだろうなあ、と隣にいる幼馴染を横目で見ながら思う。
「まあ滅凶師として生き返ったから、どうしても教えてもらわなくちゃいけないんだけどな」
「うん。わたしも巻き込まれちゃったし、ちょっと事情は知りたいかも」
そう言いながら二人は下駄箱へと向かう。
その時、すれ違いざまに二人の会話を偶然聞いていた少年が不意に足を止めた。
少し長めの茶髪に眼鏡をかけた、知的な雰囲気が漂う少年だ。双太のような熱血のような印象はなく、真逆の冷静という言葉が似合う少年だ。
少年は振り返って靴を履き替える双太と咲桜を見つめている。見つめながら、少年はぽつりと呟いた。
「……僕以外にも、滅凶師が……?」
- Re: ルミエール・エグゾルシスト ( No.14 )
- 日時: 2015/02/23 00:22
- 名前: 凪乃 (ID: KCZsNao/)
2
「転校生ねぇ……」
双太は教室で誰にともなくぽつりと呟いた。
教室では朝のホームルームが行われており、双太と咲桜のクラスに転校してきた生徒を紹介しているところだ。
肩よりも少し長めの深緑の髪の毛先はくるっとカールを描いており、大きな瞳が少女の活発であろう性格を現しており、背筋も伸ばして真っ直ぐに立つその姿は、傍目から見てすごく綺麗だった。
黒板の前に立つ転校生の少女は、自分の名前が記された黒板を一瞥してから、緊張している様子も全く見せず自己紹介をする。
「竹宮(たけみや)あかりですっ! えっと、とりあえず、よろしくお願いしまーす!」
可愛らしい透き通る声で自分の名前を言いながら、ぺこっと頭を下げる少女。男子たちは彼女を見て歓声を上げることもなく、癒されているような恍惚とした表情を浮かべている。
双太はそんな男子たちとは対照的に、ふわぁ、と大きな欠伸をこぼした。
それにしてもこんな中途半端な時期に転校してくるとは、相当込み入った事情があるのだろう。そんな空気を読まない質問をクラスメートがしないか、少々不安になってくる。
そんなことを考えていると、不意に転校生の竹宮あかりと視線が合った。あかりはすぐさまにっこりと笑みを浮かべた。愛想笑いでもあれだけにっこり笑えるのはいいなあ、と双太は少し羨ましく思う。
愛想笑いも出来ない双太にとっては、そんなことが出来るのが羨ましいのだ。
やがてあかりが席に着くと、授業が始まる。一時間目は双太の大嫌いな数学だ。その授業を、双太は転校生の視線を浴びながら受けることになった。
時は経ち、昼休み。
双太はいつも通り咲桜と昼食を摂ろうとしていた。前後の席を合わせて咲桜と向かい合うようにして座る。クラスでは日常の出来事なので、クラスメートは『相変わらず仲が良いなあ』というような視線を向けている。
双太も咲桜も今日は登校前にコンビニで適当に買った物になっている。昨晩の出来事を考えれば、お弁当を作る体力もない。
咲桜は双太がコンビニの袋から出したパンを眺めながら、
「またそんなに偏って……太っても知らないからね」
「若いんだから好きなモン食わせてくれよ。今更健康とか気にしてたら、好きなモンも食えねーじゃねーか」
双太が袋から出したのはピザパン、メロンパン、サンドイッチといった彼の鉱物ばかりだ。
一方でおにぎりを買った咲桜は、なんというかバランスが良いものを選んでいる。どれも彼女の好物らしいが、女子高生で高菜のおにぎりをチョイスするのはさすがにあまりいないだろう。
「あ、飲み物買うの忘れた……」
空の袋の中を眺めながら、双太がしまった、というような調子で呟いた。
「それだったらわたしのお茶あげるよ?」
咲桜はきちんと買っておいたペットボトルのお茶を見せながら言う。間接キスだとかそういうのは気にしていない。それが幼馴染というやつだ。だが、指摘したら咲桜は顔を真っ赤にして動揺するだろう。
双太もそんなのを気にしたわけではなく首を横に振る。
「いや、パンにお茶はミスマッチだろ」
「そんなことないと思うけど?」
「いいよ、自販機で買ってくる。先に食べといてくれ」
双太はそう言って教室から財布を持って出る。
一人残された咲桜は、双太の言葉に甘えて先にお昼を食べることにした。昨晩の出来事のせいかお腹が空いていたのだ。高菜のおにぎりを手に取って、綺麗にビニールを剥がしていく。
おにぎりを一口食べたその時、ふと横から声が掛けられた。
「……あれ、さっきまで男子と一緒にいなかったっけ?」
その声に振り返る咲桜。
声を掛けてきたのは、休み時間中ずっとクラスメートに囲まれていた転校生、竹宮あかりだった。
双太は自販機の前で悩んでいた。
それは何を飲むか、ではなくお金についてだ。財布の中は五千円程度が入っていた。自販機で飲み物を買うには充分すぎる代金だが、問題は五千円札でしか入っていなかったことだ。不幸にも小銭はほとんどなく、飲み物を買うには五千円を崩すしかない。
双太としてはお札をなるべく崩したくないのだ。飲み物なしでパンを食べるのは少々辛い。かといって今更咲桜に飲み物をもらうのも、少し情けない気がする。
どうすっかなー、と考えていると、
「錐崎双太くん、ですよね?」
突然声を掛けられた。
とても丁寧な口調だ。声は男子のものだったが、初めて聞く声だった。そもそも名前を確認しているので、彼の友達ではない。
双太は声に振り返ると、見覚えのない男子が立っていた。
少し長めの茶髪に眼鏡をかけた知的な印象の少年だ。彼は口元に柔らかな笑みを浮かべており、何故か彼の笑みを見ていると、心が落ち着くような、そんな効果がある。
「……えーっと、誰……?」
双太は初めて見る少年にそう訊ねた。
もしかしたら、自分が忘れているだけかもしれない。それだったら開いtに対してかなり失礼だ。でも知り合いにこんな頭よさそうな奴なんていたっけかなー、と考えていると、少年は小さく笑いながら、
「安心してください。僕と君は初対面ですよ」
「……ああ? そうなのか……じゃあ、なんで俺の名前を?」
初対面ならば名前を知っているのも不思議だ。双太はクラスでそんなに目立っているわけではない。良くも悪くも普通の高校生だ。ただ幼馴染の咲桜と仲が良いくらいだが、そんなので噂されても、フルネームまではそう聞かないだろう。
知的な少年はくすっと笑って、
「実は校内で何度か見かけていまして。君とよくいる彼女さんが名前を呼ぶので。苗字は名前を知っていれば、探しやすいでしょう?」
彼女さん、とはおそらく咲桜のことだ。やっぱりこういう勘違いをしている奴はいるんだなあ、と双太は小さく溜息をつく。
「名前を知ってる経緯は分かった。あと、俺といつもいる咲桜——女の子は彼女じゃない。幼馴染だ」
「そうだったんですか? それは、失礼しました」
「謝んなくていいよ。もう慣れたから」
それにそんな丁寧に謝られても困る。双太としては少し会話のリズムが崩されて、変な感覚になってしまう。
「で、何の用だ? 俺、幼馴染を待たせてんだけど」
「そうですか。では手短に話しましょう」
少年は数歩歩いて、双太との距離を詰める。その間は僅か一メートル程度だ。知的な少年は、双太にしか聞こえないような声のトーンで、
「単刀直入に伺います」
言葉通り、真っ直ぐな言葉で、遠回しにもオブラートに包んだりもせずに訊ねる。
「——君と幼馴染さんは、滅凶師ですか?」
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