コメディ・ライト小説(新)
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- 罪恋***好きでいてもいいですか?***
- 日時: 2020/08/17 20:48
- 名前: Aika (ID: XWWipvtL)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12215
+:*;.・。prologue。・.;*:+
最初は見ているだけで幸せだった。
結ばれなくてもいい。
遠くから貴方の笑顔を見られるだけで充分だった。
それ以上は何も望まなかった。
なのに。
いつからだろう。
こんなにも、 あふれ出すぐらい。
抑えきれないぐらいに。
貴方を好きだと思い始めたのは――――。
罪恋***好きでいてもいいですか?***
更新start→2017.4.2
***目次***
登場人物紹介>>1>>39
*特別企画*
参照600突破記念!雑談会>>41
*.・1章・.*
第1話>>2第2話>>5第3話>>6第4話>>7
第5話>>10第6話>>11第7話>>12第8話>>13
第9話>>14第10話>>15第11話>>16第12話>>17
第13話>>18
*.・2章・.*
第14話>>19第15話>>20第16話>>21第17話>>24
第18話>>25第19話>>26第20話>>27第21話>>28
第22話>>29第23話>>30第24話>>31
*.・裕樹side 回想編・.*
第25話>>32第26話>>33第27話>>36第28話>>37
第29話>>38第30話>>40
*.・3章・.*
第31話>>42第32話>>43第33話>>44第34話>>45
第35話>>46第36話>>47第37話>>50第38話>>51
第39話>>52第40話>>53
*.・4章・.*
第41話>>54第42話>>55第43話>>56第44話>>57
第45話>>58第46話>>59第47話>>60第48話>>61
第49話>>62
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.13 )
- 日時: 2017/06/12 00:28
- 名前: Aika (ID: MBdLXTlT)
Episode8:ぬくもり。
カフェで勉強してたらすっかり外は真っ暗になっていた。
「もう遅いし…今日はこの辺までにしとこっか」
志穂が数学の教科書をそう言って閉じる。
わたしと智也も志穂の発言にうなずく。
「そーだな。結構すすんだしな」
「お母さんとかも心配するしねー」
カップに残っていたキャラメルラテを飲みほして
わたしたちはお店を出た。
***********************************************************
「じゃあ、俺はこっちだから」
いつもの交差点のところで。
智也はわたしと、志穂にむかって背中を向けてそう言う。
それから、歩を止めて。
くるりとわたしの方へ視線を合わせて口を開いた。
「あの賭け…マジだから。ちゃんと覚えとけよ」
真剣な声のトーンで念を押すかのようにそう言って
逃げるように智也は去っていった。
そんなに何回も言わなくたって、覚えてるのに―――。
なんてことをボーッとしながら考えていると。
状況の読めていない志穂が質問してきた。
「え?え?何よ、賭けって??」
わたしは、一度ため息をついた。
それから暗闇に染まったいつもの帰り道を歩きながら事の成り行きを志穂に説明をした。
「―――まぁ、そんなわけで。負けたほうは勝ったものの言うことを何でもきくという条件で勝負することになったんだわ」
黙って聞いていた志穂が。
不意に口を開いた。
「桜は…もし、負けたら。ほんとに智也の言うことを何でもきくつもりなの?」
「え?」
それは思いもよらなかった質問だったから。
府抜けた声が口から出てしまった。
「そりゃあ…そういう条件だから。約束は守るつもりだよ?」
「もしもっ…それが―――」
そこで何かを言いかけて。
志穂は困ったかのように言葉を詰まらせていた。
少しの間のあと。
真剣な表情から一転して、急に明るい笑顔で言葉を紡いだ。
「―――ううん、やっぱり何でもない。そういうことなら負けらんないね、テスト」
「うん、ありがと。勝ったらなんか、おごってもらおうかなー!」
「おー!いいじゃーん!ついでにあたしの分もお願いしたいわー」
「志穂は相変わらずちゃっかりしてんなー」
志穂が何を言いかけたのか。
ほんとは、 すごく気にかかるけど。
聞いちゃいけない…そんな気がして。
なんとなく、 このときのわたしは。
その部分に触れることができなかった―――。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「じゃーね!桜!また明日ー」
「うん!バイバイ」
志穂ともいつもの分かれ道で別れて。
そこから1人の通学路になる。
この辺は人通りも少なくて夜になると月明かりと街灯しかないので少し怖かったりする。
「すっかり、暗くなっちゃったなー。一応、お母さんには連絡したからだいじょーぶだけど…」
歩きながらスマホをしていると。
「ねぇねぇ、君」
後ろから突然声をかけられた。
「えっ…」
振り返ると見知らぬ男の人の集団がいた。人数は3、4人ぐらい。
なんだろう。…すごく嫌な予感がする。
「えっと…なんですか?」
「かわいーね。これからどっか遊びにいかない?」
嫌な予感が的中してしまった。
これは、まずいやつだ。
どうしよう、逃げなきゃ―――。
「おっと。逃がさないよー」
踵を返そうとした瞬間。腕を強く握られてしまった。
「ちょっと!離して―――」
「暴れんじゃねーよ!」
力強い声でそう怒鳴られて。思いっきり平手打ちされた。鈍い音が静かな路上に響き渡る。
平手打ちされた部分を手で押さえて、瞳にじわりと涙が滲む。
―――こわい、 誰か…助けて。
そう思った刹那。
―――ダンッ。
わたしの頬を平手打ちした男の1人が突然、誰かに殴られて。力なくその場に気絶した。
突然のことにわたしは、唖然としてしまった。
「―――オイ…汚い手でコイツに触れてんじゃねーよ」
その声は。
わたしのよく知っている人のもので―――。
世界で一番大好きな、 人。
「なっ…なんだよ、お前!」
殴りかかる残りの男の集団もその人に敵うことなく次々と返り討ちにあっていて。
気がつくと全員、 倒れこんでいた。
―――ずるいなぁ、この人は。
人がせっかく諦めようって頑張っているのに。
なのに。
なんで…こういうときに現れて助けてくれるの?
こんな風に守られたら―――。
ときめいちゃいけないって、分かってても…
ドキドキが止まらなくなるじゃん―――。
「桜!!」
その人は真っ先にわたしのもとに駆け込んできた。
それから、わたしの頬に優しく触れて。
わたしの大好きな、 優しい声で聞いてきた。
「大丈夫か?」
―――駄目だよ、裕樹さん。
こんな風に優しくされたら。
諦めたい気持ちも諦められなくなる―――。
気持ちが溢れそうになって…苦しくなる。
それからしばらくして、我に返ると。
恐怖心がなくなり、安心して。
滲んでいた涙が溢れて。
無意識でわたしは、ボロボロと大粒の涙を流しながらその胸に飛び込んでしまった。
―――「裕樹さんっ…ありがとうっ…助けてくれて…」
涙を流しながら、 そう言うわたしを。
裕樹さんは優しく背中に手をまわして抱き締め返してくれた。
「ったく…あまり俺を心配させてんじゃねぇよ、バカ」
裕樹さんは耳元で小さくそう呟いて。
そのまま、わたしが泣き止むまで抱き締めてくれた。
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.14 )
- 日時: 2017/05/27 00:35
- 名前: Aika (ID: LpTTulAV)
Episode9:夜風吹く帰り道で。
ひとしきり、泣いて…落ち着いたあと。
街灯だけの暗い夜道を裕樹さんと一緒に歩いた。
隣を歩く裕樹さんの横顔が、なんだか格好よく見えて…心臓の高鳴りが止まらない。
「なんだよ?…俺の顔、なんかついてる?」
まじまじと見すぎたのか。
不思議そうな顔で裕樹さんにそう聞かれてしまった。わたしは、慌てて首を横に振って答える。
「いや、べつに―――…」
その時。
車が後ろから猛スピードでやってきて。
「あぶねっ…」
車道寄りにいたわたしを裕樹さんが勢いよく自分の方へ引き寄せた。
また、裕樹さんと身体が密着して。
心臓がうるさく、鳴り響く。
「あ…あり、がと」
触れられた手が熱い。
―――きっと、 今のわたし…顔赤いんだろうな。
「ったく…気をつけろよな」
ぶっきらぼうにそう言って裕樹さんは手を離す。
離された手が…なんだか名残惜しく感じた。
―――前までは好きでいるだけで、こうして傍にいられるだけで幸せだったのに。
今は…もっと触れてほしいって心のそこで叫んでる気がする。
そんな自分にため息が出た。
嫌だな、恋って―――。
好きになればなるほど…どんどん欲張りになっていく。
そんなことを思いながら裕樹さんの後ろを歩いていると―――。
「お前、 さ…長谷部と付き合ってんの?」
予想もしていなかった裕樹さんからの言葉に。
わたしの思考が停止した。
「え?」
間の抜けた声でそう聞き返してしまった。
長谷部って…智也のこと、だよね?
なんで…裕樹さんがそんな事を気にしてるのかわたしには全く理解できなかった。
「付き合ってないよ…智也はただの友達だから」
そう正直に答えると。
裕樹さんは背を向けたまま表情を見せずに口を開いた。
「ふーん…いつも一緒につるんでるみてーだし、俺はてっきり付き合ってんのかと思った」
その言葉を聞いて。
わたしは、愕然とした。
ただの…興味本意かって、なんとなく確信したから。
今の質問に…わたしに対する恋愛感情なんか微塵もないんだって悟ったから。
「先生は…いないんですか?付き合ってる人とか好きな、人…とか」
―――ずっと聞きたかったけど。聞く勇気がなくて聞けなかったことをわたしは聞いてしまった。
すると、先生の歩がピタリと止まった。
夜風がそよぐ音だけが路上に響いていた。
「―――付き合ってる奴はいねぇけど…好きな女はいるよ」
そう言いきって振り返る。
月明かりに照らされた裕樹さんの顔はいつになく真剣で。
その表情をみて。わたしは、なにも言えなくなる。
沈黙を破るように裕樹さんは続ける。
「―――まぁ、でも。…この想いを伝える気は一生ねぇけどな」
投げやりにそう言いはる裕樹さんに。
わたしは言葉を返す。
「どうして?…好きなら伝えればいいのに―――」
「―――叶わねぇよ」
「え?どう、して…」
即答で帰って来た言葉に。
わたしは唖然とする。
なんで、 叶わないなんて簡単に決めつけるんだろう。そんなの…伝えなきゃ分かんないじゃん。
そう疑問に感じていると裕樹さんがわたしの方へ視線を向けて。
それから小さく笑って再び続けて話す。
「―――好きだって言いたくても…言えないからな」
言葉の意味が理解できなかった。
言いたくても…言えない?
「他の人と付き合ってるとか?ですか?」
そう聞くと。裕樹さんは困ったような顔をしている。違ったのかな。
「あー!俺の話は終わり!大体、なんで教師と生徒で恋ばななんかしてるんだかな」
「いや、裕樹さんが振ってきたんじゃん!」
「え、そうだっけか?」
「うん。それで伝えられない理由はなんですか?」
興味津々にもう一度、そう聞いても。
「だーかーらー!その話は終わりだ。さっさと家帰って勉強しろ!テストなんだろ?」
言われて気づく。
そうだった!テスト勉強しなきゃだった!
「そーだった!ヤバイー!特に現代文ー!」
「あー…お前、中学のときから苦手だったもんなー」
「苦手って言うのもあるけど智也とテスト勝負しててさー…負けたほうは何でも相手の言うこと聞かなきゃなんないんだよねー」
何気なく裕樹さんにそう言うと。
裕樹さんが急に真面目な顔でわたしにむかって言う。
「は?…お前、長谷部とそんな約束してんのか?」
「え…まぁ」
そう言うと。裕樹さんは、大きくため息を吐いた。
「お前って…ほんっと、何も分かってないわ」
「え?え?何よ、急に」
狼狽えていると。
裕樹さんがわたしに人差し指を突きだしてきた。
「―――簡単に、男とそんな約束すんな」
低い声色で…少しだけ機嫌が悪そうな顔でそう言う裕樹さん。
何で、急に不機嫌になったのか分かんないけど。
とりあえずわたしは、頷いて答える。
「…わかった」
そう言うと。裕樹さんがいつもの柔らかい顔に戻った。その顔をみて、わたしはホッとする。
「あ!言っとくけど…今年からうちの学校、赤点とったら補習だから覚悟しとけよー」
「は!?聞いてないんだけど!」
「そりゃあ言ってねぇからなー。お前だけだぞ、今のところ知ってるやつ」
ヤバイよ、現代文赤点常連のわたしにとって滅茶苦茶辛いよ。
てか、これってもう補習確定じゃないのわたし。
わたしがこの世の終わりみたいな思考に走ると。
見かねた裕樹さんが助け船を出してくれた。
「あー…あのさ。俺でよければ教えてやるけど?」
その言葉に。わたしは目を輝かせる。
「ほんとに!?…やった!裕樹さんが教えてくれるなら赤点回避できるかもしんない!」
「オイオイ…大袈裟すぎ…」
「ありがとう、裕樹さん!」
笑顔でお礼を言うと。
裕樹さんは照れたようにそっぽを向く。
「ばーか!そう言うのは赤点回避してから言えよ」
「はいはい」
こういう風にわたしが困ってると。
助けてくれるところとか。
照れ隠しするところとか。素直じゃないところとか。
貴方の色んな表情とか仕草とか…言葉に一つ一つにドキドキして。
そして感じる。
やっぱり、 貴方が大好きだってこと―――。
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.15 )
- 日時: 2017/06/06 00:14
- 名前: Aika (ID: WVWOtXoZ)
Episode10:特別だから。
叶わないって痛いほど分かっていても。
届かない気持ちだって知ってても。
それでも。
君が好き―――。
***********************************************************
「だーから…何度言えば分かるんだよー。そこはラ行変格活用でこう直すの!」
現在。午後9時過ぎ。
わたしの部屋にて裕樹さんと勉強中。
古典で分からないところを徹底的に教えてもらっているのですが―――。
全く分からなくって困っている。
「もうワケわかんない!何よ、変格活用って!全然覚えらんないんだけど!!」
こんな表、今からやっても覚えられる気がしない。まぁ、常日頃から勉強していなかったわたしが悪いんだけど!
「ったく…桜は直前にいつも詰め込もうとするから駄目なの!前もってやっておきなさい」
「裕樹さんは何ですか、わたしのお母さんですか!」
「なんだよー、それ」
そう突っ込みを入れると裕樹さんは楽しそうに笑った。
その笑顔にまた、鼓動が大きく揺れる―――。
それと同時にその優しい笑顔をわたし以外の生徒に向けていると思うと。
心の中が黒い感情で渦巻くような嫌な気持ちになった。
やだな、わたし。
何をそんな小さなことに苛立っているんだろう。
彼女でも何でもないくせに―――。
「―――桜?ボーッとしてどーしたんだよ」
「えっ…いや、なんでもない」
いかん。今は勉強中なんだから集中しないと。
裕樹さんだって時間を裂いて教えてくれてるんだから。
それにしても―――。
「裕樹さんがわたしの勉強見てくれると思わなかった」
それも、裕樹さんから勉強を見てくれるって言ってくれた。
先生の立場だから一人の生徒に肩入れなんかしないだろうなって感じてたから。
裕樹さんの方へちらっと視線を向けると。
裕樹さんは少しだけ頬を赤く染めながら。
「―――お前は…特別だから」
予想外の言葉に。
わたしの思考は停止した。驚きのあまり握っていたシャープペンを落としてしまって。
コロコロ…と、床へと転がっていってしまった。
それをとっさに拾おうとしたとき。
わたしの手の上に。
裕樹さんの手が重なって。
手が熱を帯びたみたいに、熱くなった。
「っ…ごめんなさい!」
反射的に手を引っ込めようとすると。
裕樹さんに勢いよく腕を捕まれた。
その行動にまた、ビックリして―――。
わたしが顔を上げると。
―――すぐ近くに裕樹さんの真剣な顔があった。
「あ…の…裕樹、さん?」
震える声で彼の名前を呼ぶと。
裕樹さんはハッとして。
「わりぃ!」
そう言って。
パッと掴んでいたわたしの手を離した。
静まり返った室内には時計の針の音だけが鳴り響いていた。
しばらくして、 裕樹さんが口を開く。
「もう遅いし…帰るわ。勉強はまた今度な」
わたしは、その言葉になにも返すことができなくって。去っていく彼の姿を見送るばかりだった。
力なく閉まる玄関の扉の音を聞いて。
わたしは、 自分の部屋でうずくまる。
捕まれた腕は…まだ、 彼のぬくもりが残っていて―――。
『お前は…特別だから』
特別ってなに?
幼馴染みだから?それとも―――。
聞きたいことは山ほどあったのに。
このときのわたしは。
なぜか、その場から一歩も動けなかった―――。
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.16 )
- 日時: 2017/06/10 17:38
- 名前: Aika (ID: MBdLXTlT)
Episode11:賭けの行方。
あのとき。
貴方が触れた手のぬくもりが。
今でも鮮明に残っていて。
忘れられない―――。
*********************************************************
―――あれから…なんとなく裕樹さんと気まずくなってしまって。
学校で目が合っても、すぐにそらされてしまう。
廊下ですれ違っても挨拶を交わすどころか、なにも言わずに素通りされてしまう。
そんな日々が続いてあっという間にテストの日がやってきて―――。
そして。
テスト返却の日―――。
「岡崎~」
裕樹さんに名前を呼ばれて、テスト用紙を取りに行くと。
そこに書かれている数字に衝撃が走った。
「んげっ!!」
わたしは、ヨロヨロとした足取りで自分の席へと向かう。
すると、智也がニヤニヤした顔でわたしのもとへ寄ってくる。
「さーくら!何点だったー?」
わたしは、横目で智也を睨み付けながら答える。
「28点」
すると。
智也は吹き出した。
「に…28点って、おまっ…あはははっ」
「笑いすぎだよ、智也!そして、わたしの努力の結果を笑うとか最低だわ」
「わりぃわりぃ…じゃあ賭けは俺の勝ちだなー。俺は赤点なんもねぇし」
「うぐっ…」
そう。
今回、智也は苦手科目を見事にクリアしてというか、全科目80点以上という珍しく好成績を出している。
智也は勉強すればなかなか頭が良かったりするからな…。
「はぁ…補習やだなぁ」
「桜。話を逸らすな」
話題を転換して遠ざけようとしたけど智也には見破られた。鋭い。
「わーかりましたよー!何がご希望なんですかね?」
「なんで、ちょっと喧嘩腰なんだよ、お前。まぁいいや…あのさ」
智也は少しだけ間を開けてから。
それから、わたしの瞳を真っ直ぐにみて言う。
「―――俺と…1日だけ…デート、してくれない?」
突然の智也からのそんな言葉に。
わたしは、戸惑ってしまって…唖然としてしまった。
聞き間違いかと思った。
だけど、 智也の真剣な瞳と少しだけ赤い頬をみて…。
そうは思えなくなってしまった。
「い…言っとくけど拒否権はお前にはねぇからな!今週の日曜の10時に駅前集合だから!ちゃんと来いよ!」
そう吐き捨てて。
智也は自分の席へと帰っていった。
何よ…わたしの都合も聞かずに勝手に決めて。
まぁ、日曜は暇だけど。
でも。
なんで。
智也は…わたしなんかとデートに行きたいのかな。
そんな事を頬杖をついて、窓の外の景色をぼんやりと見ながら考えていた。
その様子を。
「………………」
―――裕樹さんが見ていたとも知らずに。
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.17 )
- 日時: 2017/06/12 01:35
- 名前: Aika (ID: MBdLXTlT)
Episode12:期待。
言葉にしなければ
心の奥底にある気持ちなんて
相手には何一つ伝わらない―――。
ねぇ、 教えてください。
貴方はわたしのこと、 本当はどう想っていますか―――?
***************************************************************
「はぁ…補習、 やだなー」
―――放課後。
現代文で赤点を取ってしまったわたしは、補習対象者になってしまったため重い足取りで国語準備室へと向かっている。
本当に最悪だ―――。
何が最悪かと言うとクラスで現代文に関して赤点を取ったのはわたしだけだったらしく。
1人で補習を受けるという状況が尚更嫌だった。
しかも。
補習を担当するのは…相田先生。
つまりは、裕樹さんということになる。
それが、 耐えられそうにない。
だって、 今…まともに口聞いてないし。
向こうがなんか、わたしのこと避けてるし。
それなのに。
「2人っきりで…補習とか…マジで勘弁してくれー」
そう呟いて。
今日の1日で何回出たかも分からないぐらい、わたしはため息を大きく吐いた。
――そして。
気がつけば、国語準備室の前―――。
「うだうだしてても仕方ないし。ちゃっちゃとやって、さっさと帰ろ」
やけになって、勢いよく準備室の扉を開けると。
そこにいたのは―――。
「先生―――?」
椅子に座って眠っている裕樹さんの姿―――。
窓は少しだけ開いていて…5月の少しだけ涼しい風が優しく吹いている。
そして、 裕樹さんの黒髪をわずかに揺らしていた。
わたしは、不覚にも。
初めて見る裕樹さんの寝顔に。
少しだけ…ときめいてしまった。
いつもは、眼鏡をかけているのに。
外しているところとか。
読みかけの本を手に持ったまま眠りこけているところとか。
わたしの知らない、違った表情を見つける度に鼓動が高鳴って…ドキドキが止まらない―――。
「疲れ…溜まってたのかな」
わたしには、裕樹さんの仕事内容まではよくわからないけど。テスト明けだし採点の作業で疲れてたのかもしれないなーと、ぼんやりと考えていた。
しばらくの間。
傍によって…気持ち良さそうに眠りこけている裕樹さんを眺めていたら。
―――触れたい。
素直にそう感じてしまった。
「少しぐらいなら…大丈夫、だよね」
わたしは、そっと。
手を伸ばして。
裕樹さんのサラサラの髪に触れて、 優しく撫でた。
―――すると。
バサリッ…。
裕樹さんが手に持っていた本が勢いよく床に落ちたと思ったら。
勢いよく、 腕を捕まれた。
捕まれた腕の方に目をやると―――。
「なに、 してんの?」
そう言って。
裕樹さんは、 寝起きの顔をわたしに向けていた。
眼鏡がないから。
見慣れないその表情に。
また、 心臓がバクバクしてうるさい。
わたしは、 とっさに言い訳をした。
「えっと…その…髪にゴミがついてたから取ろうと思っただけ!」
苦しいかな…と、思いつつもわたしがそう言いきると。
裕樹さんは。
「ふーん…ま、いいや」
1言。そう言ってからわたしの手を離して。
眼鏡をかけて。
机の引き出しから補習プリントを取り出してわたしに手渡した。
それから、対して気にした様子でもなく。
「じゃ、そのプリント全部終わらせたら帰っていいから。分からなかったら聞いて」
淡々とした風にそう言って。
わたしの横に座った。
―――なんだろう。
別に怒ってないのかな―――。
わたしは、シャーペンを走らせて。
渡されたプリントを無言で解き続けた。
だけど。
心の中の奥底では。
裕樹さんが何を考えているのか全く理解できなくって―――。
モヤモヤとした感情が渦巻いていた。
「あのさ―――」
―――不意に。
裕樹さんから、口を開いた。
わたしは、シャーペンを走らせながら。
「ん?なにー?」
耳だけを裕樹さんの方へ傾けた。
すると。
裕樹さんは頬をポリポリとかきながら。
わたしの方へは視線を向けず、こんな質問を投げかけた。
「―――長谷部に…賭けの内容、なんて言われたんだよ?」
途端。
シャーペンを走らせていた手がピタッと止まる。
まぁ、現代文のわたしの点数からきっと賭けに勝ったのは智也だって裕樹さんも薄々感じたんだと思う。
だけど。
なんで。
賭けの内容を裕樹さんが気にするのか。
それがわたしには、分からなかった。
―――わたしがプリントの問題から遠ざけて。顔を上げて裕樹さんの方へ目をやると。
裕樹さんは、目線を合わせてくれず。
うつむいていて、表情はよく見えなかった。
わたしは、正直に打ち明けた。
「―――今度の日曜…デートしたいって言われた」
しばらくの沈黙のあと。
裕樹さんは、か細い声で聞く。
「行くの?…長谷部と」
わたしは、小さく頷いた。
「そりゃあ、約束だし。破るわけにはいかないっしょ」
本音を言えば。
裕樹さんが好きなのに。
他の人とデートに行くのは…気が引けた。
裕樹さんが引き留めてくれたらな―――。
なんていう、夢物語を心のなかで感じていると。
「―――行くなよ」
空耳かと思った。
「え?」
ビックリして。
呆けた顔でそう言うと。
目の前には、 今までに見たことがない
裕樹さんの真剣な顔があった。
「―――なーんて、な。冗談。…デート、楽しんでこいよ」
嬉しい…そう思ったのも束の間で。
すぐさま、裕樹さんはそう付け足したかのように言った。それからいつもみたいにわたしの頭を優しく撫でた。
―――やっぱり、 子供扱いだ。
一瞬だけ。
『行くなよ』
そう言った言葉が。
本音かと思ったのに―――。
もしかしたら、 両思いかもってほんのちょっとだけ期待したのに。
裏切られたみたいで。
わたしにとっては、すごくショックだった―――。
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