コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 貴女と言う名の花を【お知らせ】
- 日時: 2016/05/13 19:32
- 名前: 彼方 (ID: zhi/K9qX)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38857
初めまして、彼方です。
本当だったら複雑ファジーに書き込むべき内容になっているかもしれませんが、ここが書き慣れているのに加え、恋愛ものなので、ここに書き込ませてもらいます。
ちなみに登場人物の名前は全て花か草ですので、もし暇な方がいれば、登場人物の名前の花言葉を調べてみてください
あ、アリスティドとラフィークは別です!アリスティドはフランス人、ラフィークはアラブ人の名前なんですよ!(どうでもいい)
あと、ふざけた小説も書いてます!w
上のURLから行けますので、もし良かったらどうぞ!
諸事情によりアイビーの瞳の色を変更させていただきました
《12/29執筆開始/8/27完結》
これは、病に囚われた一人の少女と、過去に囚われた一人の青年執事の、絶望と孤独と、それでも確かに存在する光に縁取られた、淡く儚い恋物語____、そして、長く長く続いてゆく二人の最初の出逢いの話____。
.:*♪'゜目次。.*#:
エリカ(主人公)の挿し絵>>26
アイビーの挿し絵>>27
アイビーの挿し絵>>75
アイビーの挿し絵by傘泉池さん>>84
なろうで投稿中の大幅加筆修正版>>83
完結図書館でまとめた本作>>80
プロローグ*エリカ* >>01
第一章 *シラー*
>>02>>09>>10>>11>>14>>15
第二章 *エキナセア*
>>18>>19>>20>>21
第三章*鬼灯*
>>22>>23>>24>>25
第四章*勿忘草*
>>32>>33>>34>>37>>38
第零章*アネモネ-1*
>>41
第五章*白いゼラニウム*
>>44>>45>>46>>47
第六章*濃色のキク*
>>48>>51>>55>>56>>57
第零章*アネモネ-2*
>>59
第七章*カンパニュラ*
>>61>>62>>63>>64
第八章*アイビー*
>>65>>68>>69>>70>>71>>72
第九章*ネリネ*
>>73>>74>>76>>77
エピローグ*貴女という名の花*>>78
*後書き*>>79
・†。+゜お客様・†。+゜・
>>04>>39奏多 ありがとおお!!ヾ(*´▽`*)ノ
>>07>>35てるてる522 ありがとなっ!!(o´・ω-)b
>>12>>28>>30>>42>>66 春音 感謝感謝っ!!(`・ω・´)ゞ
>>16 蒼葉さん あざっす_(:3 」∠)_ w w w w w w w w w w
>>49>>81 イッスンさんありがとうございます!!(*- -)(*_ _)ペコリ
>>53 みるくパンダさん申し訳ありません…(*;ω人)
>>58 四之神綾芽さん今度あなたの小説にもお邪魔します!!|・ω・*)
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.69 )
- 日時: 2015/08/23 23:36
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
僕の最初の記憶はアネモネという女性の、どこか狂気を孕んだ笑顔だった。
「ああ、目を覚ましたんだね!」
そう言って彼女は僕を抱きしめた。
「ここは……どこで、僕は……誰、なんだ……?」
僕はそう呟いた。すると、彼女は僕を抱きしめたまま囁いた。
「きみの名はアイビーだよ。アリスティドなんて名前、もういらないよね。そしてぼくはアネモネ。きみの恋人さ。
ああ嬉しいよアイビー、今日からぼくときみはずっとずっとずっとずっとずっとずーっと、一緒だ」
「そう、なのか……?」
訳が分からずそう尋ねると、嬉しそうにアネモネは言った。
「そうさ。でもきみはぼくがいるのに他の女と仲良くしてたんだ。ぼくは我慢してたのに、きみはいつまでもそいつと仲良くし続けるから、ぼくが怒って喧嘩になったんだ。
それで色々あって、きみは記憶を失くしてしまった」
少しアネモネの声が沈む。
「でも!きみはこうして生きている!それだけでぼくは幸せさ。ああ、本当に綺麗だ、アイビー。愛してる。心から、愛してるよ」
なぜか悪寒が走った。しかし、僕はそれを無視した。
「愛してる。ああ愛してる。愛してる愛してる愛してる愛してる」
延々と呪いのように囁かれる愛の言葉。なぜかそれがとてもおぞましいものに思えたが、無視する他なかった。
記憶が一切ない中では、彼女の言葉を信じる他なかったから。
それからアネモネと過ごした数ヶ月間、一度もアネモネの家の外には出られなかった。アネモネが禁じたのだ。しかしそれにも僕は従っていた。
正しい、普通のことだと思っていたのだ。アネモネ以外の人間と触れ合わなかったため、いつの間にかアネモネに洗脳されていたのかもしれない。
不便はなかった。欲しいものは全てアネモネが用意してくれるから。
アネモネの病的なほどの愛の言葉も慣れてきていた。慣れないと、とても生きていけなかったんだろう。
そしてある冬の日。
何か胸騒ぎがした。上手く言い表せないが、何か秘密がばれそうな時のような、嫌な緊張感を感じた。
その胸騒ぎは当たった。
- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.70 )
- 日時: 2015/08/23 23:42
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
どんどんどんどん、という乱暴な音が聞こえた。誰かがドアを叩いているんだろう。それと共に男の声も聞こえた。
「アネモネ、出てこい!お前を乳幼児殺害及び禁呪使用の罪で逮捕するッ!」
アネモネはやけに悠然としていた。そしてゆったりと微笑んだ。
「アイビー、気にしなくていいよ。変なでたらめを言ってぼくらを引き裂こうとしてるやつがいるんだ」
再度声が響いた。
「アネモネッ!もう既に家は包囲してある!大人しく出てこい!分かっているだろう、禁呪使用者には通常の法は全て適用されない!出てこないならばお前の家ごと破壊するッ!」
アネモネは依然余裕そうな笑みを浮かべたまま。僕は訳が分からずにアネモネに勢い込んで尋ねた。
「アネモネ!どういうことだよ!乳幼児殺害とか禁呪使用とか、何なんだよ!一体何したんだよ、アネモネッ!答えて「アイビー。きみは何も知らなくていいよ」
アネモネはそう僕の言葉を遮った。
完全に僕は混乱していた。ある意味ではアネモネは僕の唯一の指針だった。そのアネモネが____犯罪者?
アネモネは確かに執着心が強すぎるきらいはあるが、犯罪、ましてや禁呪を犯すほど腐ってはいない、そう、この日までの僕は信じていた。
ばきっ、と音がした。ドアが蹴飛ばされて壊されたのだ。そこから入ってきたのは、大勢の人がなだれ込んできた。
その人達に共通しているのは、茶色の制服と、黄色い花を象っている『正』と書かれた紋章だった。後で知るが、その人達は特殊な事件のみを扱う秘密警察だった。
「アネモネ!大人しく投降しろ!従わなければ殺してでも連れて行くッ!誰も非難はしないだろう。何たって、禁呪使用者だからなっ!」
男はアネモネを睨みつけながらそう言った。アネモネは、笑顔のままそいつを見上げ、やがて俯いた。
その次にアネモネがとった行動は、その場にいた者全員の度肝を抜いた。
____笑ったのだ。それも大声で。
「あはははははははははっはははははははははははははっははははっははははははははははっははは」
この時初めて、僕はアネモネが異常なんじゃないかと思い始めた。後からしてみれば、気付くのにあまりにも遅過ぎた。
箍が外れたように笑い続けていたアネモネだったが、突如ぴたっと笑うのを止めた。
そして、僕に覆い被さり、耳元でこう囁いた。
「死んでも離さない。『アイビー』の花言葉さ。それがきみの名前の由来だよ、アイビー」
嬉しそうに、それでいてどこか無邪気で、狂ったような笑顔でそうアネモネは囁いた。
ぞくっ、と、顔が引きつるほどの寒気が走った。恐怖が全身を支配する。
次の瞬間、アネモネは倒れた。狂ったような笑顔のまま。恐る恐る横を見ると、赤い血だまりが広がっていっていた。鈍い音を立ててナイフが転がっていた。
赤い血だまりを見て、可笑しいほどにすんなりと理解した。
____アネモネは自殺したのだ。僕にそれを呟いた直後。
- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.71 )
- 日時: 2015/08/23 23:45
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
その後の男たちの反応はまさに、混乱の極みだった。
「アネモネが自殺した!?馬鹿な、あいつは禁呪を使ったんじゃないのか!?」
「確かめろ!本当に死んでいるか確かめろっ!」
「……死んでいるっ!確かに心臓が止まっているッ!」
「何故だ!ならば禁呪は誰に使われた!?」
そんな怒号が飛び交った。
不意に、男のうちのある一人が僕を指差した。
「……あいつじゃないか?……あいつに、禁呪が使われたんじゃないか!?」
男たちが一斉に僕を見る。おもむろに、男たちのリーダー格が言った。
「……確かめろ」
「「「はッ!」」」
靴の音を立てて男たちは敬礼をした。
「殺しても構わん。どうせ禁呪使用者の仲間だろう。通常の法は適用されんだろうからな」
リーダー格のその言葉に全員が一斉に頷く。そして、ざっと音を立てて僕に向けて銃を構えた。
殺意に満ちたぎらぎらと光る目がどこを見回してもあった。訳が分からずに僕は叫んだ。
「何でっ……、何でだよっ!何で僕が殺されなきゃいけないんだっ!僕が、アネモネが何をしたんだッ!」
はっ、とリーダー格が嘲笑う。
「貴様、何も知らんのか。その女と暮らしていて。____ならば教えてやろう。その女はな、『禁呪』という、命を操る禁じられた呪術を使ったのだ。我らの調べでは二十人ほどの乳幼児を生贄に殺した、悪魔のような女だ」
……理解ができない。何で、何で、アネモネがそんなこと。
脳が理解を拒んだ。理解したくない。そんな、そんなこと。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
だって、もしそうだとしたら、僕は一体今までなんてやつを信じてたんだ。
「やれ」
リーダー格の低い声が聞こえる。気付いた時にはもう遅かった。男たちの引き金が一斉に引かれ、何十もの銃弾が一寸違わず僕を狙う。
____待ってくれ、まだ何も分かってない、何も覚悟できてない____。
耳をつんざくような轟音が響いた。それに一瞬遅れて全身に耐え難い熱さが走った。熱い。赤く熱せられた鉄棒が体中に何本、何十本も刺さったようだ。
ふっと視界が霞んでゆく。死ぬのかな、僕。そう思った。だが____、
水底から這い上がってくるように、すうっと意識が鮮明に戻って行く。熱さが耐え難いものではなくなり、鈍く疼くような、そんなものへとなっていった。
恐る恐る自分の体を見下ろした。そこにあったのは、まるで元からその色のように赤く染まったシャツだった。
確かに撃たれた。そして当たって怪我もしている。なのに、なぜ____?
「死んで、いないだと?ならば本当にこいつは____」
驚いたように、しかしどこか予測していたように男が呟く。リーダー格が氷のように冷徹な声で命令をした。
「禁呪の使用者ではないが、この男も同罪だ。王都へ連行しろ」
「「「はッ!」」」
再び靴を鳴らした敬礼。その直後、何人もの男に囲まれ、肩を掴まれ、引きずられた。
「……何なんだよっ!一体何が起こってるんだよ!何で僕は死ななかったんだよ!何で僕は連行されるんだよ!何で、何で……ッ、説明しろぉッ!」
考えたくない。今は何も、考えたくない。だから僕はただ叫んだ。何も考えないで済むように、ただ叫んだ。
リーダー格は何も説明せず、ただ淡々と、凍えた声で僕に向かって言った。
「あの女の素性を徹底的に調べておいてよかった。ここまで大掛かりなことを行っておいて当の本人が自殺じゃ説明がつかないからな。上には全て貴様の犯行にしておこう。
____アリスティド、だな。貴様を乳幼児二十三人の殺害及び禁呪使用の罪で王都へ連行する。そして『無期懲役』の刑を処す。つまり分かるな?貴様は千年国で飼い殺しだ」
僕は何も考えずに、ただ口の動くままに叫び続けた。考えたら何か、恐ろしくおぞましい真実に突き当たってしまいそうで。
「何だよそれっ!?アリスティドって誰だよ!?僕はそんなことしていないっ!何で僕がそんな目に遭わなきゃいけない!?それに無期懲役なんて、そんなこと、そんな簡単に決められることじゃないだろっ!?それに千年国で飼い殺しって一体何だよ!?何なんだよぉッ!!」
両肩を掴まれ身動きが取れないが、それでも必死に逆らいながら叫んだ。
すると、下腹に衝撃が走った。リーダー格が僕を膝で蹴ったのだ。がっ、と口から空気が漏れる音がした。髪の毛を掴まれ、顔を無理やり上げられる。絶対零度の視線が僕を貫く。
「喚くな化物。貴様の問いはこれから全て、嫌でも知ることになるだろう。
それにな、化物。____そんな簡単に決められるんだよ。禁呪使用者には通常に法は全て適用されない。全て現場の判断に委ねられる。つまり俺の判断だ。俺が無期懲役と決めた、つまり貴様はそれに従う他方法はない。
貴様は人権も何もない化物だ。分かったら喚くな。従え」
その後、僕は嫌というほど己の背負った罪の十字架の大きさを知らされた。
- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.72 )
- 日時: 2015/08/26 08:21
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
「通常の法が適用されないって......、一体、どういう......?」
私が呆然と呟くと、アイビーは自嘲気味に答えた。
「そのままの意味でございます。つまり、禁呪使用者に何をしたところで罰せられることは決してないのです。どうせ重罪人だ、殺しても拷問しても構わないだろう__、そういう考えがまかり通っていたのです。
そして僕は何をしても死ぬことは決してない、こんな便利な実験体、他に存在するでしょうか?」
実験体、という無機質で非情な言葉の響きに寒気がした。人をそんな風に扱うなんて__、許されるのだろうか。アイビーが国にどう扱われたのか、考えたくもない。飼い殺し、という言葉の意味も、深く考えたくはない。
「__禁呪、って何だか、聞いてもいいかしら......?」
控えめに私が訊くと、アイビーは「ええ」と微笑んだ。
「禁呪、というのはその名の通り、禁じられた呪術でございます。これを使用すれば、実現不可能なことを実現することができます。既に消滅したものを甦らせる、人の感情、行動や、天候、災害などを操るなど、それこそ何でも。ただし、それ相応の代償を払わねばなりません。
これをむやみやたらに使われては、世界の均衡が崩れるでしょう。なので、世界はこれを禁じたのです。これを使用した者には一切の法を適用しない、つまり人として扱わないぞ、と。禁呪が記された本は国で管理し、限られた者にしか閲覧が許可されません。
しかし、彼女......、アネモネはその驚異的な執念で禁呪の方法を突き止めました。国から禁呪が記された本を盗んだのかもしれません。アネモネが使用した禁呪は二つ。一つは、死者を甦らせるもの、もう一つは、他者の寿命を奪い、自分、あるいは自分の親しい者などの他者へ受け渡すものです。
アネモネが生贄として乳幼児を選んだのは恐らく、寿命が多く残っているからでしょう。そして僕は、望んでもいない千年の寿命を得ました。大き過ぎる代償と共に」
ふ、とアイビーが息を吐いた。
__とんでもない話だ。にわかには信じがたい。しかし、こうしてアイビーがいるのだから、信じる他ないだろう。それより、
「死者を甦らせる、ってどういうこと?アイビーはこうして生きているじゃない」
アリスティドとアイビーは赤の他人、アリスティドは亡くなった、というアイビーの言葉の意味がまだ理解出来ない。死者を甦らせるということはもしかして。
「......少し前に申し上げた通り、アリスティドと僕は全くの他人でございます。そしてアリスティドは既に亡くなっております。__殺されたのです。アネモネの手によって、婚約者と共に」
「殺された......?どうして、アネモネは貴方を愛していたんでしょう?」
理解ができずに私は尋ねた。だって、愛している相手をどうして殺せようか。
アイビーは暗い表情で答えた。
「正確には、彼女が愛していたのは僕の容姿です。恐らく、彼女は僕と相思相愛だと思い込んでいたので、許せなかったのでしょう。僕が他の女性と仲良くしているのが」
そんなの、普通じゃない。勝手に相思相愛だと思い込んで、他の異性と仲良くしたら嫉妬して、挙句の果てに殺してしまうなんて。
「狂ってるわ......」
私が思わず呟くと、アイビーは小さく吐き捨てた。
「まさに狂気の塊、でしょう」
アイビーの過去はあまりにも重すぎて、聞いているだけの私でも、容易には飲み込みきれなかった。
- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.73 )
- 日時: 2015/08/26 11:03
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
第九章*ネリネ*
沈黙が部屋の中に流れた。何て言えばいいのか、全く分からなかったからだ。
アイビーはそれをどう捉えたのか、とても寂しそうに笑った。
「……ある意味では、僕の方がお嬢様の何倍も罪深い存在かもしれません。何故なら僕は、二十以上の将来を奪っておいて、それでもまだ何百年ものうのうと生きるのですから。お嬢様はご自身のことを生きる価値なんてないとおっしゃいましたが、それは僕の台詞でごさいます。……何のために、この先九百年以上も生きていくのでしょうね、僕は」
そんなことないわ、アイビーは罪深い存在なんかじゃないわ、自分を責めないで、アイビーが悪いんじゃないわ____、言いたいことは数あれど、上手く言葉にできない。
代わりに意趣返しとばかりにアイビーをぎゅっと抱きしめた。
「……貴方がこの先何のために生きればいいのか、それは私は答えることはできない。でも……、でもね、一つだけ確かに言えることがあるわ。
アイビーは生きてる価値のない人間なんかじゃないわ。だって、貴方と同じで私も、貴方がいたから今の私がいるんですもの」
アイビーは沈黙した。____いや、違う。
アイビーは、声を押し殺して泣いていた。アイビーの泣くところ、初めて見たかもしれない。
「ありがとっ、ございます、お嬢様……っ」
いつも優しく私を支えてくれるアイビーの弱い姿を見ていると、何故だかとても愛おしい気持ちになった。私にできることなんてないに等しいけれど、せめて抱きしめてあげよう。
やがてアイビーが顔を上げた時、私は笑って言った。
「アイビー、貴方、ずっとこんなことを誰にも言わずに一人で抱え込んでいたんじゃないの?自分を責め続けながら。私にぐらい全部言ってくれてもよかったのよ?」
アイビーは少し申し訳なさそうな顔をした。
「申し訳ございませんでした。僕の出自をお知りになったら、お嬢様は僕を嫌うのではないか、と心配だったのです。……それに、僕などが救いを求めてはいけないのでは、と」
「馬鹿ね。本当、馬鹿ね、アイビーは」
私がアイビーを嫌いになる訳がない。
例え、生まれた、いや生き返ったその瞬間に多くの将来を奪っていたとしても、私にとっては初めて私を受け入れてくれた、唯一無二の存在だから。
少し自分勝手かもしれないが、アイビーがどんな過去を持っていようが、アイビーがアイビーでいてくれるなら私はそれで構わないから。
抱きしめていたアイビーを離してそう伝えると、アイビーは一度目元を拭い、そしてふるっと笑った。まるで花が開いたようなとても綺麗な笑顔だった。
「……お嬢様には、救われっぱなしでございますね。何か、僕がして差し上げられたことはあるのでしょうか」
「勿論よ」
私もアイビーに笑い返した。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
この掲示板は過去ログ化されています。