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夢で逢えたら【9/22更新】
日時: 2015/09/22 01:56
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

はじめての方ははじめまして、ひよこです。
またお前か、という方はこんにちは、また私です。

今回は、名前を取り戻すため奮闘する少女のお話。





*登場人物

・アリス

・白うさぎのお兄さん

・黒猫

・白猫

・狐

・子犬

・ライオン

・女王



*お客様

・はるた様
・左右りと様
・スミレ様
・マヤ様
・アッコ様

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Re: 夢で逢えたら【7/25更新】 ( No.39 )
日時: 2015/07/30 22:59
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

「……落ち着いた?」

白うさぎが優しく問いかける。
アリスは少し頬を赤く染めて、ぱっと白うさぎから離れた。

「……すみません」

白うさぎは柔らかく笑って、ぽんぽんとアリスの頭をそっとたたいた。

「謝ることじゃない。それより、ここに君を閉じ込めたのは……」

「それが、変なんです。クローゼットにいれたのは子犬ちゃんだけど、子犬ちゃんはクローゼットに鍵なんてかけてなかった……」

白うさぎが首をかしげる。

「……クローゼットに鍵なんてかかっていなかったよ?」

「え……?でも、お兄さんがきたとき開けようとしたんですけど、開かなかった……」

白うさぎがなにか考えているのか、腕を組みながら黙ってしまった。

「……そういえば、部屋の鍵もかかっていたな……でも、他の部屋には鍵なんてなかった。だからおかしいと思ってこの部屋に入ったんだけど……」

はっ、と白うさぎは目を見開いた。
頭を抱えて、ため息をつく。

「あー……やられた。そうか、あの姿だと悟られないと思ったのか……」

「お兄さん……?」

アリスはわけがわからず、白うさぎの顔を覗きこんだ。
白うさぎは真剣な面持ちで、アリスをみつめた。

「よく聞いて、アリス。これから子犬がここへやってくる。なにを言われても動じてはいけないよ」

どうして子犬が、と疑問を持ったが、白うさぎの真剣さになにも言えず、ただ頷くしかなかった。

「……来た」

白うさぎがそう呟いた瞬間、白い煙が渦を巻きながら部屋に現れた。

「もう黒いもやから抜け出したのですね、白うさぎ……」

煙が徐々に薄れていき、だんだんとそれは姿を現した。

「……やっぱりあなたの仕業だったんですね」

現れたのは、子犬ではなかった。
美しいブロンドの髪、整った顔立ち、陶器のように白い肌。

「……誰……?」

美、という文字が似合う女性が、微笑みながら立っていた。

「私は、この本そのもの。こんな姿をしているのは私が気に入っているからですよ」

すっと、本と名乗る彼女は音もなくアリスに近づいた。

「アリス……私は貴女が気に入ったの」

アリスの頬に、彼女の細い指がすっと伸びてくる。それを制止したのは険しい顔をした白うさぎだった。
白うさぎは彼女の手をしっかりとつかみ、離さなかった。

「あら……なんですか?この手は」

彼女は微笑みを崩さずに、静かに尋ねた。白うさぎも負けじと微笑み返す。

「話が違うと言っているんですよ?」

「話?なんのことですか?」

彼女は白うさぎの手を振り払い、その美しい顔から微笑みを消した。

「ここで私に逆らえると思わないでくださいね、白うさぎ」

「……ここの足りない部分を補っているのは僕だということもお忘れずに」

(……どういうこと?)

二人の間で火花が散る。
会話を聞いていたアリスはわけがわからずに首をかしげた。
わかったのは、この女性はアリスが迷い込んだ本そのものだ、ということだけ。それもにわかには信じ難いが。

「私の話を聞いてくれるのは白うさぎだけですもの。それなのに貴方ったら無愛想でつまらない……」

はあ、と心底残念そうに彼女はため息をついた。しかしすぐにアリスのほうに目を向け、にっこりと微笑んだ。

「でも、この子なら。物語も退屈しなさそう……。ねえ、アリス」

不意に名前を呼ばれ、アリスは思わずびくっと肩を震わせた。

「ここにずっといませんか?ここにいれば永遠に死なず、自分の思い通りに過ごすことができる……とっても楽しいですよ?」

「この子はあなたの玩具じゃありませんよ。アリスはちゃんと向こうに帰します」

「私はアリスに言っているんですよ、白うさぎ。案内役は黙ってなさい」

そう言われ、白うさぎは忌々しそうに顔を歪めた。
そんな白うさぎを尻目に、彼女はアリスににじり寄った。

「私、寂しいんです。私の主は、私を作り終わる前に死んでしまったの。私の物語は、無くなってしまった……」

ふと、前に白うさぎが言っていたことを思い出した。
『物語をなくした、哀れな本』。

(この人のことだったんだ……)

「だから私は、色んな人に物語を紡がせたんです。でも、なかなか心惹かれるものがなくて……」

「……やめろ!!アフリジェ!!」

白うさぎが声を荒げた。

「…その名前、私は嫌いよ」

アフリジェ、と呼ばれた女性は、声を低くして呟いた。すると、酷い地鳴りが響いた。
何事かと辺りを見回すと、徐々に空間が崩れていくのが見えた。

(どうして……私、怖いだなんて思っていないのに……)

この世界はアリスの心しだいで変わると、白うさぎは言っていた。
しかしいま、アリスは恐怖や負の感情は持っていない。

「お兄さん、これは……私のせい、ですか?」

「……ここは、彼女の世界でもある。君がどんなに強く心を持っても、彼女の意志には逆らえないんだ」

ああ、だから、と、アリスは一人納得した。かかっていなかった鍵が勝手にかかっていたり、どんなに念じてもタンスが開かなかったりと、自分の思い通りにならなかったのは、彼女がいたからなのだ。

「私、貴女をずっと見ていたの……子犬の姿に化けて一緒に行動もして、やっぱり貴女が欲しいと思った……」

あたりのものが全て崩れゆく最中、アフリジェは一人笑った。

「貴女はもう、ここから逃がさない……!!」












***








「あなたに、名前はないんですか?」

青年が、静かに問う。
『それ』は少し驚いた。今まで、そんなことを聞いてきた人間は誰一人いなかったのだから。

__ないよ。名前も、物語も、なにもない。

そう伝えると、青年は少し考えるように黙ったあと、ぽつりと言った。

「……アフリジェ」

『アフリジェ』。
フランス語で、『悲しい』。

__そんな言葉、よく知っているね。

自分は知っている。なにせ、色んな人間を取り込んで、色んなものをみてきたのだ。あらゆる国の言語だってわかる。
でも、と。
アフリジェと呼ばれた『それ』は、一拍置いて答えた。

__私に、ぴったりだ。

この世に存在することが出来なかった、哀れで悲しい本。
誰からも必要とされず、その存在を誰にも知られないまま。


__一人ぼっちは、嫌だ。


物語を、紡ぐ。

Re: 夢で逢えたら【7/30更新】 ( No.40 )
日時: 2015/08/01 21:55
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

「ねえ、いいでしょう……?私寂しいんです。寂しいの、とても」

全てが崩れ、真っ白になった世界。
そこで、アフリジェは涙を零しながら笑った。

「貴女だって、元の世界に戻っても、いいことなんてなにもない……そうでしょう」

(確かに、そうかもしれない)

あの女は、アリスの恐怖からくる幻だった。しかし、現実もさほど変わらない。
自分の思い通りにならなければ、すぐにアリスに八つ当たりをする。父親はそれが嫌で、アリスを置いて出て行ってしまった。

(……あの人の幻を見てから、嫌な事まで思い出した)

あの人は、母親は。
娘などと思っていないのだ。ただ、自分の思うままに操る人形。

「貴女の名前なら、ここにあります」

その声に、思考を一旦置いて、アフリジェのほうに顔を向けた。
アフリジェは自分の手をアリスに向かって差し出した。その手には、青い光の玉がふわふわと浮いていた。

「これを貴女が手にすれば、名前は取り戻せる……ここにずっといるのなら、これは返します」

「なにを言って……ちゃんとアリスに名前を返してください!!」

「……なあに、白うさぎ。貴方、自分のようになるのが嫌でそんなことを言っているのですか?」

「……!!」

アフリジェの言葉に、白うさぎが目を見開いた。

「貴方はもう、名前を思い出したって帰れないですものね。なんたって、貴方は……」

「アフリジェ!!」

白うさぎの制止の叫びも聞かず、アフリジェはにっこりと笑った。


「死んでいるんですからね」


(……え?)

白うさぎが、死んでいる。
その言葉に、アリスは驚愕した。

「……お兄さんは、この世界の案内人だって……」

独り言のように呟いたアリスに、白うさぎは安心させるかのように笑った。

「……大丈夫だよ、アリス。あの人の言葉に耳を貸さないで」

(その、顔は)

あまりに見覚えのある顔に、アリスはとても不安になった。

(お兄さんが、嘘をつく時の、顔だ)

とって貼り付けたような笑顔。
アリスはこの笑顔が苦手だった。

「あら、知らなかったのですか?アリス」

微笑みを浮かべたまま、アフリジェは白うさぎの頬に手を添えた。

「彼は貴女と同じ……私が本に取り込んだ人間なんですよ」

(……やめて)


「病気という苦しみから逃げ出した」


(もうなにも言わないで)


「哀れで」


白うさぎの顔から、笑みが消えていく。

(お兄さんの傷ついた顔は、見たくない)


「馬鹿な人間」


白うさぎの表情が、見えなくなった。

Re: 夢で逢えたら【8/1更新】 ( No.41 )
日時: 2015/08/03 16:20
名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode



もうちょっとで終わり、ですかね!!
クライマックスがどうなるのかわくわくする反面、もう終わっちゃうのかと思うと残念に思います……(>_<)
甘い悪魔も、もうすぐ終わっちゃいますよね・・

ひよこさんの作品が続けて完結しちゃったら、わたし……何を糧に受験勉強すれば良いのでしょう!?
と、とりあえず……そのときはひよこさんの新作が出るのを、楽しみにしてます(+o+)

更新楽しみにしています!!

Re: 夢で逢えたら【8/1更新】 ( No.42 )
日時: 2015/08/04 22:13
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

左右りとさん


こっちはもうちょっとで終わりですね〜
……私の更新速度しだいではありますが。
甘い悪魔のほうもクライマックスという感じです。

その点は大丈夫です!!
多分すぐ新しいのを書くと思います。というかもう書くかもしれません。
……私の小説なんか受験勉強の糧になりますかね?←
と、とにかく勉強お疲れ様です。最後まで諦めずに頑張ってください!!
(っ`・ω・´)っフレーッ!フレーッ!

更新頑張ります!!


コメントありがとうございました!!

Re: 夢で逢えたら【8/1更新】 ( No.43 )
日時: 2015/08/04 22:25
名前: スミレ (ID: Id9gihKa)

白ウサギ…?
どんどんと話が加速していって、どんどん引き込まれている自分に驚きます!
アフリジェも気になるけど、白ウサギの正体にも近づいていっている感じがして…!
将来出版したら連絡ください!本気で!!

私もひよこさんの作品を読んでいると、凄すぎて…もう、後光が差しているみたいなくらい神々しくて…!
頑張らねば、と痛感します!!

最近はずっとエアコンつけっぱなしです…
昼間まで寝て、夜中まで起きて…宿題を全くやってない…(-_-;)
毛虫って動きが遅い癖に、どうしても嫌なんですよ!!

更新、頑張ってください!!


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